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〇パチンコ店・駐車場

忠男は客としてではなく、警備員として車を誘導している。

〇同・休憩所

小休憩。
同僚の針川茂(58)、忠男の隣でたばこを吹かしている。

針川「おうおう、そりゃあ大変だったなぁ」
忠男「死ぬかと思いました」
針川「んで、もう平気なのか」
忠男「はい。このとおり」
針川「どれどれ―」

針川が忠男の胃の辺りを軽く叩く。

忠男「いたっ!」
針川「こりゃ健康そのものだいな」
忠男「いつもより力入れてませんか?」
針川「いや、ンなこたぁねえ」

針川がタバコを一服。
忠男はペットボトルの水を一口。

針川「ところでオメーに聞きてえんだが、ここにずっといる気なンか?」
忠男「何でですか?」
針川「もっとオメーを必要としてるトコがあるんじゃねえかと思ってよぉ」
忠男「辞めろってことですか?」
針川「そうじゃねぇって。若けぇんだから、こんなとこでいっつまでもバイトしてアブラ売ってねぇでもっと大きい夢追って外の世界で独り立ちしろってんだい」
忠男「……店の人と駐車場に必要とされてますし、これも立派な仕事だと思いますけど」
針川「オイラみてぇな老いぼれでもやれる仕事だぞ? ここでやるンならもっと社会を見てきてからでも遅かねえ。それにオメーにしかできねえことだってぜってえある」
忠男「…………」
針川「ま、はじめンときよりはだいぶマシにはなってきたけどな」
忠男「そりゃあどうも」

メッセージの着信。
忠男、ガラケーを操作する。

針川「おうおう、まだガラケーかよ?」
忠男「まあ」
針川「このオイラだってスマホ使ってんのに。オメーっていちいち珍しいヤツだいな」
忠男「スマホは位置情報のアプリ入れられるかもなんで。前にテレビで観て」
針川「居場所がバレるってか。恐えーな、うかつにネーちゃんトコへ寄り道できねえじゃねえか」
忠男「そうなんです」
針川「(小指立てて) ってことはコレかい」
忠男「違います」
針川「またまたぁ。ん? てことはココにいるのがバレるとまずいってことかい。仕事のこと相方さんにゃあ言ってんのか」
忠男「まさか。バレたら辞めさせられます」
針川「お? そりゃおかしなカップルだいな」
忠男「ウチのところはいろいろあって」

近くの従業員口、不審な男が若くてカワイイ女性店員に言い寄っている。

針川「元カレだとさ」
忠男「え?」
針川「(男を指差し) あのヤロウだよ。フラれたからって寄生虫みたいにずっと付きまとってるらしい」
忠男「何でそれを?」
針川「おうおう、ン十年ココに住み着いてる虫みてえなもンでな。そういったウワサはオイラの耳に入ってくンのさ」

〇フラッシュ

女性店員が悪げな男たちに囲まれて困っている麻衣に重なる。

〇もとの休憩所

針川「他人の不幸は蜜の味ってか。いるんだいなぁ、ああいうンが。近寄らねえに限るねぇ。くわばら、くわばら」
忠男「…………」

困っている女性店員、店の中へ逃げる。

<第6話へつづく>

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