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オレの義母・梶野勝代(58)は経営者だ。
そして何よりコーンフレークが大好きだ。
義父・芯太郎は毎朝コーンフレークが入った器に注ぐミルクの量で彼女の機嫌がわかるらしい。

ミルク多め希望のときは上機嫌なとき。
逆に少なめ希望のときは不機嫌なとき。

その分量の違いによってコーンフレークの歯ごたえが変わる。
つまり不機嫌なときはなるべく固めなコーンフレークを噛みしめて自分を高めたいのだ。

勝代「コーンフレークのように噛み応えのある人生を送りたい」

と、シリアルについてシリアスに語る。

【梶野家トリビア その8】(ハジメ調べ)

家事のハジメさんがログインしました。

どうも、家事のハジメこと梶野ハジメです。

これまで義母の出番があまりなかったので冒頭に書いてみました。
本当にコーンフレーク愛がすごいんです!
あとで詳しく書きますので、お楽しみに♪
あ、ちなみに今朝はミルク少なめでした。

気を取り直して、オレが彼女の実家である梶野家に挨拶に来た日の話を書いていきます。

テーブルの上、ハジメの前に置かれたコーヒーカップ。
ハジメは中身を匂って、

ハジメ「(ボソッと)紅茶か」
芯太郎「コーヒーの方が良かったかな?」
ハジメ「い、いえ。大好きです」
芯太郎「どうぞ召し上がれ」
ハジメ「美味しいです」
芯太郎「それは良かった」
勝代「この人、味にうるさいから」
芯太郎「お客様のためだよ」
勝代「アタシたちにもうるさいし」
芯太郎「まあ、いいじゃないか」

ついていけないハジメ。

芯太郎「あ、こちらの話だ。気にしないでくれ」
ハジメ「は、はい」
芯太郎「そんな畏まらなくてもいいよ」
ハジメ「はい!」

と言いつつハジメの肩は震えている。

ハジメ「……あ、あの」
芯太郎「何かな?」
ハジメ「これ、つまらない物ですが……」

ハジメが差し入れを芯太郎に見せる。

芯太郎「ほう、良いセンスだね」
ハジメ「本当ですか?」
勝代「高かったでしょ?!ここの羊かん大好きなの。ありがとうね」
ハジメ「(ボソッと)良かったぁ」
芯太郎「それでこれが本題かい?」
ハジメ「いえ、実はその――」

芯太郎と勝代がハジメを凝視。
実乃里、うつむいている。

ハジメ「いずれ実乃里さんと結婚したいと思っています。今回はそれをお伝えしに参りました」

その場がシーンとなる。

芯太郎「そうか」
ハジメ「…………」
芯太郎「別に良いんじゃないか」
ハジメ「(拍子抜けして)え?」
芯太郎「実乃里がそれで納得していればね」
ハジメ「本当ですか?」
芯太郎「何も言うことはない」
勝代「私も」
芯太郎「ただ、ひとつだけ条件がある」
ハジメ「え?」
芯太郎「この家は代々娘の家系なんだ。先代から続いてきたこの家を自分の代で終わらせたくはないんだ」
ハジメ「ということはつまり――」
芯太郎「婿入りしてほしい」
ハジメ「えっ……」

実乃里が後ろめたい顔を浮かべる。

家事のハジメさんがログオフしました。

ところ変わって、現在の若宮家。
ハジメの母・圭子が洗い物をしている。
すっとハジメの父・亮助がきて、

亮助「手伝うよ」
圭子「ゆっくりしてて」
亮助「定年後はやることが無くてな」

洗い物に慣れない手つきの亮助。
圭子は蛇口から流れる水を見つめる。

亮助「ハジメのことか?」
圭子「…………」
亮助「もういいだろ」
圭子「あの子に言い過ぎたかしら」
亮助「これで良かったんだ」
圭子「でも……」
亮助「あいつが出した答えだろ」

棚の上にある集合写真。
亮助と圭子そしてハジメの3人。
暑い夏だというのに冷たい空気が漂い続けるリビングにあるただひとつだけの温もり。

<episode5へつづく>

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