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〇ジム・ロッカールーム

忠男がプロテインをシェイクしている。
傍らのガラケーに着信。
礼香からだ。

〇ジムで鍛える忠男

シェイカーの中に表れるイメージ。
ダンベルを使ったり、腕立て伏せしたり、ランニングマシンで何かを吹っ切るようにがむしゃらに走ったり―

〇もとのロッカールーム

忠男がプロテインを飲み干す。
礼香からの電話に出ようとはしない。

〇大通り (夕)

黄昏迫る頃、ランナーたちが群れをなしてマラソンしている。
群れから少し離れたところ、あてもなく忠男が歩いている。
背後からランナーの男性が近づく。

男の声「やあ!」

ビックリして振り返る忠男。
男はサンバイザーにサングラスそして本格的なスポーツウエア姿。

忠男「(顔が見えず) だ、誰?」

サングラスを外すと、真田の顔が。

忠男「え? ウソ?! 何で?」

ピタッとした真田のウエアごしに鍛えられた筋肉がうっすらだがわかる。

忠男「(腹筋を見て) オレより……ある」
真田「だらしないお腹じゃあこの子に失礼だからね。それでは虫も好かないよ」
忠男「(信じられないと顔に出ている)」
真田「ほの暗い研究室の隅で虫たちと戯れて不敵な笑みを浮かべている、君は僕をそういう変態ドクターだと思っているね」
忠男「そ、そんなこと思ってなんか―」
真田「本当に?」
忠男「……ちょっとだけ」
真田「…………」
忠男「……いや、かなり」
真田「人間は物事を外見だけですぐにこうだと決めつける癖がある。でも本質はその物事を深いところまでしっかり調べてみなければわからないんだよ」
忠男「…………」
真田「物事の本質を知ろうとせず、自分の中で勝手に思い込んでそのままにすることが一番いけないことだよ」
忠男「…………」
真田「もし今日までの人生で心に引っかかっていることがあるならその本質を調べれば良い。いつまでも心の中で溜め込んでいるよりもずっと素晴らしいことだよ」
忠男「……本質」
真田「そう」
忠男「何でそんなことオレに―」
真田「……虫の知らせ、かな」

真田が忠男のスポーツバッグを見て、

真田「君も筋トレするのかい?」
忠男「……少し」
真田「この辺だと有名なのは駅前のジムだね。あそこはマシンのウェイトがちょうど良いんだ。あとはプロテインも美味しい」
忠男「そこです」
真田「本当に? たまに僕も行くんだよ。今度会ったら一緒に筋トレでも―」
忠男「やめときます」
真田「ところで君はいつもその格好だね」
忠男「はい?」
真田「パリッとスーツを着ていないから会社勤めではないようだし、飲食店の社員にしては容姿がキチっとしていない。とすると、アルバイトもしくはヒ―」
忠男「そんなこと聞く必要あります?」
真田「一応、君は僕の患者さんだからね」
忠男「センセイだってオレのこと、そういうヤツだって決めつけてるんでしょ」
真田「そういうヤツ?」
忠男「ああ、めんどくさい。もういいです」
真田「こちらが質問しているのに答えないのは頂けないね」
忠男「(ボソッと) ……モです」
真田「ん?」
忠男「ヒモですよ! でもオレ最近いろいろあって、よくイメージされるヒモとかそういうんじゃないですから」
真田「何を恥ずかしがっているんだね?」
忠男「え?」
真田「相手に迷惑をかけていなければヒモであろうと問題はない。世間はどう見るかわからないけど、僕は君の詳しい事情を知るまで勝手な判断はしないよ」
忠男「…………」
真田「生き方は人それぞれ、愛の形も人それぞれ、お互いに合意しているのなら何の問題もないよ」
忠男「…………」
真田「後ろめたいのは君に何かそういった気持ちがあるからじゃないのか?」

真田が去っていく。
取り残される忠男で―

<第9話へつづく>

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