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梶野家、ハジメと実乃里の寝室。

パジャマ姿の実乃里がやってくる。
ハジメはベッドで横になっている。
実乃里はルンルン気分。

ハジメ「なんか生き生きしてる」
実乃里「そう?」
ハジメ「うらやましいよ。ずっと休んでばかりだとツラくて」
実乃里「仕事ばっかでも疲れちゃうよ」
ハジメ「それもそうか」
実乃里「ところで夕飯は?」
ハジメ「とりあえず」
実乃里「そっか」
ハジメ「もうちょいしたら動けるんだけど」
実乃里「無理しないでよ」
ハジメ「きっとバチが当たったんだな」
実乃里「え?」
ハジメ「何でもない」

実乃里がハジメの指のヤケドに気づいて、

実乃里「どしたの?それ」
ハジメ「ちょっと火遊びした」
実乃里「なにそれ」
ハジメ「ただのヤケド。触っちゃいけないものに触ったから」
実乃里「ふ~ん」

実乃里がハジメに乗っかる。

ハジメ「ちょっ、なになに?」
実乃里「――うん」
ハジメ「子どもはまだ作らないって言ってなかった?」
実乃里「今日はいいよ、しても」
ハジメ「もう少し元気になってからね」
実乃里「体のどこが元気になればいいの?」
ハジメ「またそういうこと言うんだから」
実乃里「な~んてね。真に受けちゃって」
ハジメ「だと思った」
実乃里「あのさ――」
ハジメ「ん?」
実乃里「これから帰りが遅くなるかも」
ハジメ「え?」
実乃里「部長に昇進したの」
ハジメ「すごい!おめでとう」
実乃里「今よりもっと迷惑かけるかも」
ハジメ「忙しいのはお互い様だったろ」
実乃里「それもそうね」

実乃里がハジメの横にやってきて、腕にギュッと抱き着く。

実乃里「おやすみ」
ハジメ「――おやすみ」

リビングで芯太郎が家計簿をつけている。
ハジメが起きて来る。

芯太郎「眠れないのかい?」
ハジメ「昼にたくさん寝ちゃって」
芯太郎「そうか」
ハジメ「お忙しいですよね、失礼しました」
芯太郎「ここ、空いてるよ」
ハジメ「…………」
芯太郎「ちょっといいかな」

芯太郎に促され、ハジメが向かいの席に腰掛ける。

芯太郎「お茶淹れようか」
ハジメ「いえ、大丈夫です」
芯太郎「体が温まるぞ」
ハジメ「お構いなく」

キッチンでお茶を淹れ始める芯太郎。
ハジメはうつむいたまま。

芯太郎「実は、お願いがあるんだ」
ハジメ「――何でしょうか?」

もとの寝室。
寝ていた実乃里が目を覚ます。
横にハジメがいないことに気づく。

実乃里「ハジメくん?」

リビングのテーブルに茶碗ふたつ。
張り詰めた空気。
芯太郎がお茶を一口。
じっとしているハジメ。

芯太郎「冷めるよ?」
ハジメ「はい」

ハジメが慌ててお茶を飲んでヤケドする。

ハジメ「あちち!!!!」
芯太郎「口の中までは処置できないぞ」
ハジメ「すいません」
芯太郎「それでなんだけど」
ハジメ「――はい」
芯太郎「夫としてこれからも娘の実乃里を支えてほしいんだ」
ハジメ「もちろんです。体調が治ったらすぐ職場に戻って実乃里と共働きして――」
芯太郎「いや、そうじゃないんだ」
ハジメ「はい?」
芯太郎「君が主夫となって実乃里のことを支えてほしい」

シーンとなる室内。

ハジメ「……今、何と?」
芯太郎「君に主夫になってほしい」
ハジメ「主夫って、主に夫と書く?」
芯太郎「実乃里がこれから忙しくなる」
ハジメ「それは承知してます」
芯太郎「なら話は早い。どうか娘の面倒を見てほしい」
ハジメ「どういうことかオレにはさっぱり」
芯太郎「梶野家の婿は代々主夫をするんだ」
ハジメ「……え?」
芯太郎「これは習わしでね、僕も僕の義父もそのまた義父もそうだった」
ハジメ「習わしってそんなの聞いてないです。婿入りのが結婚の条件だったはずです」
芯太郎「言わなかったことは申し訳ないと思っている」
ハジメ「思っているって、話が違うでしょ」
芯太郎「…………」
ハジメ「会社を辞めろって言うんですか?」
芯太郎「……そうだ」
ハジメ「それはムリです」
芯太郎「無理を承知で言ってる」
ハジメ「オレ、仕事したいし家事なんて全然できないですから」
芯太郎「僕が教える」
ハジメ「はい?」
芯太郎「君にイロハを叩き込む」
ハジメ「さすがに相手がお義父さんでも、はいわかりましたとは言えません」
芯太郎「じゃあどうして家事が苦手と言っておきながら、不慣れなアイロンを自分からかけようとしたんだ?」
ハジメ「それは……」

『家事をしなかったことへの罪悪感』

しかし、それを言い出せない。
ハジメの頭の中には実家で家事をする実母・圭子の姿が思い浮かんでいた。
炊事、洗濯、掃除すべてを任せっきりにしていたことへの後悔がハジメを蝕んでいく。

実乃里の声「やめて、父さん

実乃里がやってくる。

ハジメ「実乃里」
芯太郎「……起きてたのか」

<episode18へつづく>

どうも、家事のハジメこと梶野ハジメです。
いつも読んで頂き、感謝感激です♪
前回までのブログは下のリンクから読めますので、どうぞご覧ください!
勝手にサブタイトルも付けました(笑)

登場人物
プロローグ
episode1 すべての始まり
episode2 ハイスピード草むしり
episode3 覚えてない、覚えてる
episode4 コーンフレークは硬めで
episode5 親の言い分 子の言い分
episode6 招かれざるヤツ現る!
episode7 オレの頭の上の避雷針
episode8 迫られる二者択一
episode9 義父の過去と実母のカレー
episode10 新婚写真のおもひで
episode11 妻と義母の食欲は成人男性並み
episode12 ハジメが倒れる3日前
episode13 罪滅ぼしの徹夜
episode14 点滴と家族と夕暮れと
episode15 義父からの看病
episode16 慣れない手つきで大ヤケド

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