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〇大学・小教室

俊介が里美に話し始める。
俊介「初めて彼女が出来たんだ。中学までずっとフラれてたオレになぜか出来たんだ。すっごく嬉しかったのを覚えてる」
里美「…………」
俊介「あれは夏の暑い日だった。彼女の家に忘れ物しちゃったんだ、そしたら彼女が他の男とヤッてた。ついさっきまで一緒にテレビ見ながらしゃべってた彼女が、だ」
里美「…………」
俊介「目の前で何が起きてるのかわからなかった。自分の彼女が何でそんなことをって。これはきっと何かの間違いなんじゃないかって必死に信じ込もうとした」
里美「…………」
俊介「プラトニックな愛こそすべて、あの頃はマジメにそう思ってた……今のオレが言うのもアレだけど。こんなオレにだって君と似たところがあったんだ。彼女といても、デートで手を握るのがやっとで―それ以上のことなんて怖くてできなかった」
里美「…………」
俊介「でも後で知ったよ、彼女が相当なヤリ手だったことを」
里美「―まさか」
俊介「オレの知らないところで男をとっかえひっかえしてたんだ」
里美「!」
俊介「ショックだった。おっとりしたあの子がホントに大好きだったから。その日からだ、女を全く信じなくなったのは。だからいろんな女を抱いてやろうと、彼女に復讐してやろうとそう決めたのは」
里美「…………」
俊介「変な話だけどさ、信じられないはずなのに抱いてるんだ。そして思うんだ、これで彼女を見返せるって。でも、でもな―」

俊介の目が潤み始める。

突然、里美が俊介の方へ振り向いて、

里美「同じです」
俊介「ん?」
里美「あなたもその元カノさんと」
俊介「…………」
里美「私にはわかりません。どうしてそんな簡単に体を許すのか、不思議に思えてならないんです」
俊介「…………」
里美「セックスは貴い行為であるべきです、本当に愛し合う者同士がすることなのに興味本位で行われる」
俊介「…………」
里美「後に起こる責任なんて全く考えない。私はそれがどうしても許せません」
俊介「…………」
里美「女は受け身なんです、子どもを産むんです、安易に性体験を積むことが復讐だなんて勝手過ぎます!」
俊介「わかってる!」
里美「!」
俊介「いつからかわかんないけどさ、相手の顔が彼女に見えるんだ」
里美「…………」
俊介「残るのはいつも虚しさだけなんだ。何でかな?」
里美「…………」
俊介「もし君みたいなコに会えてたら―いや、何でもない。それより早く警察呼びな」
里美「え?」
俊介「君に迷惑かけすぎたから」
里美「…………」
俊介「呼ばないのか?」
里美「…………」
俊介「そっか。じゃあこれで」

と、俊介が去っていく。
里美、俊介とすれ違いざまに目の潤みに気づいて―

〇本宮家・外観(夕)

〇同1階・リビング(夕)

雅志、夕飯の用意をしている。
コンビニ弁当などの寄せ集めがテーブルに並ぶ。
玄関で音がする。

雅志「(不思議そうな顔で)」

俊介が帰ってくる。
俊介、日課のように母親の遺影に合掌する。

雅志「随分と早いな」
俊介「体調不良でさ」
雅志「何?」
俊介「午後休んだ」
雅志「(呆気にとられて)」
俊介「明日はその分残業だから」
雅志「よお―」
俊介「メシは食ってきた」

と言って、俊介が階段を上っていく。
雅志、何事かという顔で―

<最終話へつづく>

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