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〇マンション・礼香の部屋

忠男にいきなり平手打ちする礼香。

礼香「ふざけないで」
忠男「…………」
礼香「そんなこと言わないで」
忠男「もう決めたことなんだ」
礼香「どうして? ねえ、どうして?」
忠男「……好きな子ができた」
礼香「え?」
忠男「肌が白っぽくて、礼香よりも性格がおっとりしてて、実家は大金持ちの子」
礼香「……………」
忠男「だからもうここにはいられない」
礼香「お金返して」
忠男「全部使っちまったよ」

雨が窓を叩き始める。
次第に天気は大荒れになっていく。

忠男「もういいかな?」

礼香、ふとキッチンに目をやる。
忠男が行こうとして、

礼香「ねえ」
忠男「ん?」

振り返る忠男。
礼香がナイフを持っている。

礼香「もし行くなら―刺す」
忠男「…………」
礼香「本気だよ?」
忠男「…………」

忠男が前に立つ。
礼香、どうしても刺せない。

忠男「オレなんかでキレイな手を汚すなって」

ナイフをもとの場所へ戻す忠男をさらに平手打ちする礼香。

礼香「出て行くなんて許さない。もし出てったら、わたし―わたし―死ぬから」

礼香、忠男の懐を何度も叩く。

忠男「……幸せになれよ」
礼香「忠男!」

ふと哀しい顔を見せた忠男が出て行く。

〇近くの道 (夜)

ずぶ濡れの忠男、涙を堪え切れない。やがて流れる涙は雨に紛れてしまう。

〇もとの礼香の部屋 (夜)

全身脱力の礼香、忠男が置き忘れた缶の箱を見つける。
中身は銀行のカードと通帳である。
名義は礼香のものになっている。

礼香「え?」

ページをめくるとかなりの金額。

〇礼香のイメージ

礼香が忠男にお金を握らせる。
忠男は礼香が出勤したのを確認して、銀行へ行きそのお金を通帳に預金。
彼は一円も礼香からのお金を自分のものとして受け取ってはいなかった。

〇もとの礼香の部屋 (夜)

礼香「まさか忠男―」

紙切れに一言だけ、『ごめんな』。

忠男の声「全部使っちまったよ」

礼香、その場に泣き崩れる。

礼香「……ウソつき」

〇近くの道(夜)

膝をついて泣き叫んでいる忠男。
大雨が彼に容赦なく降り注ぐ。

〇病院・中庭

真田がご飯を食べている。
マスク姿の忠男、やってくる。

真田「やあ」
忠男「……ども」
真田「風邪かい?」
忠男「ちょっと水浴びをしたんで」

真田、驚いた様子。
時間経過があって、

真田「そうだったのか」
忠男「いろいろお世話になりました」
真田「答えは出たようだね」
忠男「(うなずく)」
真田「これからどうするんだい?」
忠男「帰省します」
真田「寄生?」
忠男「そのキセイじゃなくて帰るほうの」
真田「あ、そっちか」
忠男「センセイらしいです」
真田「君も言うようになったね」
忠男「それほどでも」

真田が微笑む。

忠男「じゃあ、そろそろ」

忠男が行こうとして、

忠男「あ!」
真田「ん?」
忠男「お腹の子、どんな味するんですか?」
真田「噛まずに一気に飲み込むから、味まではさすがにね。どうしてそんなことを?」
忠男「実はオレ、花粉症なんです。もしよかったらそのコを―」
真田「それは出来ない約束だね」
忠男「え?」
真田「これはあくまで僕の研究の一環だ。さすがに知人といえども提供するのは―」
忠男「ジョーダンです」
真田「アニーちゃんに逢いたくなったらまた来てくれ」
忠男「もう来ませんって」
真田「いつでも待っているよ」
忠男「気が向いたら」

真田、見送る。
微笑みを浮かべた忠男が歩き出して―
<終わり>

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