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早朝5時の梶野家。
オーラを纏った男が廊下を歩く。

ハジメの義父・芯太郎である。
見た目は小物だが、顔は険しい。

ハジメがそそくさとやってきて、

ハジメ「おはようございます、本日もよろしくお願いします」
芯太郎「おはよう」
ハジメ「お義父さん、準備万端です」
芯太郎「よろしい。庭へ行くとしよう」
ハジメ「はい」

芯太郎が足を止めて、

芯太郎「ところでハジメ君……」
ハジメ「はい?」
芯太郎「最近夜中にパソコンで何をしてる?」
ハジメ「…………」
芯太郎「本体に触れたら暖かかった」
ハジメ「それは……明日の天気を調べてました」
芯太郎「ならスマホでも出来るだろう」
ハジメ「あとはレシピの勉強とかを」
芯太郎「てっきりいかがわしいビデオでも観てるのかと思ったよ」
ハジメ「まさか。実乃里がいますし」
芯太郎「ということは、そちらのほうは問題ないんだな」
ハジメ「……おかげさまで」

庭へ出たふたり。
夏の朝は太陽がギラギラ。

芯太郎「ではハイスピード草むしりを行う」
ハジメ「はい!」
芯太郎「タイムリミットは午前7時の妻と娘の食事の時間まで。目標は15袋分」
ハジメ「はい!」
芯太郎「では、始め!」

家事のハジメさんがログインしました。

家事のハジメこと梶野ハジメです。
ブログが義父にばれそうになりました(汗)
いやはや、危ない危ない。

あ、ハイスピード草むしりが終わりました。
ただ除草剤を捲こうにも連日の雨で流れちゃうし災難続きです。

どうやらこれを始めたのは義父・芯太郎の義父・辰吉郎さんらしいです。
梶野家主夫の伝統行事よ、終わってほしい。

長い前置きはこの辺りにして、
昨日の続きを書くとしましょう。

オレの元居た実家、若宮家でのこと。

ボサボサ頭にパジャマのハジメ、リビングのテーブル上にある料理をじっとみている。
母の圭子がため息ひとつ。

圭子「いつまで続けるの?」
ハジメ「ん?」
圭子「もうすぐ30よ?」
ハジメ「だね」
圭子「だね、じゃなくて。家事はどうするの?」
ハジメ「一人暮らしでもダメだったからな」
圭子「こりゃ先が思いやられる」
ハジメ「何とかなるよ、たぶん」
圭子「実乃里ちゃん、家事はできるの?」
ハジメ「……まあまあかな」
圭子「なにその自信なさげな良い方は?」
ハジメ「まだ同棲してないし」
圭子「そういう問題じゃないでしょ」

ボサボサ頭の父・亮助が起きて来る。

圭子「ほら、パパもなんとか言って」
亮助「(あくびして)おはよう」
圭子「(ボソッと)まったく親子そろって」
ハジメ「家事なんかその時何とかなるって。なあ、父さん?」
亮助「父さんもママと結婚する前はお前と同じだったぞ。ま、何とかなるだろ」
圭子「あのね。いつも言ってるけど――」
ハジメ「親はいつまでもいないっていうんだろ?もうそれ、聞き飽きたから」
圭子「(ムッとして)それよりさっさとその寝ぐせなんとかしなさい!」

圭子がハジメにタオルを投げる。
タオルを広げると中に下着一式。

圭子「いつまで人にやらせる気?」

圭子が怒って行ってしまう。

ハジメ「何でああなの?」
亮助「いつものこと」
ハジメ「だね」
亮助「でもいつまでもいないからな」
ハジメ「え?」
亮助「ママも、俺も」
ハジメ「……シャワー浴びてくる」

今思えばいつも当たり前なことが、こんなにもありがたかったなんて後悔しています。
父さん、母さん。
あなたたちの息子は今、何とかやってます。

……あれ?

何であの休みの日から書き始めたんだっけ?

ああ、そうだ。
実乃里とこの梶野家に行く約束をしたんだ。

この続きはまた次回にでも。

家事のハジメさんがログオフしました。

パソコンを消すハジメ。
芯太郎がやってきて、

芯太郎「まだ起きてたのか」
ハジメ「もう寝ます」
芯太郎「明日も早いぞ」
ハジメ「はい」
芯太郎「ああ、それと……」
ハジメ「はい?」
芯太郎「足腰がまだまだのようだ」
ハジメ「すいません」
芯太郎「草むしりは足腰だ。鍛えなさい」
ハジメ「わかりました」

芯太郎、ハジメに背を向ける。

芯太郎「今日はありがとう」
ハジメ「……え?」
芯太郎「水分補給、しっかりな」

背中で優しさを語る芯太郎。

ハジメ「……はい!」

<episode3へつづく>

そういえば皆さんにひとつ言い忘れました。
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