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成 川「うまくやりなさい。この耳で確かにそう聞いた。まるで出来ない部下を叱る上司みたいな感じだった」
さくら「…………」
成 川「なあ、アンタなんだろ? 俺にあの女を差し向けたのは。俺だけじゃなく、他の男にも同じようなことしてんだろ?」
さくら「違う!」
成 川「どう違うんだ!」
さくら「あれはそういう意味で言ったんじゃないわ!」
成 川「ってことは、認めるんだな。あの日、あの女と会っていたことを。その言葉を口にしたってことを。ホントのこと言わないと今ここでアンタの正体、大声でバラすぞ?」
さくら「…………」
成 川「何とか言ったらどうなんだ!」
さくら「……くぎを刺してやったの」
成 川「俺をちゃんと勧誘できなかったからか」
さくら「そうじゃない! そのときの街コンで、彼女はあなたによく似た雰囲気の男性とカップリングしたの」
成 川「何だと?」
さくら「もしやと思った。この仕事してるとね、ニオイでわかるの。だから彼女を店の裏に呼び出した。いかがわしいことやるんだったら私にバレないくらいうまくやりなさい、って叱ってやったのよ。もう二度と街コンの敷居を跨げないようにね」
成 川「うそだ!」
さくら「ウソじゃない」
成 川「なんでアンタがいちいちそんなことを―」
さくら「あなたのような人を守るためよ!」
成 川「……え?」
さくら「ずっと気になってたの。あなたがどうなったのかって。あの時助けに行ってあげられなかったこと、心から反省してた。私はここへ真剣に出会いを求めに来てる人にイヤな思いはさせたくない。サクラにはね、サクラのプライドってもんがあるの。傍から見ればまるで悪者に見えるだろうけど、私はこの仕事に誇りを感じてるの!」
成 川「誇りだと? 笑わせんなよ! 人を騙すのがサクラだろ!」
さくら「違う! 私はただ街コンへ参加する男女に素敵な出会いをしてほしい、その手助けが少しでもできるようにここを仕切ってるの」
成 川「じゃあなんであんなことが起こるんだよ? 俺もう信じられねえよ。なあ、恋愛ってなんなんだよ? 出会いってなんなんだよ?」
さくら「私だってわからないわよ! でもただひとつ言えることは、あなたが女を知らなすぎるってことよ」
成 川「はあ?」
さくら「だいたい28で一度しか恋してないとか甘すぎるわ。たかがどっかのクソ女に引っかかったくらいでトラウマになって逆恨みだなんてアホすぎる。世の中にはね、もっとどうしようもない女がうじゃうじゃいるの。そんなカンタンな子ども騙しにいちいちショック受けてたら前に進めないよ? 男だったらどんなに深く傷ついたって、グッと潔く飲み込んで反省して学んで次へとつなげていくもんでしょう? ねえ、違う?」
成 川「…………」
さくら「今回は運が悪かっただけ。あなたの良さをわかろうとしないどうしようもない女に引っかかってしまった、ただそれだけのこと」

成川M「それ以上、俺は『しの』に反論しようとはしなかった。彼女の目はまったく泳いでいなかった。決してウソは言ってない、そう思ったのだ。かつて女に騙された身で言える立場ではないが……」

司会者「(マイクの音声で)残り1分です。男性の方、そろそろ移動の準備をお願いします」

<シナリオ⑨につづく>

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