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〇××高校・ジェニファーが通うクラス

英理がやってくる。
構内に溢れる来客者たち。
たくさんの生徒の中にジェニファーがいて、クラスメイトたちと仲良く客引きを行っている。

英理「(ジェニファーに羨望の目を向け)……」

と、ジェニファーが英理の視線に気づいて近づいてくる。

ジェニファー「先生! 来てくれたんだ!」
英理「たまたまヒマだったから」
ジェニファー「本当? てっきりノーサンキューなんだと思ってた」
英理「(ボソッと)いいね、ジェニファーは」
ジェニファー「(聞き取れず) ん?」
英理「なんでもない」
ジェニファー「気になるじゃん」
英理「なんでもないよ」

英理とジェニファーのやり取りを不思議そうに見ているクラスメイトたち。
ジェニファーが気づいて、

ジェニファー「ねぇ、みんなに紹介していい?」
英理「は? なんでそうなるのよ?」
ジェニファー「何となく」
英理「いいって」
ジェニファー「わかった。『良い』んだね?」
英理「ちがう! NOよ、NO!」

ジェニファーがクラスメイトたちに話すと、一斉が英理に挨拶する。
英理も挨拶するも、どこかぎこちない。

ジェニファー「先生、人気者じゃん」
英理「(照れて) そんなことないよ」
ジェニファー「さすがだね」
英理「……こういうのビギナーだから」
ジェニファー「さて、お腹もすいたことだしご飯でも行こっか」

ジェニファーが無理やり英理の腕を引っ張っていく。
突然のことに英理は慌てる。

英理「ちょっと!」

〇同・学食

英理とジェニファーの前にある蕎麦。
豪快にすするジェニファー。
手につけずにじっと見つめる英理。

ジェニファー「調理部の料理ってめっちゃ美味しいんだよね」
英理「(蕎麦を見つめていて)……」
ジェニファー「早く食べなよ」
英理「わかってる」

英理は箸に蕎麦をぐるぐる巻きつけ、つゆに漬して食べようとするも上手くいかない。
英理が視線を上げると、ジェニファーがじっと見ている。

英理「なに?」
ジェニファー「その食べ方、初めて見る」
英理「わるい?」
ジェニファー「別に」
英理「こうしないと食べられないの」
ジェニファー「もったいないね」
英理「は?」
ジェニファー「美味しさが半減しちゃう」
英理「あのさ、フォークない?」
ジェニファー「わがまま言わない」
英理「それとさっきからずっと気になってるんだけど」
ジェニファー「何?」
英理「そのズルズルってノイズ、どうにかならない?」

ジェニファーが豪快に蕎麦をすする。
とっさに英理が耳を塞ぐ。

英理「うるさいし、スープがとぶの!」
ジェニファー「この音が良いんじゃん」
英理「unbelievable」

ご満悦な表情のジェニファー。
不満な表情の英理、蕎麦を一口。

ジェニファー「めっちゃウケる」
英理「は?」
ジェニファー「それが先生への感想かな」
英理「もしかしてバカにしてる?」
ジェニファー「ううん、むしろその逆。初めて会う人だから、これまでどんな生活してきたのかなって考えるんだよね」
英理「……」
ジェニファー「他の人もそうだよ。ほら、人ってどんな生活をしてきたかで価値観が決まるって言うじゃん?」
英理「―カチカン?」
ジェニファー「あ、そっか。えっと、自分の考えって意味かな」
英理「アイデンティティね」
ジェニファー「英語だとそう言うんだ?」
英理「わたしは誰で、なにをしたらいいのかってことよ」
ジェニファー「要は自分探しってことか」
英理「ジェニファーはそういうのを考えたことある?」
ジェニファー「それは……まあね」

英理が周りを見渡して、

英理「……みんないっしょに見えるけど―」
ジェニファー「そんなのキモイじゃん。ロボットじゃあるまいし」
英理「…………」
ジェニファー「私たちは人だよ? みんな違うのは当たり前でしょ?」
英理「…………」
ジェニファー「そんなことより、麺が伸びちゃうよ? 早く食べなって」

ジェニファーが豪快に蕎麦をすする。
英理、箸に巻き付けた蕎麦を睨みつけながらパクリ。

<第7話へつづく>

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