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〇里美の部屋(夜)

キッチンで里美が飲み物やコップを人数分用意している。
遥はリビングで申し訳なさそうな顔で座っている。
里美、ひとつ目のコップにジュースを注ぎながら、

里美「あの人に教えたんだ」
遥「え?」
里美「私のこと」
遥「(うつむいて)」
里美「図星か」
遥「ゴメン」
里美「別に」
遥「いつも余計なことしかできなくて」

里美、ふたつ目のコップにジュースを注ぎ始める。

遥「でもアタシは―」
里美「ん?」
遥「アタシは里美に―」
里美「…………」

〇俊介の部屋(夜)

俊介、机に向かってスマートフォンを操作している。

俊介「(画面をじっと見ていて)」

俊介、女の子たちからのメールを一気に全件削除する。

〇俊介の勤める会社・前

昼休み。俊介と陽平が出てくる。

俊介「メシって駅前にあるアレか?」
陽平「そぉう、あの店の定食はうまいぞぉ」
俊介「じゃあそこ行くか」
陽平「おぉ、そう来なくっちゃなぁ」
俊介「午後からまた―」
陽平「おぉい、どうしたぁ?」

目の前に里美がうつむいて立っている。

俊介「―先行っててくれ」
陽平「えぇ? 売り切れちゃうぞぉ?」
俊介「すぐ行くから」

納得のいかない表情を浮かべる陽平が仕方なしに去って行く。
俊介、陽平がいなくなるのを確認して、

俊介「何でここが?」

里美、カバンの中から何かを取り出して俊介に見せる。
俊介の名刺である。

俊介「え?」
里美「友達から預かりました」
俊介「そうだったのか」
里美「これでどこの誰だかわかりました。で、どこまで聞きました?」
俊介「何が?」
里美「私のことです」
俊介「いや、何も聞いてないって」
里美「そうですか」
俊介「ホントだから」
里美「わかってます」
俊介「そんな勝手に納得されても―」
里美「この前は言い過ぎました。いろいろと失礼しました」
俊介「…………」
里美「ただそれだけです」
俊介「わざわざそれを言いに?」
里美「そうです」
俊介「ホントに?」
里美「しつこいです」
俊介「てっきりオレは―」
里美「え?」
俊介「今度こそ警察呼ぶのかと思った」
里美「…………」
俊介「これで最後だな」
里美「……ええ」
俊介「今からメシなんだ。じゃあ」

と、俊介が去ろうとする。
里美が俊介の背中に向かって、

里美「彼女さん―」
俊介「ん?」
里美「その彼女さんは―今はどうしてるんですか?」

〇フラッシュ

現在の愛乃のハリを失った顔、年齢の割にかなり老けて見える。

〇もとの会社・前

俊介「(躊躇って)」
里美「(俊介の顔色を窺って)」
俊介「楽しく生きてると思う」
里美「(俊介を見て)」
俊介「多分だけど」
里美「(悟ったような顔で)」

俊介が歩いていく。
里美が俊介の背中を見ていて―

〇繁華街(夜)

T「数日後」
相も変わらず若者たちで賑わっている。
里美がひとり、通行人たちに避妊具を配っている。
俊介がやってくる。
里美は気づいていない。
俊介、里美の方へ近づいていく。

俊介「(里美を見ていて)」
里美「お願いしま―」

里美、避妊具を差し出した相手が俊介だと気づく。
俊介が立ち止まり、里美の手元にある避妊具をじっと見つめる。

俊介「(里美の手元を見て)」
里美「(俊介の顔を見て)」
俊介「(里美の顔を見て)」

見つめ合うふたりの横を通行人たちが通り過ぎていく。
俊介、里美から避妊具を受け取ると再び歩き出す。

里美「(少し微笑む)」

里美、俊介の後ろ姿をしばらく見つめてから、再び通行人たちに避妊具を配り始める。
歩き続ける俊介。
ふたりの距離が離れていく。
俊介の頬が少し緩み、微笑んで―
<終わり>

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