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SE 激しい雨音

ミチルM「傍らの窓を激しく叩いていた大雨がこの部屋の中にも降り始めた。私、雨野ミチルは今、病室のベッドに横たわり天井を見つめている。目覚めた時、目の前に天井があるようにきょうを健康に生きている人は明日もそれが当たり前であると思い込む。かく言う私もそのひとりだった。起きて、化粧して、バスに乗ってスマホいじって、仕事して、帰る途中にスーパーで晩御飯とお酒を買って、たらふく食べて、グーグー寝る。30を過ぎて目も歯も痛むけど、それでもなんとかやってきた。でもあの日、すべてが変わった。貧血で歪んでいく視界、荒くなっていく呼吸、奪われていく体の自由。そして告げられた家族性大腸ポリポーシスという、親から子へ遺伝する難病。《お前も母さんのように定期的に検査すれば問題はない》と父さんは言うが、逆に何もしなければ私はガンになる。母さんを恨んではいけないとわかってはいても、内視鏡検査のたびにきっと怒りが込み上げてしまう。そういえばきょうは晴れるはずが土砂降り、予報は大きく外れた。でも、子どもの頃から雨の日にはなぜか良いことが起こる。そうこうしているうちに、どんどん水嵩が増してきた。やがて満ちてこのベッドも病室も飲み込んでしまうだろう。でも大丈夫、きっと良いことがある。そう信じて私はゆっくりと体を起こした」

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