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平成31年(2019年)1月某日。

東京は新宿にある、芸能浅間神社。
ここは芸能にまつわる珍しい神社だ。
敷地内には芸能人の奉納者の名前が多く並んでいる。

賽銭箱に投げ込まれる5円玉。
三十路にふたつ歳を重ねた男が目を閉じて手を合わせる。

物書き・スダである。

益代の声「あれ、スダちゃん?」

背後から聞き慣れた声がする。
記者の宇加賀井益代だ。

スダ「益代さん! あけましておめでとうございます」
益代「アンタもここで初詣?」
スダ「はい、今年もシナリオでたくさん良い仕事が出来るようにと」
益代「フツーすぎるし」
スダ「普通に願うことの何が悪いんですか」
益代「作家ならもっとボキャブらってひねり出さなきゃ、頭使いな」
スダ「懐かしいですね、ボキャブラ」
益代「投稿ネタ時代も芸人時代も観てた」
スダ「語呂のセンスを磨く勉強になります」
益代「そうねえ、たとえばシナリオと結婚したい! とか、もはやシナリオ原稿になりたい! とかはどう?」
スダ「小学生のからかいごっこじゃないんですから」
益代「ウチらのとき流行ったよー」
スダ「そうですけど。ちなみに益代さん、年末年始は?」
益代「仕事に決まってるでしょ?入社してからずーっとプライド持ってやってんの」
スダ「さすがです」
益代「みんな新年新年言うけどさ、いつもと同じようにただ日にちが変わっただけで明確な違いなんてないのよ?」
スダ「人は気持ちを切り替えたい生き物なんですよ」
益代「それはわかるけどさ」
スダ「おかげでショッピングモールは儲かりますし、お金が動けば日本経済も回るでしょう」
益代「現場で働く人たちは大変だけど」

参拝客が花園神社脇の柱の紐にくじを結び付けている。

益代「ところでシナリオだけ?」
スダ「何がですか?」
益代「願い事」
スダ「き、決まってるじゃないですか」
益代「恋も成功しますように、でしょ?」
スダ「何でそれを?! あっ!!」
益代「女の勘よ。どうも、マッスーヨ宇加賀井です」
スダ「ゲッターズ飯田みたいに言わないでください」
益代「気にすんなって、アタシもおひとりさまだもん」
スダ「一緒にしないでください!」
益代「年上の女性が合うんじゃない? ぶっちゃけ年上ウケ良いでしょ?」
スダ「こないだ知り合いの先輩にも同じアドバイスもらいました」
益代「手始めにアタシはどう?」
スダ「ごめんなさい」
益代「言うと思った」
スダ「これ以上続けると画面をスクロールする手を止められちゃいますから。そろそろ本題に入りましょう」
益代「じゃあ4ヵ月ぶり、新年一発目のアレ行くよ」
スダ「お願いしまっす!」
益代「宇加賀井益代が伺いますよ」
スダ「これぞシナリオブログの初日の出!」
益代「ギンギンギラギラ燃えてるよぉ」

スダ「シナリオライターは転んでもただは起きないでください」

人生でたとえ転んでもただは起きないで

益代「え? ”ただじゃ”じゃなくて?」
スダ「どちらでもOKみたいです」
益代「”ただは”って初めて聞いた」

【転んでもただは起きない】
たとえ失敗した場合でもそこから何かを得ようとする。欲の深い、また、根性のある人のたとえ。
転んでもただでは起きないともいう。

スダ「これは”逆手に取る”という表現にも似ています。子どもの頃からこの言葉が好きで、そのおかげで今日まで生きてこれましたから」
益代「ピンチはチャンスとよく言うもんね」
スダ「はい。たとえ世間と向いている方向が違っていても、自分の持ち味を生かせばいいと背中を押してくれました」
益代「それと今回のコラムとどういう関係があるの?」
スダ「物語は作者の経験から生まれているものがほとんどなんです。つまり未経験かつ頭の中だけで想像しても文章はなかなか生きてこないということです」
益代「ってことは、この世のドラマや映画や舞台は作者の経験が生きているってワケね」
スダ「シナリオライターに限らず、何かを生み出す者は人一倍に欲深い生き物だと思うんです。そうでなければあんなにいろんな人の胸を打つモノを表現できないはずです。仕事や夢や恋愛での失敗、果ては人生のどん底を見たことでとてつもないパワーを吸収して這い上がっていく仕事だと思ってます。作品に触れて分析するたびに、その人の心境や状況を考えてます」
益代「たしかに生きた文章やおもしろい文章ってのはその人が経験してきた味わいが出るって聞くわ」
スダ「テレビも映画も舞台も音楽も絵画も、名作と呼ばれる芸術作品にはその人の生き様や情熱が刻み込まれてるんです」
益代「岡本太郎の名言にもそんなようなものがあった気がする」
スダ「はい、胸が熱くなる名言たちで溢れています」
益代「芸術は爆発だ!」
スダ「とくに皮肉めいたセリフ、クライマックスで感情が爆発したときに言うセリフに作者の思いが込められていると感じます」
益代「わかるわかる。でも傷つかなきゃ生み出せないってのはさすがにツラいね」
スダ「落ちこむことも大事です。とことん落ち込めば同じ立場になっている他人の気持ちがわかって、人間的に大きくなります。しかしいつまでも落ち込んだままでは何の成長もなく、時間がもったいありません。なので、そこからどううまく生かしてやろうかと考えてください。失敗を自分の魅力にして生かすにはどうしたらいいかを考えましょう。そのほうが人生楽しくなります」
益代「七転び八起き、か」
スダ「そのことわざが示すように最後の最後で起き上がるんですから、その都度ゆっくりしっかり乗り越えていけばいいんです」
益代「上向き下向き前を向けってか」
スダ「それが人生なんだと思うんです」
益代「お互い今年も忙しい年にしようね」
スダ「はい。これからも貪欲に本物を極めていきます、小手先のやり方で無理に演じていては絶対にバレてしまいますから」
益代「素直に生きるって大事だわ。社会の波にもまれてると難しくなっちゃうけど」
スダ「良いこともつらいことも必ず自分の糧に変えて行きます。傷ついて落ち込んでも、そこで負けてはいられませんから」

スダと益代、神社を後にする。

アンダーグラフ
「僕に何が出来るか、考えている。」

益代「そういえばこないだ重大発表があるってブログで言ってたね」
スダ「新プロジェクトのことですか」
益代「まさかドームツアー?それとも4月からの1年間放送?」
スダ「ゆずでも科捜研の女でもありませんよ」
益代「わかってる、そういうのはどうせ煽るだけで大したことないんだから」
スダ「実は、新作をリリースするんです」
益代「ほらね」
スダ「しかし、そこで新しい試みを行います」
益代「新しい試み?」
スダ「カタチにしたとき発表しますので、楽しみにしていてください」
益代「またそうやってもったいぶる」
スダ「僕にだって少しはモテる要素があってもいいでしょ?」

<つづく>

このコラムはフィクションです。
が、次なる新プロジェクトとスダの願い事の中身は本当です。

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