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2017年11月初旬。
大規模な書店にふたりの男女。

女性は記者・宇加賀井益代
とても不機嫌な顔をしている。

男性は物書き・スダ
とても上機嫌な顔をしている。

ひさかたぶりのコラムの幕開けだ。

益代「(無気力で)はい、始まりました」
スダ「益代さん?元気ないですね」
益代「あったりまえでしょ!!前回のコラムいつだと思う?2か月前よ?2か月前。わかる?トゥーマンスアゴーよ?」
スダ「いちいち英語に変換しなくても」
益代「またホーホーにうつつ抜かして」
スダ「別にそんなわけでは」
益代「ねえあんた、あたしのコラムとホーホーのどっちを取るの?」
スダ「ホーホーです」
益代「っておい!!!おいおい!!」
スダ「キャラ崩壊してきてますね」
益代「うるさい!それにしても、あんた前よりもブログの更新ペースが下がってるわね」
スダ「そうですか?」
益代「だって最大で5日くらい間が空いてるもん。ということはつまりこれはサボ―」
スダ「いろいろあったんです」
益代「お?そこは察しろと?」
スダ「いろいろ……ね」
益代「その4文字にどす黒いものを感じる」

ふとスダが足を止める。

益代「シナリオコラム、始まって半年経ってるのにまだたったの10回よ?」
スダ「特別篇を入れると11回ですけど」
益代「うるさい」
スダ「じゃあ、今回は特別にシナリオを学ぶ際にとっておきの本を紹介します」
益代「え、ホント?!」
スダ「これで機嫌直してください」
益代「宇加賀井益代が伺いますよ」

物書き・スダが棚から出した一冊の本。

スダ「この”物語の法則”という本で勉強しています」


物語の法則 強い物語とキャラを作れるハリウッド式創作術
※画像はamazon様より抜粋

スダ「物語がどのように出来ているのか?おもしろい作品とは何なのか?を必死に探していて見つけた一冊です」
益代「語気から必死さが伝わって来るわ」
スダ「おもしろい物語にはいくつかの共通点があります。それは主人公が観客が共感できる人であり、たとえ何度ピンチになっても自分の力で立ち上がって問題を解決するというものです」
益代「たしか、前も教えてくれたよね」
スダ「この本には神話理論をもとにしたストーリー構成で、起承転結で何を書けば良いのかが書かれています」
益代「ほうほう」
スダ「ちなみに著者は海外のプロの脚本開発のコンビです」
益代「うわあ、すんごい人たちだ!」
スダ「ちなみに前に発刊された神話の法則という本の続編的な位置づけです」
益代「神話の法則?」

神話の法則 ライターズ・ジャーニー
2002年発売のストーリーテリング本。
現在は絶版。ネット通販で購入可。

益代「あ、そういうことか」

スダ「なお物語の構成だけでなく、キャラの性格や特徴、テーマやメッセージ性の表現方法など事細かに書かれているのでとても役に立ちます」
益代「どれどれ?って厚っ!」
スダ「400ページですから。ボリュームがあって、中身も濃厚です」
益代「くわしく教えてよ」
スダ「続きは買って読んでください」
益代「どっかの番宣と変わんねえな」

スダ「わかりました……ここからはあくまで僕の解釈ということで話を進めますね」
益代「そう来なくっちゃ」

起承転結とは?

スダ「起承転結ってよく聞きますよね?」
益代「うん。国語の授業で習った」
スダ「念のためしつこく言っておきますけど、あくまで僕の解釈ですからね」
益代「わかってるって」

起:日常
主人公が成長する前の状態。
悩みを抱えながら何気ない日常を送っていることが多い。

承:出発
ふとしたことで主人公は冒険に出る。
そして悩みの元凶やこれまで背負ってきた運命と戦うことになる。
それは自らの境遇や心境だったり、襲ってくる人物だったりとさまざま。

転:核心
最大の問題に主人公が向き合う場面。
主人公が命を懸ける行動に出たり、絶体絶命のピンチになったりする。

結:決着
最大の問題が解決し、事態は落ち着く。
このとき主人公の心身は成長している。
なお、主人公の生死は問わない。

実際に観てきた映画のなかでは、

・スターウォーズシリーズ
・ターミネーター2
・バックトゥーザフューチャー3部作

これらを見るとそれがよく理解できる。

スダ「最近はモアナと伝説の海がこの構成をしっかりと取っていました」
益代「本編よりも構成を見てるのね」
スダ「ここからわかるように主人公は受け身ではいけないんですね。最初こそ受け身な姿勢ですが、冒険に出てからは自分から動いていることが多いです」
益代「なんだか社会人みたい」
スダ「はい?」
益代「新人のころって右も左もわからないでしょ?あたし、上司にここは学校じゃないんだから自分で考えて動けってよく言われたなあ。んで、年数が経っていくと余裕ができて自分で動けるようになる」
スダ「僕も最初の会社で言われました」
益代「つまり魅力ある主人公は物語が進むうちに自分の力で何とかしようと変わっていくんだね」

キャラについて

益代「物語の基礎はわかったけど、キャラをその上に置くってコトだよね?」
スダ「はい、そうです」
益代「でもぜんぶ似たような話にならないってのはなんで?」
スダ「それはキャラがみんな違うからです」
益代「キャラがちがう?」
スダ「たとえばあるキャラはポジティブ、あるキャラはネガティブと設定します。ふたりにある問題をぶつけるとします。するとポジティブなキャラは明るく捉えて問題を解決しようとします。しかし、ネガティブなキャラは暗く捉えて問題から逃げようとします」
益代「そっか、そのときにキャラがしそうなリアクションを考えることによって差別化するってわけね」
スダ「そうです」
益代「なんだか六つ子のアニメみたい」
スダ「あの作品はひとりひとり個性があるので、リアクションとなるセリフから動きにまではっきりと差が出てますよね」
益代「その説明わかりやすい」
スダ「生い立ち、口癖、見た目、性格がすべて同じ人はまずいません。その差を描き分けることが作家の仕事なんです」
益代「奥が深いねえ」
スダ「実は物語の流れはジャンルによって決まってるんです。問題はその上に存在するキャラがどんな動きをするかなんです。作家はそこを深く考える必要があります」

もしも、この本を読んだなら……

スダ「この本を読んだらやってほしいことがあります。本に書かれている洋画を片っ端からレンタルしてください」
益代「え?片っ端から?なんで?」
スダ「著者がなぜその作品を挙げたのか、その作品は何を訴えたいのか、観てから再び本を読むと言いたかったことがスッと心に入ってきます」
益代「あ、そうか!」
スダ「さらにジャンルもラブストーリー、コメディ、ヒューマン、ホラー、サスペンス、時代劇などの構成が学べます」
益代「そういうメリットもあるんだね」

スダ「僕は洋画をメインに観ます。邦画ならば単館系ミニシアターで上映されたものをレンタルします。それにはいくつかの理由があります」
益代「めっちゃこだわりの強さを感じる」
スダ「まず作品にオリジナル脚本が多いということ、次に洋画は俳優さんへの先入観を持ちにくく見やすいということ、邦画のミニシアター系作品には実力派俳優さんが多く出演されているので安心ということです」
益代「なるほど。クオリティ重視ね」
スダ「また海外の俳優さんは役作りへの情熱がスゴイので、キャラクターを掘り下げて演じているのでとても勉強になります」
益代「デ・ニーロ・アプローチかあ」

できればプロの声優による吹替版

スダ「欲を言えば日本語吹替があるもので、ちゃんとしたプロの声優さんたちが行っているものがおすすめです」
益代「洋画は字幕のほうが良いでしょ」
スダ「プロの声優さんたちは役やシーンに合わせた表現をされるので、観客は声を聞いたその瞬間から物語の世界に入り込めるんです。そして早口言葉でも聞き取りやすい。字幕でも良いのですが、セリフのテロップに集中していると喋っている俳優さんの顔を読み取れない可能性があります」
益代「そこまで気にしてるんだ」
スダ「発した声のアクセントと抑揚に注目します。物語の中ではキャラの表情とセリフは必ずしも一致しません。言葉の裏で何を思っているかは表情を見ます」
益代「なるほど」

アウトプットを忘れずに

スダ「映画をある程度観たら、つぎは自分のオリジナル作品を書きましょう」
益代「え?どうして?」
スダ「インプットしてアウトプットです」
益代「まるでスポンジみたいね」
スダ「これは恩師からの教えです。人は物事を吸収しただけでは生かせません。なので、吐き出すつまり書くことで表現ができて活かせるというわけです」
益代「ほうほう」
スダ「物語の仕組みやキャラをたくさん観ておくことで筆も進みます」
益代「作家は書いてナンボだもんね」

作品にはそれぞれ好みがある

スダ「最後になりますが、いろんな作品を観ているとどうしても腑に落ちないものも必ずあります」
益代「それはつまり面白くな――」
スダ「はい、そこまで。その時はなぜ自分がそう思ったのか?を分析してください」
益代「分析って?」
スダ「例えばこの作品をなぜ腑に落ちないと思ったのか考えます。すると、あ!ここでキャラやシーンがこうなってるからだ!とわかるんです。それを自分の作品を書くときの注意点にすればいいんです」
益代「あたしならレビューに書――」
スダ「それは控えましょう」

to be continued……

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