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ここは、とある病院。
廊下を歩くひとりの女性。

記者の宇加賀井益代だ。

口元にはマスク。
どうやら風邪をひいたらしい。

「宇加賀井さん、宇加賀井益代さん」

少し遠くで看護師の声がした。
女性にしては低めな声。
いったいどんな人なんだろう?

益代は声のした病室に入る。

男「どうしました?」
益代「ここのところ熱っぽくて」
男「そうですか―」
益代「もしかしたらアタシ、いま流行のインフルにかかって―ん?」

益代の言葉が止まる。
目の前に白衣姿の見慣れた男。

スダ「大丈夫です、僕にかかればその熱なんてすぐに吹っ飛びますから」

そう、物書き・スダである。

益代「ねえ、ちょっと!」
スダ「どうしました?」
益代「え、なんでアンタが?なんだろ、頭がパニックになってる。年明け一発目のコラムが2月上旬ってのも十分アレだけど、なんだかそれ以上の衝撃。頭打ったのかな。ここって病院でしょ?」
スダ「ええ、そうですよ」
益代「なら免許は?」
スダ「もちろんあります」

と、出したのは運転免許証。

益代「いやいや、その免許じゃなくて医師免許!」
スダ「あれ?ここはシナリオの悩みを治す病院じゃないんですか?」
益代「なにその病院!こっちはインフルかもしれないから診てもらいに来たのに。そもそも作家に免許は必要ないでしょ」
スダ「そうですよね。あ、あとはパソコン関連の資格ならいくつか―」
益代「あなたの経歴を聞いてる時間はな―」

と、益代が咳き込む。

スダ「大丈夫ですか?早くお医者さんに診てもらわないと」
益代「だからここへ来てるんでしょうが!」
スダ「ですがここはシナリオの悩みを聞く病院で―」
益代「もういいわ!」

益代が怒って出て行こうとする。

スダ「待ってください」
益代「と言われて待つ患者がどこにいるの?」
スダ「僕の話を最後まで聞いてくれたら、ちゃんとお礼しますから」

益代の足が止まる。

益代「コラムやるの?ここで?」
スダ「2カ月ぶりですが」
益代「正確には1か月と約2週間ね。その扱い、もう慣れてる。で、今回は何?」
スダ「その前にいつものアレを」

仕方なく益代がマスクを外して、

益代「宇加賀井益代が伺いますよ」

スダ「あ、マスクはしててください。うつされても困るので」
益代「(怒り顔で)ほんとにうつすぞ」
スダ「どうぞどうぞ」
益代「おーーーーい!!」

シナリオのキャラがかかりやすい病
[[[ステレオタイプ]]]

スダ「さて今回のテーマは”ステレオタイプ”です」
益代「ステレオ?音楽の?」
スダ「いいえ、違います。先入観・思い込み・固定観念という意味です」

ステレオタイプ
1:印刷で用いる鉛版
2:判で押したように多くの人に浸透している先入観、思い込み、認識、固定観念やレッテル、偏見、差別などの類型・紋切型の観念

スダ「語源は”ステロ”という鉛版です。それで同じものをたくさん複製できることから、転じて社会における人々の固定観念という意味になったと言われています」
益代「ステロがステレオになったのか」
スダ「シナリオではこのステレオタイプから抜け出す必要があります」
益代「ステレオタイプって、たとえばどんなのがあるの?」

・イケメンと美女はモテる
・お金持ちはみんな幸せ
・お年寄りはあまり活発に動けない
・地味でメガネをした人はガリ勉
・血液型で勝手に性格を判断する

スダ「これらがステレオタイプです。でも本当にそうなんでしょうか?」
益代「言われてみれば!見た目の印象で中身を勝手に決めつけちゃってるかも」
スダ「そうなんです。実際そうではないことが世の中多いんです」
益代「あ、そういえばこれまで取材してきた人の中に意外だなあって思った人がいたっけ」

・静かそうなのに内面は熱血
・今どきの子なのにレトロファン
・コワモテなのに実は気弱

スダ「良い例ですね!このように見た目と中身に差があると、人は驚きを覚えるんです」
益代「いわゆるギャップね」
スダ「これはドラマや映画でも同じで、最初にキャラクターの表の顔を視聴者に見せます。しかし物語が進むにつれて、もうひとつの顔を見せるのです」
益代「優しく見える人ほど実はクセが強くて裏の顔があったり、一見厳しい人ほど実は情が厚くて思いやりがあったりするよね」
スダ「そのとおりです」
益代「人はいろんな顔を持っている、と」
スダ「読む人をダマすのが作家ですから」
益代「人は見かけによらないもんね」
スダ「見かけだけで人の印象は決まりません。違う面がふと見えて深みが出るんです。なので、キャラクターを考える時は表の顔と裏の顔を作りましょう。ステレオタイプを治すのは意外な一面という名の薬なのです」
益代「だから今回医療ネタなの?」
スダ「…………」
益代「まさにステレオタイプな発想だわ」
スダ「今回もお話を聞いて頂きありがとうございました。では、こちらからひとつお礼を。(別の方向を向いて)お願いします!」

奥のカーテンが開く。
清楚な服装の女性がやってくる。
益代、何事かという顔。

スダ「椅子を温めておきました、先生」
益代「先生?え、どういうこと?」
スダ「益代さん、僕は自分が医師だなんてこの記事で一回も言ってませんよ」
益代「え?」

スダがニヤリとして、

スダ「宇加賀井さん、宇加賀井益代さん」

ハッとする益代。
冒頭で聞こえた声は彼のだったのだ!

益代「そんなまさか!」

スダが白衣を脱ぐ。
と、その下に看護師の服が現れる。

益代「ウソでしょ?!」

スダ、脱いだ白衣を女性に渡す。
その女性こそが医師だったのだ。

スダ「今度は正真正銘です。ご安心を」
益代「えええええ?!」
スダ「人は見かけによらぬもの。ある人が仕事用の服を着ているからといって、その仕事をしていると勝手に思い込んでしまうのもステレオタイプですよ。では、お大事に」

スダがウインクをして去っていく。

益代「あれ、少し熱下がったかも」

<つづく>

~おまけ~

診察を終えて出て来る益代。
看護師の服を来たスダを追う。

益代「待ちなさい」
スダ「まだ何か?」
益代「アンタ、看護師だったの?」
スダ「いいえ。この服も借り物です」
益代「まさかの二段オチ?!」
スダ「これも作家の仕事ですから」

このコラムはフィクションです。
実際の医療現場とは関係ありません。

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