ページが見つかりませんでした – 脚本家 須田剛史 公式サイト https://monokaki-ts.com Fri, 22 Dec 2023 14:30:39 +0000 ja hourly 1 映画「ポトフ 美食家と料理人」 https://monokaki-ts.com/%e6%98%a0%e7%94%bb%e3%80%8c%e3%83%9d%e3%83%88%e3%83%95-%e7%be%8e%e9%a3%9f%e5%ae%b6%e3%81%a8%e6%96%99%e7%90%86%e4%ba%ba%e3%80%8d/ Fri, 22 Dec 2023 12:02:19 +0000 https://monokaki-ts.com/?p=6803 はじめに
(ブログの主旨)

感想やキャストや小ネタ等についてはいたるところで取り上げられている。

そのため、ここではその作品を観て「どのような構成なのか?」「どのようにしたら自分は面白いと感じたか?」等を考えることで自らの芸の肥やしにしていく

下記にネタバレを含むので、悪しからず。

観たきっかけ

もともとミニシアターが大好きで、移転オープンしたル・シネマ渋谷宮下へ行こうと決めていた。

上映スケジュールを見たら本作の告知ビジュアルが目に留まり、知る人ぞ知る映画そして人間ドラマが好みなので、これを選んだという経緯。

客層はご年配の女性がほとんど。
驚いたのはスクリーンの真ん中に歩道があり、座席が左右に分かれているところ。

そういえばもとは渋谷TOEIだった。

近所のヒカリエはかつて東急文化会館で、パンテオンや東急名画座といった映画館がたくさんあった。

駅周辺の再開発やシネマコンプレックスの増加やコロナ蔓延で閉館となったようだが、決してミニシアターは無くならないでほしいと切に願う。

3行で表すならば

美食家・ドダンが、愛する女性料理人・ウージェニーとの結婚や死別を経て、彼女の料理を再現するために奔走する物語。

題名の違いがもたらすもの

本作には展開に起伏が無い。

終始静かな描写が続き、「え?これで終わり?」という感じ。

「ポトフ」なるタイトルから、その料理を通じたふたりの物語なんだと思っていた。

予告編映像でも、長年(劇中のセリフでは「20年以上」)にわたって美食家と料理人というカンケイながら恋人未満な大人ふたりが、皇太子を唸らせるシンプルな料理・ポトフを作るべく奔走するものだとばかり。

ところが蓋を開けて見ると美しい料理シーンが多く、肝心なポトフの要素は薄く、ウージェニーは病に倒れてあっけなく亡くなってしまう。

そこからは最後までドダンが怒り嘆き悲しみ、山積みの問題はほぼ解決せずに終わる。

果たしてこの違和感の正体は?

原題を調べると「La Passion de Dodin Bouffant」(ドダン・ブーファンの情熱)、つまり「これは美食家・ドダンの人生なんだ」と思えば全編の描写がスッと腑に落ちてくる。

ゆえに邦題の「ポトフ」ではその料理にちなんだメインふたりのエピソードを想起させることになり、物足りなさを覚えてしまうのだ。

映画を観る際は原題と邦題の違いを確認する機会となった。

どうすれば[俺は]面白く感じるか?
(すでに観た人へ向けて)

料理に物語や深みを求める美食家のドダンは、自分の思い描くレシピを実際に生み出す料理人・ウージェニーと一緒に暮らしていた。

ふたりの奏でる料理は素晴らしく、ヨーロッパ全土に広まるほどの勢い。

ある日、ユーラシア皇太子から晩餐会に招待されたドダンは、豪華なだけで論理もテーマもない大量の料理にうんざりする。

そこでドダンとウージェニーは皇太子に振る舞う料理をシンプルだけどテーマを持ったポトフにすることに。

↑ここまでが本編のあらすじ↑
(以下、個人的な味付けストーリー構成
)

ところが、試行錯誤のなかでお互いの意見がぶつかって上手く(美味く)いかない。
(⇒主人公と副主人公の対立)

期限が差し迫るなか、ウージェニーが病に倒れる。
医師に診てもらうも長くないらしい。
(⇒タイムリミット)

瀬戸際に立たされたドダン。
彼女以外に料理人は考えられないと皇太子の件を断ろうとするもウージェニーに説得され、「何とかポトフを実現できる人物はいないか?」と躍起になるがなかなか見つからない。
(⇒主人公の大ピンチ)

そこへかつて使用人として働いていた天才的な味覚を持つポーリーヌ(※冒頭に登場するも、途中で実家へ帰っていた)が、ウージェニーが倒れたことを知って戻ってくる。
(⇒救世主の登場)

ドダンの指示通りにポーリーヌはポトフを作るが、納得のいくものではない。
(⇒再びピンチ)

そこへウージェニーが病を押してキッチンに現れ、ポーリーヌに最後のアドバイスを送る。
(⇒最後の賭け)

結果的に皇太子の舌を感動させることには成功したが、引き換えにウージェニーが亡くなってしまう。
ドダンからのプロポーズを病床の上、虫の息で受け止めながら…
(⇒別れ)

時は流れ、ドダンは新たな料理人としてポーリーヌを育てることに。
(⇒新たな冒険の始まり)

おわりに

こうやって作品を分析してみると、自分はどう書けばいいかがわかる。

あくまで個人的にはこうして書こうと思っただけで、それ以外の意図はない。

それにどの作品にも賛否はあるわけで、決して断言はできない。

これを皮切りにいろんなミニシアターに行きながら、素敵な作品に触れていく。

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LOGOTyPE 第2回公演「クロノス」鑑賞 https://monokaki-ts.com/logotype-%e7%ac%ac%ef%bc%92%e5%9b%9e%e5%85%ac%e6%bc%94%e3%80%8c%e3%82%af%e3%83%ad%e3%83%8e%e3%82%b9%e3%80%8d%e9%91%91%e8%b3%9e/ Thu, 28 Oct 2021 14:27:38 +0000 https://monokaki-ts.com/?p=6372

キャスト・スタッフ

吹原和彦 … 南翔太
蕗来美子 … 辻美優<elfin’>
海老名 … 今出舞
中林 … 平田友貴
頼人 … 堀田怜央
さちえ … 難波なう
野方 … 加藤大騎
藤川 … 大河日氣
津久井 … 篠田美沙子
鈴谷 … 田中結
久里浜 … 梅山涼
圭 … ちお
辻堂 … 佐藤ケンタ
足柄 … 氷室幸夫

原作:梶尾真治
脚本:成井豊
演出:山崎亨太

画像出典:LOGOTyPE様

あらすじ

ある夜の出来事。
九州の博物館にいる所長の女性・海老名のもとに、方言を喋る部下・中林が謎の男を捕まえたと言ってやってくる。

その男の名は吹原和彦
彼は鉢合わせした中林に殴られて気絶し、その部屋へと運ばれていた。

目覚めた彼はここへ理由を話し出す。

目的はその部屋の中にある機械。

クロノス・ジョウンターだ。

彼が最初にそのクロノスに乗ったのは2005年のこと。

その西暦を聞いた中林は「ふざけるな!」と侵入者の狂言に怒りをあらわにするが、海老名は和彦の話の続きを聞く。

かつて会社で時間転移装置・クロノスの研究をしていた彼は、学生時代に恋をした女性・蕗来美子が駅前の花屋で働いていることを知って通い詰めるも、彼女の同僚・からは好意をからかわれる始末。

しかしある日、子どもをよけようとしたタンクローリーの運転手がハンドル操作を誤った結果、彼女の働く花屋へ突っ込んでしまい爆発炎上。

巻き込まれた来美子は命を落とした。

病院で医師から来美子の弟・頼人や店長の辻堂は故人の関係者であると名乗るが、同行した和彦だけは彼女の何なのかわからず霊安室に入れなかった。

そんな不甲斐なさに打ちひしがれた和彦はあることを思いつく。

クロノスだ!

上司の野方や同僚の藤川津久井たちの反対を押しのけて、彼はクロノスに乗って自身を過去へと飛ばした。

事故当日の花屋の向かい側の歩道。
彼はすぐに彼女のもとへ。

ところが来美子は運悪く接客中。

何とか彼女に店から出るよう告げるも彼の言っていることが本当だと信じてもらえないばかりか、対応中の男性客・足柄にも制止されてしまう。

必死の訴えも空しくやがて突風が和彦を包み込み、あっという間にその場から消え去ってしまった。

気づくと彼は現在に飛ばされていた。

そんな彼を会社の同僚が迎える。
戻った日はクロノスに乗ってから数か月後。

もう一度と彼はクロノスに乗って過去へと向かうが、それでも来美子を店の外へ出すことができない。

2度の時間転移による反動で満身創痍になった和彦。
しかし決してあきらめられない。

そんななか、失踪をした兄を心配して田舎からやってきた妹のさちえ

和彦は彼女に失踪の理由を告げる。

やがて医師・鈴谷や看護師・久里浜らの制止を振り切って倉庫へ向かい、頼人やさちえが見ている前でクロノスに乗って3度目の過去へと戻る和彦。

現場で来美子に未来の新聞記事を見せたり、爆発による熱で半分溶けたブローチを見せたりするも、幾度となく邪魔が入って彼女を店の外へと連れ出すことができない。

どうしても運命を変えることが出来ずに苦悩する和彦。

彼が過去から現在へ戻るごとに時は経ち、野方たちによってクロノスの実体も解明されていく。

(過去にどれだけ居られるか、反動で飛ばされる年数はどれくらいかなど)

彼女を何としてでも救いたい。

そして、彼女に一言。
ただ一言、気持ちを伝えたい。

和彦は来美子を救うべく時間転移を繰り返すが、想いが強ければ強いほど過去へ戻るごとに未来へと吹き飛ばされる反動がどんどん大きくなっていき―

“なうだみさこ”の衝撃!

ハイ、やって来ましたメインコーナー!!

難波なうさんと篠田美沙子さんによる最強コンビ“なうだみさこ”、略して“なうみさ”と俺はコッソリ呼んでいる。

(ちなみに田中菜々さんがやって来ると最強トリオが結成される)

そのうちホントにふたりでユニット組んで公演してくれないかと勝手に思っている(笑)

このおふたりを観ないことには始まらない!!
ボイスドラマでは大変お世話になりました。

フライヤーを観て共演(競演)すると知った瞬間、もう「行く!」という選択肢しか思い浮かばなかった。

公演が行われるキンケロシアターといえば、ことのはboxの聖地ともいえる場所だ。

まずは、だみさこさん。

会場へ足を運ぶとステージの上に重厚な鉄のゲートがあった。

奥に見えるのがクロノス。

研究所の一室をモチーフにしており、ここで和彦たちキャストが物語を彩っていく。

開演からしばらくは閉まった状態でお芝居が続くのだが、和彦が初めてクロノスと出会ったシーンでゲートが開かれる。

それを開ける重要な役どころが、だみさこ姐さん演じる研究員・津久井亜紀だ。

真ん中で仁王立ちした彼女がクロノスの天井部のネジを回していくと、ゲートが開くという演出になっている。

前回公演「クロスフレンズ」では登場キャラの多さによる時間配分ゆえローラのシーンが少なく物足りなかったので、今回は要所要所でしっかり出演されていたことにホッとした。

ぴょん吉ーーー!!

さすが姐さん、存在感がスゴい。
立ち振る舞いに目を奪われる。

和彦の時間転移によって津久井の境遇も変わっていく。

1度目に戻って来た時は藤川と結婚。
しかし、2度目に戻って来たときは……

あちき、離婚したもんで!

(藤川がクロノスの実体を研究するために渡米の際、夫婦間で意見に違いが生じたため)

だみさこさんの声は毎回場内にスパーンと響き渡る。
それが実に心地よい。
トーンもそうだが、アクセントもこの心を捉えて離してくれない。

ずっと聴いていたいのだ。
スーッと落ち着く周波数を発しているんだろうね。

ゆえにボイスドラマⅡで主役にキャスティングさせて頂いたという経緯がある。

そして、なんばさん

ボイスドラマにおける育ての先生だ。
(生みの親は前身であるモノローグを担当した役者ふたりで、俺は産婦人科医ポジション)

LOGOTyPE様の舞台恒例、ロビーにあるフライヤーとキャスト紹介の用紙を客席で読みながら誰がどんな役をするのかをイメージしてワクワクするのが俺の恒例。

今回、さちえという役らしい。
ワクワクしながら今か今かと登場を待っている。

が、あれ?
なかなか出てこない。

博物館の女性…は今出さんか。

看護師?
と思ったら、梅山さんか。

そもそもさちえって、ヒロイン・来美子の関係者なのか?

上演中の役者たちの掛け合いを観ながら人間関係を頭の中で組み立てていく喜びを味わいたく、基本的にSNSや原作の前情報を入れない34歳上京男の焦り。

20分、

30分、、

45分、、、

いまだ姿が見えない。

え、このまま終盤だけの登場だったらどうするよ?

それじゃあ、ちょい役じゃん?

いやいや、彼女がそれだけのために舞台へ出るわけが……

と思ったら折り返し時点くらいでやっと出てきた!

中盤から出てきて盛り上げていくキャラ。
だみさこさんが演じた「歌姫」の及川美和子や、なんばさんが演じた「キ上ピーチ」の桜子ポジションだ。

まったく、焦らし上手なんだから( ̄▽ ̄)

「そっか、俺もこういう男になればいいのか!」と学びの機会をいただく。(いったい何のだよ)

さちえは、2度目の時間転移から戻った満身創痍の和彦を病院で見舞う若い女性。

まさか和彦の妹だったとは!
しかも方言喋っとるやんけ!

ことのは恒例、方言シリーズ番外編。

俺は方言のことはわからんが、流暢でいい。
その声の使い方がすごいからボイスドラマをお願いした。

何やらせてもマスターしちゃうこの子の能力といったら!

そして度肝を抜いたのが制服姿(笑)!

かつてボクシング部の先輩から因縁をつけられたことにキレて退部した頼人。

(このとき男性陣は皆、学ラン姿。なので渋い加藤さんやご年配の氷室さんもそのカッコでイキってる)

しかし和彦は来美子のために、頼人を先輩たちに謝って部活へ戻ってほしいと何度も説得する。

だが頼人は譲らない。
「ならば俺を殴ってもし倒れなかったら部活へ戻れ」と和彦。

そこへ制服の下に赤ジャージを穿いたザ・芋娘のさちえが兄の危険を察知して登場!

彼女が叫びながら舞台に飛び出てきた瞬間、頼人の頬にストレートをぶちかます(笑)

クロスフレンズ(なんばさんは出てないけど)からのクロスカウンター、いやさてはクロノスカウンター?

(※これがラストの重要なシーンにつながっているとも知らずに)

そのビジュアルが目に入った一瞬。
不覚だった。

我慢できず何度も手を叩いて大爆笑。
が、他の観客は全員シーンとしていた。

つまり、俺のでっかい拍手と笑い声が劇場全体にこだましてしまったのだ。

「あ! しまった!」

直後、その感情を抱いた。
が、そのまま敢えて止めずにずっと笑うことに決めた。
止めたら彼女に失礼だと思ったからだ。

舞台上で本気の情熱を魅せる演者へ観客は最高の賛辞をぶつけるべき、という信念ゆえ。

驚いたのはコメディパートだけではない。

3度目の時間転移を試みようと病院を抜け出し、倉庫にあるクロノスへと向かおうとする和彦をさちえは必死で説得する。

これ以上、時間転移で心身ともに傷を負う兄を見たくない。
それだけならまだしも、次は何年後に会えるかわからない。

わがままな兄への怒りと悲しみから声にならない声で必死に泣き叫ぶ妹。

ズキューン!!

殺られた。
これこそ難波なうなのだ。

その一挙手一投足で観る者の喜怒哀楽を見事に操る。
果たしてその力はいったいどこから来ているのか?

この人生の七不思議のひとつは一生解けそうにない(笑)

なうみさのおふたりは掛け合いこそわずかだが、同じシーンにそろって出ていたので大満足。

最強タッグのクロスカウンターに終始殺られっぱなしだった。

まるで和彦みたく満身創痍になりながら、これからもふたりのお芝居に殺られ続けたい。

なうだみさこ、略して”なうみさ”。
実に良い響きだ(笑)

本人たちが広めてくれないかな(^^)

わたし、待ってるから!
来美子の心の中と、スダの黒歴史

気になったのは来美子というキャラ。

演じる辻美優さんが持つ雰囲気も相まって、世の男が求める理想の女性に仕上がっている。

だけど実際そんな女性、なかなかいないような気がする。

(所詮は物語だもん、で片付けられそう)

いや、俺が人生上で会っていないだけでこの世のどこかにはひとりくらいいるのかもしれない。

そもそも男も女もそんなに澄みきっている心を持った存在なのだろうか?

「わたし、吹原くんのこと待ってるから!」

自身に死の危険が迫っているのに、もう一度彼が未来からやって来るのを信じて待つなんて。

どうしたらそんな信頼関係を築けるのか?

(ここから先はダークな黒のスダ(クロノス)ゾーンなので、出来れば俺のことを知ってる人だけに読んでほしい)

この舞台を観て、解決していないこの人生最大の問題が蒸し返された。

「好きになった異性との距離感がまったくつかめず、いつも関係が上手くいかない」という悩みだ。

それは北関東の田舎町にて。
共学の中学時代に始まったこの難問。

俺は大失恋の痛手から男子高校へと逃げた。
女子がいない環境に身を置けば二度と嫌な思いをしなくて済むと思ったから。

繊細人間(HSPの気がある)ゆえ自分のプライドが傷つき、女からこれ以上の深手を負わされたら自殺を選ぶかもしれないという恐怖に心が耐えられなかったのだ。

(これは男が「好きな女に理解されたい」という性質の生き物で、自尊心が傷つけられることを極度に恐れるため)

ところが逃げてみたら、今度は女性と何を話せばいいのかがわからなくなってしまった。

制服姿の若さあふれる異性と青春できない苦痛。
3年間のなかで女子に会えたのは2年に1度の文化祭のときと自転車通学の数分間だけ。
なんてもったいない。

なんとか克服すべく予備校に通って、大学へ行って、社会に出て、合コンへ行って女性に会う努力をするも、結果はダメでその都度無気力になっては逃げていた。

とはいえ深手や痛手をガッツリ負いながらも、異性の行動や表情や心の動きはそれなりに分析してきた自負はある。

転んでもただは起きないのがスダツヨシ。

幼少期から感受性や記憶力が人一倍高いため、関わる人たちの行動パターンや嗜好や怒りの沸点などをコミュニケーションから無意識にインプットしており、今では五感をフル活用して相手の行動の先を読んで常に先手を打つ意識をしている。

相手が感動して驚いた後に見せる笑顔が見たいのだ。

それによってこっちも生き甲斐を感じるし、人としての存在理由が持てるのだ。

なので後手に回ることは相手に主導権を握られることを意味し、こちらのペースを乱されるからイヤで仕方ない。

もちろん今でも時折乱されることはあるがだいぶコントロールできるようになり、ものの数時間や1日で回復できるまでになった。

(ちなみに上京前はお豆腐メンタルですぐにボロボロ。いつも体調を崩していた)

見返りを求めたくはないが、ゼロは難しい。

どんなに心に言い聞かせても欲の火は消えてくれない。

だから、男も女も心の澄みきった存在なのか?と疑ってしまうのだ。

いろんな書物を読んだり、たくさんの人に取材したりしていくなかで恋愛なるものの本質がわかってきた。

それは、ヒトという生物が次の世代に優秀な子孫の遺伝子を残すための試練。

つまりそれほど激し過ぎる競争なのだ。

どっかの薄っぺらい青春ドラマや純愛映画の「好き」なんて言葉は甘っちょろく、幼稚園児が言う「好き嫌い」なんて次元でも決してない。

色気やギャップ、とくに男性ならば人生経験や経済力が醸し出す余裕などで異性の心を揺さぶった者が勝つ。

惚れたら負け。
好きな気持ちを知った者が優位に立つ。

幼い頃から純粋に好きな気持ちを胸に抱いて、良い学校・良い会社へ行ってマジメに生きてさえいれば異性は振り向いてくれると疑わずに信じていた俺はそれを知ってショックだったのだ。

だからそれらの武器を何一つ持ってないと知った当時の自分は何度も無気力に陥った。

悔しかった。
いったい何のために俺は男として生まれてきたのか?

頼人やボクシング部のセンパイのような不良がふとした瞬間に優しさを見せると素敵なギャップになるのに、こちらは差し障りのないマジメ男だから同じことをしても何ら意味を成さない。

すべてがハードモード。
だから自分に足りないものを必死で追い求めた。
が、どうやっても手に入らない。

まさに負のスパイラル。
ダメな自分を恨んでは何度殺そうとしたか。

幸い向こうから惚れられることもあった。
だが、こちらは好意を抱いていない。
他人から遅れを取っている不安や焦りから一緒になったこともあったが、その先に待ち受けていたのは悲惨な末路と後悔だけだった。

では、なぜこちらから好意を持つとダメになるのか?

俺の場合だがおそらくそれは好意から「相手に受け入れられたい!」と願った瞬間、無意識に素の自分を殺しているからなのだろう。

恋した人間はチンパンジー並みの思考レベルに下がるらしい。

つまり普段は判断能力がしっかりしていても、その時は非常に危ういということ。

そこから好意を感じ取った相手が優位に立ち、こちらは迎合な姿勢ゆえ下手に出ざるを得なくなる。

だからいつものペースが乱されて、余計に関係がおかしなことになる。

対策としては向こう側のニーズを深く探り、こちら側の生き方や価値観と合っているかを見極めていく。

(向こうが安定な生活を求めてるのにこちらが夢追いな人生では合わないし、向こうがワイルドなEXILE系を求めるのにこちらが甘いジャニーズ系では合わないのと同じ)

もし合えばそのまま関係を前へと進めて、反対に合わなければ断って身を引く覚悟を持つ。

無理に相手の期待に応えようとしてはならない。

大切なのは、”足るを知る”こと。
己が元来何を持っているのか。
その味をフルに生かすことだ。

日々自らの在り方をより良くする姿勢を忘れることなく、ありのままの自分を殺さずに毅然とした態度で勝負していく。

これが20年以上悩んだのちに導き出した自分なりの答えだ。

ゆえに和彦の一途過ぎる恋心をよく来美子は受け止めたなぁと思ってしまうのだ。

傍から見れば和彦の好意はあまりにも一方的すぎてバレバレなのだから。

頼人をボクシング部に戻そうと和彦が奮起したのも姉の来美子と会うための口実(と見返りの期待)だったわけだし、彼女はそれに気づいていたはず。

俺だって和彦の立場なら同じことをするだろう。

(殴られて痛いのはイヤだけど)

それを受け止められるというのは彼女に和彦への好意がなければ成立しない。

仮に自分が和彦と同じ行動をとったら、相手の女性は果たして同じリアクションを取ってくれるだろうか?

和彦と来美子のやり取りを観ていてそう感じた。

じゃあ、俺はどうしたらいいんだろう?

ずっとその問題を見ているはずなのに、敢えて見ないフリをしてた。

だからこそ、ついにこの問題に向き合うときが来たんだと感じた。

幸いなことに、これまでずっと”女性は宇宙人だ”と思っていた自分が、今では心から信頼している知人女性たち(“なうみさ”を含む)へはこちらから話しかけて冗談を言えるまでになった。

人は変われる。
ここまで来れた。
だからあともう一歩。

苦悩の末に出した仮説が合っているかをしっかり行動して実証する必要がある。

上京して何もかも変わったんだ。
自分で選択や判断をしなければならない。

もう負けない。
傷つくことも受け入れていく。

残された時間は無いかもしれない。
このまま逃げ続けて歳を取ったら、二度と取り返しがつかないだろう。

もしクロノスに乗って数分だけ戻るなら、失恋して大泣きした中学時代の自分の前に現れて頬へ強烈なクロスカウンターを一発お見舞いしてやる。

「いきなりなんだよ! てかあんた誰?!」

田舎育ちのそのガキは花屋の辻堂のように、目を皿のようにして驚くだろう。

大丈夫。その頬の傷はすぐ癒える。

お前はひとり上京して、こうして何とか生きているんだ。

ヒトはそうせざるを得ない環境に身を置けば、生きていくために、自分の人生と向き合うためにどうすればいいか自分の頭で考えるようになる。

今負っているその心の傷だってぜんぜん大したことないさ。

そう言って笑みを浮かべた男は突風に吹かれ、遥か未来へ飛ばされるだろう。

果たしてそこは西暦何年の世界だろうか?

印象に残った役者さん

圭役のちおさん。

和彦が花屋で再会した来美子に見惚れていると、「好きなんでしょ?」「惚れてるんでしょ?」と彼にテンポよく突っ込みを入れるのがツボに入ってしょうがない(笑)

その佇まいや声色、ちょいちょい出てくる姿が実にたまらなかった(^^)

見て!ブローチが!
ネタバレ注意

和彦は藤川と津久井の元夫婦による連携や頼人とさちえの協力、そして野方との邂逅を経て4度も時間転移を繰り返した。

そして最終的に飛ばされたのは2062年。

つまり海老名と中林はその時代の人間だったというわけだ。

(だから中林はクロノスの実体を知る前、和彦の「2005年」という言葉に反応した)

その時代はIDカードが必須で、和彦は人には言えない仕事に手を出しながら何とか生き延びていた。

が、かつて自分を救ってくれた理解者たちのほとんどはもう生きていない。

事の全容を聞いた海老名は和彦がここへやって来ることを前から知っていた。

なぜなら彼女は頼人とさちえの娘だったのだから。

すでに頼人は亡くなり、さちえはまだ生きているという。

「母に会っていけば」という海老名の申し出を断る和彦。

会えば過去へ行く気持ちに迷いが生じてしまうから。

そして和彦はクロノスに乗る。

計算によると、次に和彦が飛ばされるのは数千年後の世界。

果たしてそこには何があるのだろうか?
それは本人にもわからない。
が、彼は恐れることなく過去へ向かう。

あの日の来美子を助けるために。

5回目の時間転移を行い、煙とともに姿を消す和彦。

すると海老名はあることに気づく。
そして中林に告げる。

「見て! ブローチが!」

よく見ると、手元の半分溶けていた来美子のブローチがもとに戻っていた。

和彦の切なる想いが通じた瞬間だった。

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room42 舞台「ラブ・ストーリーは特戦隊」鑑賞 https://monokaki-ts.com/room42-%e8%88%9e%e5%8f%b0%e3%80%8c%e3%83%a9%e3%83%96%e3%83%bb%e3%82%b9%e3%83%88%e3%83%bc%e3%83%aa%e3%83%bc%e3%81%af%e7%89%b9%e6%88%a6%e9%9a%8a%e3%80%8d%e9%91%91%e8%b3%9e/ Sat, 03 Jul 2021 13:18:15 +0000 https://monokaki-ts.com/?p=6304

公式サイト

キャスト・スタッフ

野村亮太(やまだのむら/room42)
伊与勢我無(ナイロン100℃)
Q本かよ
小島望
栂村年宣
難波なう

脚本/演出
白坂英晃(はらぺこペンギン!)

公式twitter

画像出典:room42様

あらすじ

ここは株式会社ジャスティスヒーロー課。

かつてはテレビの向こうで活躍していたヒーローたちも今ではサラリーマンとして働きながら、スポンサー企業の支援なしには怪人退治できないところまで落ちぶれていた。

陣内タカシ(演:伊与勢我無)はそこの課長だが正体は電気仮面サンダーであり、これまでにたくさんの怪人を退治してきた。

しかし、今では年齢的にガタが来ているためもうすぐ第一線からの引退を考えている。

部下の槇原のり子(演:Q本かよ)はそんな陣内の身を案じている。

そこへアメリカにあるドナルド・トランプ大学からひとりの青年・マイケル富川(演:野村亮太)がインターンでやってきた。

そんな彼の案内役として社員の浅野ユウ(演:小島望)が課の様子を見せる。

のり子は魔法少女マジクリンとして、ユウ(本部長の保阪と不倫中)はカードファイター☆ユーミンとして活動はしているが、怪人を退治する際にちゃんとスポンサー名(ピ○-ラとピ○ハット)が見えるようにして敵を倒さないといけないという縛りに悩まされる日々。

富川はユーミンの変身シーン(例えるならセーラームーンのそれ)に興奮しながら、ヒーロー課の人たちと徐々に交流を深めていく。

若い頃は変身した姿で激しく社内でバトルを繰り広げていた陣内とのり子も、年齢のせいかかつてのパワーを出せずに衰えを感じていた。

現在戦えるのは23区内に現れるBランクかCランクの怪人のみ。

もしそれより上の敵と戦って負けた場合、会社の名前に傷がついてしまうのだ。

落ち目の彼らをよそにAランクの怪人(ヌルヌル男、水滴魔)をバタバタと成敗していく人物が!

ヒーローYouTuberとして活躍している若い女性、その名は江口ヨウ(演:難波なう)

本部長の保阪ナオト(演:栂村年宣)はそんな彼女の活躍に目をつけ、契約を結んでヒーロー課の再生やそれにまつわるある計画(若い女の子たちを集めてヒーロー教育をさせる、ヒーロー坂46の結成)を密かに目論む。

陣内はえぐっちゃんの姿に誰かの面影を見る。

それは5年前、彼が愛した女性・ホナミ(演:難波なう)

ホナミは息子を連れており、陣内はふたりのことを妻子のように迎え入れた。

しかし、カメレオン怪人たちとの戦闘のさなかホナミたちに危害が及んでしまったことで心を痛めて離れ離れに。

「じゃあ、日曜にキャンプ場で」

えぐっちゃんとデートの約束(?)を交わす陣内の姿にのり子の心は揺れ動く。

のり子は陣内のことがずっと好きだったのだ。

もしかしたら彼はホナミの面影を今も追っているのかもしれない。

そんなのり子の姿を見たえぐっちゃんは不敵な笑みを浮かべる。

果たして、彼女は何者なのか?

トレンディな小ネタ

キャラクターの名前を見てピンと来た人は多いはず。

そう、90年代のトレンディドラマを盛り上げた方たちが元ネタになっているのだ。

陣内タカシ→陣内孝則

槇原のり子→槇原敬之

浅野ユウ→浅野ゆう子

マイケル富川→マイケル富岡

保阪ナオト→保阪尚希

江口ヨウ→江口洋介

ホナミ→鈴木保奈美

さらに開演前には小田和正の「ラブ・ストーリーは突然に」が流れるという大サービス。

これにはカンチも「ずっちーな!!」

今の10代の人たちは生まれる前だからピンと来ないかもしれない。

とか言ってる自分も当時ギリ小学校入学前だったから、かなりおぼろげだが。

ただ自販機が安かったこと、お金回りが今より良かったこと、世間の空気が大らかだったことは肌で感じていたのではっきり覚えている。

ポケベルが主流だったあの頃。

ケータイやスマホなどなく、会えないことが男女の仲を引き立てていた。

今やプライバシーも謎も無くなりかけている時代。

「不自由だからこそ成り立っていたことがたくさんあったんだなぁ」と当時はガキでまだ何も経験してない三十路半ばの男が勝手にそう振り返ってみる。

さらにさらにメインビジュアルにも小ネタが仕掛けられており、キャストが持っているもしくは身に着けているアイテムが実に細かくて良い!

陣内→黄色のスカーフ
のり子→マジクリンのロッド
ユウ→カード
富川→本
保阪→ブランデーグラス
えぐっちゃん→自撮り棒&マント

もうひとつの同時上演作品「ずっ止まってる」のメインビジュアルは昼の屋上で、こちらは夜の屋上。

その比較まで見事に計算されている。

不意打ちの”なんば200%”

「やられた!」

その一言に尽きる。

オープニングでフワちゃんのようなド派手な衣装にマントをはためかせて物語の概要を言う難波さんを観た時だ(笑)

そして、

「最後まで凄いことが起き続ける!」

そう確信した。

まるで幽遊白書の戸愚呂弟が暗黒武術会で100%中の100%というフルパワーを発揮するように、難波さんが200%の姿で舞台の上にいるのだ。

もちろんこれからもパーセンテージはグングン上がっていくだろう(笑)

もしかするとインフィニティか?

たとえ1000%の状態に進化してもまだまだ余裕を見せつけてくる感じさえする。

(そういえばトレンディな時代に「君は1000%」という曲があったよね)

舞台「ガリレオ★CV」で落ち着いた大人の女性刑事を演じていたのを観ていただけに、そこからの反動があまりに凄すぎて本作で初めて舞台に姿を現したときは思わず大爆笑してしまった。

うれしすぎたのだ。
まるでカメレオンのように、舞台ごとに姿を変えてしまう彼女に。

(ハッ! それは本作のネタバレ部分をまるで予期していたかのような! もしや制作側は俺がこう思うことを最初から狙っていたのか?!)

怪奇!えぐっちゃんの正体は!!
ネタバレ注意

陣内とえぐっちゃんの仲を疑い、酒に飲まれてやさぐれたのり子は勢いでその場に現れた怪人へ立ち向かおうとするも物の見事に敗北。

会社の名に大きく傷をつけてしまう。

見かねたえぐっちゃんはのり子をタクシーに乗せてどこかへ向かう。

知らない場所へ向かっていることにのり子は慌てる。

えぐっちゃんは彼女を人質に取ったのだ。

標的は陣内。

当の彼はえぐっちゃんから電話で指定された場所に呼び出される。

彼女の正体は5年前、陣内に倒されたカメレオン怪人たちの生き残りだったのだ!

電気仮面サンダーの姿でその場に参上する陣内。

(上の集合写真。左太もものDAKARA DOMYのロゴが地味にツボに入ってしょうがない笑)

彼はえぐっちゃんの正体におおよそ見当がついていた。

カメレオン怪人はいろんなものに化けることができる性質を持つ。

あの時に一体だけ取り逃がした怪人が生き延びて自分に復讐をするのならば、きっとホナミの姿に化けて自分を油断させようとしているのだろうと。

陣内がえぐっちゃんとキャンプ場でふたりきりで会う約束をしたのは、誰もいない広い場所でカメレオン怪人と一騎打ちするため。

えぐっちゃんは大事な人を奪われる苦しみを味わわせようと陣内の前でのり子を殺害しようとする。

ところがピンチに陥った陣内とのり子はそれぞれ自分の素直な気持ちに向き合い、その場で告白し合うと舞い踊りながらどこかへ行ってしまう。

攻撃の機会を奪われて呆気にとられるえぐっちゃんはふたりの後を追う。

そして訪れる決戦のとき。

相変わらず陣内とのり子がピンチという状況は変わらない。

陣内はある秘策に出る。

それは富川がオフィスに持って来た装置で己のパワーを最大限に引き出し、敵もろとも自滅しようというもの。

しかし、なぜか装置は作動しない。

駆け付けた富川が阻止したのだ。

彼の正体はアメリカのドナルド・トランプ大学のインターン生ではなく、ホナミの息子だった!

彼は5年前に怪人の組織に人体改造されてしまい、実年齢は幼いのに肉体だけが急成長してしまったらしい。

そんな富川にえぐっちゃんの攻撃が効くはずもなく、すべて掻き消されてしまい挙句の果てに返り討ちに遭って捕らえられてしまう。

退治するかどうか迷う陣内たち。

えぐっちゃんは人から人へと変身していくうちに心に迷いが生じ始めていた。

徐々に人の心を、感情を、持ち始めていたのだ。

ヒーローの陣内もまた、彼女の仲間たちを役目とはいえ倒してしまった負い目や苦悩を背負っていたために彼女を生かすことに決める。

そして言葉遣いや態度をのり子やユウに更生させられながらえぐっちゃんはヒーロー課のメンバーとして活動していくことに。

こうして保阪が目論んだヒーロー坂46計画は見事に立ち消え、ヒーロー課の面々はきょうも力を合わせて怪人たちを退治していくのだった。

今度こそ愛妻家

本公演の出演者を観て驚いた。

陣内役の伊与勢我無さんと富川役の野村亮太さんは、難波さんとともに舞台「今度は愛妻家」で共演されていたのだ!

(伊与勢さんは主人公のカメラマン・北見俊介役、野村さんは彼のアシスタント・古田誠役、難波さんはモデル・吉沢蘭子役)

さらにスタッフの欄を見て驚く。

当日運営に蒼井染さんの名もあるではないか!!

彼女も「今度は愛妻家」のメインキャストであり、主人公の妻・さくら役だった。

その4名が一堂に会するなんてあまりにも贅沢すぎる。

(別の意味で役者が揃ってる)

さらにエンディングで6名が2人1組になって踊るのだが、陣内とのり子のカップル、ユウと保阪(場面転換の繋ぎと称してユーミンのカード能力で盆踊りをさせられる始末)の不倫ペア、そして富川とえぐっちゃんのコンビとなっている。

これがまた良い!
あの舞台を観た自分にはグッとくる。

(「今度は愛妻家」の本編にて古田と蘭子は急接近して一夜を共にするも、トラブルが起きて別れてしまう。直接的な描写は無いのだが、終盤で古田が蘭子のもとへ駆けつけてよりを戻したことがそれとなく暗示されている)

そして富川とえぐっちゃんの助力で陣内がホナミの一件を乗り越え、今度こそ愛妻家としてのり子を最期まで愛し抜くようになるのかな?と妄想をひとりで勝手に繰り広げていた(笑)

こういう楽しみがあるから舞台鑑賞はやめられない(^^)

おわりに

コンセプトは「トレンディドラマ」と「ヒーロー」の融合。

昭和とバブル、斬新な切り口とぶっ飛んだキャラクターたち。

……すごい。

改めて己の未熟さを痛感した。

もっといろんな舞台に触れて、腕を磨いていかなければ。

決して負けてられない。

舞台上で輝くキャスト6名。

そして受付のスタッフさん、場内を案内するスタッフさん、さらに一番後ろの席だったため振り返ると音響・照明スタッフさんがいらした。

部外者ゆえに観ることも立ち会うこともできないが、稽古の風景やゲネの様子に想いを巡らせる。

メンバー誰ひとり欠けても成立しない現場。

このコロナ禍で、大変な状況を必死にくぐり抜けて公演をしているその重厚な空気を深く噛み締める。

帰りの電車の中で小田和正の「ラブ・ストーリーは突然に」を聴きながら、車窓から見える下北沢の街を後にした。

これからもたくさんの現場の人たちと仕事して、その方々を心から幸せにしていきたい!

そしてこの身に「サクセス・ストーリーは突然に」訪れることを心より願う。

「奥義・成功者の術!」

と、自撮りカメラに向かって発するえぐっちゃんの声がどこからともなく聞こえた。

大丈夫、うまくいく。

そう確信した6月の夜だった。

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LOGOTyPE ミュージカル「クロスフレンズ」鑑賞 https://monokaki-ts.com/logotype-%e3%83%9f%e3%83%a5%e3%83%bc%e3%82%b8%e3%82%ab%e3%83%ab%e3%80%8c%e3%82%af%e3%83%ad%e3%82%b9%e3%83%95%e3%83%ac%e3%83%b3%e3%82%ba%e3%80%8d%e9%91%91%e8%b3%9e/ Sat, 26 Jun 2021 10:15:37 +0000 https://monokaki-ts.com/?p=6208

公式サイト

キャスト・スタッフ

橋本愛奈
花房里枝<elfin’>
遠藤瑠香

仙葉由季

持田千妃来
加藤大騎

岩田玲
田中菜々

親泊義朗
おくつようこ
篠田美沙子

氷室幸夫
田中結

箕輪奈穂江
山中博志
佐野眞一
天野きょうじ

舩木勇佑
佐藤ケンタ
平田友貴

鍋倉和子

堀健二郎

石塚咲妃
今井怜奈
郡司聡美
萩原綾乃
岬優希

作:麻草郁
演出:酒井菜月
プロデュース:原田直樹

公式Twitter

画像出典:LOGOTyPE様

大まかなあらすじ

この物語の構成はメリーゴーラウンド方式となっている。

(ある関わり合いを持った複数の同格の登場人物が、それぞれあまり絡み合うことなく、交互に並行的にストーリーが進んでいく構成のこと)

いろんなキャラによる各パートが同時進行で展開していき、クライマックスで旧ルート66沿いのひなびたダイナーに全員が集結するというもの。

アン・アロイス(演:橋本愛奈)
ベティ・バーナード(演:花房里枝)
クリス・コーダンテ(演:遠藤瑠香)

高校の女子学生3人のメインパート。
優等生のアンは、恩師・バネッサ(鍋倉和子)と卒業後の進路で話し合っている。
が、どうしても答えは出ない。

やがて彼女は卒業論文を書くために外の世界を知ろうと決意をする。

級友のベティとクリスはそんなアンの気持ちをよそに、ラスベガス旅行を計画している。

将来に悩むアンと今という青春に浮かれるベティとクリス、そんな3人のロードムービーが始まった。

デボラ(演:仙葉由季)

もうひとつのメインパート。
ホワイトフラワーなる麻薬を売りさばく悪女と呼ばれる彼女は、闇の世界で暗躍するウンダー・アッツ(演:堀健二郎)ノーマン・ノット(演:舩木勇佑)、ギャング風のソード・スペンサー(演:佐藤ケンタ)トビー・トバイアス(演:平田友貴)から命を狙われている。

さらにFBIや麻薬捜査官からも追われている始末。

彼女にはかつて愛する男と幼い息子がいたが、今は離れ離れになっている。

謎多き彼女は逃げる道中、アンたち一行とレストランで出会い―

エイジャイ・エルンスト(演:持田千妃来)
ジャン・ジャック・ジャロ(演:加藤大騎)

エイジャイは昆虫探しの少年。
そこへ渋い男性が乗った車が通りかかる。

彼の名はジャン・ジャック・ジャロ。

なぜジャンはエイジャイに声をかけたのか?
それは昔亡くした息子に似ているから。

どうやら2年前に3歳で事故死したらしい。

やがてジャンはある女性の姿を見る。
デボラだ。

しかしそれは麻薬・ホワイトフラワーが見せたフラッシュバック―

やがてジャンはデボラとかつて夫婦だったことが明らかになる。

ハンス・ハルバート(演:岩田玲)
イザベラ・イルゼ(演:田中菜々)

ハンスは苦悩していた。
ダイナーのウエイトレス・イザベラに心奪われてしまったのだ。

これまでいろんな女を手玉に取り騙してきた結婚詐欺師の彼は、初めて心から人を好きになってしまったのだ。

花束を抱え、イザベラに想いを伝えようとするがそこへかつての自分を知るソードとトビーが横槍を入れてくる。

自らが犯した過去の出来事からは逃れられないと知り、失意の彼は店を飛び出してしまう。

果たしてふたりの恋はうまくいくのか?

ケネス・ノックス(演:親泊義朗)
マーク・マクガバン(演:おくつようこ)
ローラ・ローレン(演:篠田美沙子)

FBIのケネスとマーク、そこへローラと名乗る女性がやってくる。

少しお高くとまった令嬢のような彼女、実は麻薬捜査官。

デボラやホワイトフラワーについて追跡しているが、捜査方針や信念の違いでケネスと衝突する。

やがてローラは銃撃戦のさなか負傷。
その一件で現場のことを知り、次第に心を改めるようになって―

フィガロ(演:氷室幸夫)
ゲルダ(演:田中結)

優しいオーラを漂わせる老夫婦のふたり。

フィガロは掃除が苦手、ゲルダは料理が苦手。
それをうまく補い合っているから今も関係が続いているのかもしれない。

道すがらエイジャイとジャン一行に出会い、車に乗せてもらう。

しかし途中でジャンがフラッシュバックに陥って、別行動を取ることに。

向かう先はラスベガス。
このふたり、実は殺し屋という面を持っており、これまでに何人もの人物を殺めてきたのだ。

オリビア・オハラ(演:箕輪菜穂江)
パトリシア・ポーン(演:山中博志)
クェンティン・クゥワイア(演:佐野眞一)
レイチェル・ローズ(演:天野きょうじ)

サタデーナイツというニューハーフの3人組と、彼らをマネジメントする1人の女性。

ツアーでラスベガスのショーへと向かう途中、車がガス欠してしまう。

やがてクェンティンが麻薬に手を出していたことが判明。

・酒を飲み過ぎない
・タバコを吸い過ぎない
・麻薬には絶対手を出さない

彼らが交わした3つの誓いが破られてしまった。

3人の堅い友情は壊れてしまうのか?

アメリカンとJ-POPの融合

何がすごいかというと、キャストが全員アメリカ人の姿で邦楽を踊りながら熱唱するというコンセプトだ。

公演を観ているときは気づかなかったが、家に帰ってからその不思議な違和感の正体に気づいた。

オープニングと休憩明けでは全員が揃って歌って踊る。

いやあ、その人数の多さよ(笑)

まるで密を禁ずる今の時代へのアンチテーゼみたいでカッコイイ。

それにしても選曲が懐かしい。

メロディを聴くだけで小学生や中学生だったころに一瞬でタイムスリップしてしまう。

こうやって過去の名曲が現代で歌われるってとても素敵なことだ。

楽曲リスト

<前半>

#1 YEN TOWN BAND
「Swallowtail Butterfly 〜あいのうた〜」

#2 SADS
「忘却の空」

#3 浜崎あゆみ
「Fly High」

#4 JUDY AND MARY
「そばかす」

#5 DREAMS COME TRUE
「晴れたらいいね」

#6 L’Arc〜en〜Ciel
「Driver’s High」

#7 松任谷由実
「真夏の夜の夢」

#8 サザンオールスターズ
「希望の轍」

<後半>

#9 the brilliant green
「There will be love there -愛のある場所-」

#10 鈴木亜美
「BE TOGETHER」

#11 安室奈美恵
「Chase the Chance」

#12 川本真琴
「1/2」

#13 LINDBERG
「今すぐKiss Me」

#14 My Little Lover
「Man & Woman」

#15 THEE MICHELLE GUN ELEPHANT
「世界の終わり」

#16 JUDY AND MARY
「小さな頃から」

ex 休憩時、終演時
「希望の轍」

―全曲、名曲
あなたは何曲歌えますか?

というキャッチコピー。

私は#15と#16以外はわかった👍
コンプリートならず(-_-)

そして、るろ剣率高し(笑)
実写映画も公開しているから実にタイムリー。

余談だが、これらの曲って許可取るのかなり大変だったんじゃないのか?

なんて良からぬことを考える自分。

東京に活動の拠点を移してから舞台を鑑賞しまくった結果、客席50%のなかでチケット代やら集客数やら収益やらギャラやら会場のレンタル代やらどうしているのか、制作側の企画意図や苦悩をやたら分析する脳になってしまった(汗)

(しかも観に行った公演の回が配信も行っていたので、使っているビデオカメラの台数や機種や性能、その仕事を担うスタッフの人数などいろいろ計算してしまった)

フライヤーのスタッフ欄に楽曲制作された方が記載されているが、選曲から依頼そして完成に至るまでどのような経緯があったのかがすごく気になって仕方ない。

ところで歌唱指導はオリビア役の箕輪さんだったんですね!

会いたかった人々

待ちに待った鑑賞日。
ワクワクしながら六行会ホールの受付へ。

主宰の原田直樹さん酒井菜月さんのお姿が!

昨年のボイスドラマでは大変お世話になりました。

客席の出入口には岡崎良彦さんのお姿も!

そして篠田美沙子さん、佐藤ケンタさん、田中菜々さん、花房里枝さん、加藤大騎さん、天野きょうじさん、親泊義朗さん、氷室幸夫さん

再び皆さまのお姿を舞台で観ることができるなんて!

全員がたとえ舞台衣装の格好でガッツリ踊り歌っていても、そのシルエットで誰だかわかる幸せ。

目の前で「見よ、飛行機の高く飛べるを」が、「彗星はいつも一人」が、「歌姫」が、まるで昨日のことのように思い出されて……

芯の通った声で気の強い役が見事にハマっている篠田さん、ニヒルでストリート系のイケメンになった佐藤さん、「彗星は~」の菫のように可憐さとケンカ腰な面を見せる田中さん、「歌姫」の清楚な女性からへそ出しルックのキャピキャピした学生になった花房さん、渋さにさらなる磨きがかかった加藤さん、漁師からニューハーフへと変身した天野さん、「歌姫」の白髪おじさんからFBI捜査官へと若返った親泊さん、「歌姫」と同じように今回も大きな存在感を見せつけてくれる氷室さん。

ああ、全員が目の前にいるんだ。
これは夢じゃないんだ。

無意識に涙があふれたのはここだけの話ということで(笑)

そしてあの状況下で「ジプシー」と「楽屋」を観に行けなかったことをお許しください。

東京を活動の拠点にした今、その分を思いきり取り返しに行くので。

最も大変であろう方々

本公演を観ていて、最も大変だったのでは?と思った人たちがいる。

アンサンブルの5名の女性(石塚さん、今井さん、郡司さん、萩原さん、岬さん)だ。

シーンごとに衣装替えを素早く済ませ、踊り、歌い、大道具の外車を押し、レストランのシーンではイザベラの同僚たちの役としてセリフをしゃべる。

これらは体力の管理をしっかりしてないとできない荒業だ。

もちろん他のキャストさんたちもそうなのだが、その5名が群を抜いてあちこち動いていた印象が強い。

4日間で7公演、かなりのエネルギーを要する。
全員のストイックさが節々に垣間見えた。

現場の人たちって本当にすごい。

待ちに待った復活の日

当日の配布チラシを観て、思わずガッツポーズ。

そう、ことのはboxの再始動である!

この日をどれだけ待ったことか!!

第16回公演「おつかれ山さん」

脚本:鈴江俊郎
演出:岡崎良彦

なお、主宰が酒井さんと岡崎さんになることが発表された。

場所は昨年行けなかったシアター風姿花伝。

「ジプシー」と「楽屋」が公演された劇場。

現場で案内する原田さん、酒井さん、岡崎さん、篠田さん、佐藤さんの姿が思い浮かぶ。

次は絶対行く。
年明けがとても楽しみだ!

さらにさらなる吉報!

原作は「黄泉がえり」の梶尾真治さん。
脚本は「彗星はいつも一人」の成井豊さん。

そして演出は山崎亨太さん!

「見よ、飛行機の高く飛べるを」の校長先生、そして「彗星はいつも一人」では演出もされていた。

場所は、ことのはbox様の公演を観た人なら思わずニヤリとする中目黒のキンケロシアターだ!

10月なんて都内にいればあっという間にやって来る。
観に行かねば!

おわりに

「会いたい人に会いに行くって、実は凄いことなんだよね」

先日久しぶりに再会した人生の先輩がそう口にした。

会いたいけど会えない。
先延ばしせざるを得ない。

今の状況下ではますますその流れに拍車がかかっている。

そして「会いたい人に会う」ことがとても貴重なことになってしまった。

たとえもし今がそういう状況になっていなかったとしても、ほとんどの人はまた今度があるからと先延ばしにして、向こうが遠くに引っ越したり、亡くなったりして後悔するのがオチ。

それに抗うように私は生きていかなければならない。

現場に会いたい人がたくさんいるからだ。

実際に面会はできないが(本当はめっちゃ面会したい)、目の前で活き活きと動き、セリフを発している役者さんたちの素顔を知りたい。

お話をしたときにどういった雰囲気なのか、どんなギャップを持った人なのか、クセは何なのか、どんな信念を持っているのか。

それをイメージするだけでワクワクが止まらない。

常に刺激を受けていたいのだ。

そんな熱い想いを胸に、私は帰りの電車に乗るべく京急電鉄の新馬場駅へと向かった。

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オリジナル音楽劇「ガリレオ★CV」鑑賞 https://monokaki-ts.com/%e3%82%aa%e3%83%aa%e3%82%b8%e3%83%8a%e3%83%ab%e9%9f%b3%e6%a5%bd%e5%8a%87%e3%80%8c%e3%82%ac%e3%83%aa%e3%83%ac%e3%82%aa%e2%98%85cv%e3%80%8d%e9%91%91%e8%b3%9e/ Sat, 05 Jun 2021 02:00:33 +0000 https://monokaki-ts.com/?p=6206

公式サイト

キャスト・スタッフ

安里勇哉
加藤良輔
三好大貴

宮原理子
難波なう
髙橋果鈴
荻野紗那

久保田秀敏

原作
東野圭吾
『虚像の道化師~演技る~』

脚本・演出
堤泰之

音楽
楠瀬拓哉 伊真吾

プロデューサー
難波利幸

企画・製作
エヌオーフォー

公式Twitter

画像出典:ガリレオ★CV様

あらすじ

音楽が流れ、着物姿の3人の女性と1人の男性が舞台上に現れる。

「♪悲しきトロピカルフィッシュ」

ナイトクラブの踊り子たちはそう歌いながら舞い踊る。

ところが次の瞬間、

「ダメだダメだ!」

突然、劇団「青狐(ブルーフォックス)」の主宰・駒井良介(演:安里勇哉)が止めに入る。

これは舞台「タイタニック号に乗れなかった人々」の稽古中。

踊っていた4名は劇団員でそれぞれ、

神原敦子(演:宮原理子)

工藤聡美(演:髙橋果鈴)

安部由美子(演:荻野紗那)

木波寅太郎(演:三好大貴)

という人物。

「聡美、お前はどういうつもりでその役を演技て(えんじて)いるんだ?」

「全然気持ちが入ってない!」

「やっぱりお前は敦子には敵わない」

などと、駒井は冷たく言い放つ。

敦子は聡美の体調が優れないことを駒井に伝えるが、聡美は無理を押してでもこの役をやりきると意気込む。

しばらくしてその駒井が何者かに殺害された。

警視庁捜査一課の草薙俊平(演:加藤良輔)内海薫(演:難波なう)は捜査に乗り出す。

容疑者は上記の劇団員4名。

草薙が凶器が小道具のナイフであることや木波はモブキャラであることを推理するなか、薫はコンビニにスイーツ(なめらかカスタードのプチエクレア、宇治抹茶テリーヌショコラ、ほうじ茶仕立てのみたらし団子パフェ)を買いに行くとウソをついて、帝都大学准教授の湯川学(演:久保田秀敏)に捜査協力を依頼する。

いつもは取り合おうともせず渋られるのだが、今回の彼はなぜか乗り気なご様子。

電話で草薙に「コンビニスイーツ(=湯川)、きょうはわりと甘めです」と報告する薫。

(この最高のセリフを聞いたとき大笑いしてしまった)

湯川はかつて駒井から物理学者を主人公にした物語を書くためにと取材を受けていた。

幼少の学芸会で猿蟹合戦のうす役を務めた過去がある湯川。

しかし、うすは猿を圧死させるポジション。

現代に置き換えればやってることはまるで凶悪犯だ。

実に効率が良く革命的だと称するインスタントコーヒーを口にしながら湯川は過去に駒井へそういった話をしたことを薫に話す。

依然として駒井殺害時のアリバイは完璧。

敦子は由美子と一緒にいるし、聡美も死亡推定時刻に外で花火を撮影していた。

木波は……モブキャラだから外される。

(のちに由美子とデキていたことが判明)

では駒井はいったい誰に殺されたのか?

テレビドラマでの本作は

月9枠第2シリーズ第8話として放送。

原作と異なる点はヒロインの刑事が内海薫ではなく岸谷美砂だったり、駒井の苗字が駒田に変更されていたり、劇団名が「青狐」でなく「コン・カロローサメンテ」だったり、実行犯がそのまんま敦子だったり。

尺の都合や大人の事情に感づいてしまうあたり自分も大人になったんだな。

ギリギリを味わいたかった
ネタバレ注意

草薙と薫は駒井のスマホの連絡先に違和感を覚えた。

由美子の苗字はアベ、その前に登録されていたアオノとアキヤマという人物の名前が削除されていたのだ。

つまり由美子が先頭になるように編集されていたことになる。

湯川はひとつの可能性として、ある仮説を立てる。

それは敦子が偽装工作したというもの。

駒井を殺害したのち彼のスマホを奪い、由美子とともに食事に行く。

そして彼女の目の前で彼のスマホを操作して、由美子に着信を残す。

自分も駒井に折り返して繋がらないフリ。

こうして由美子を証人に自らのアリバイを作る。

「あなたの言葉の欠片が私の胸を刺した時」

そう歌いながら敦子が駒井を刺したイメージが浮かぶ。

かつて敦子は駒井の恋人だった。
しかし、彼は聡美へ乗り換えた。

それが犯行の動機に思われたが……

同じ歌の別の箇所をもうひとりの女性が歌い出す。

「私の想いの結晶があなたの胸を刺せるなら」

実行犯は聡美だった。

彼女は駒井の子をお腹に宿していた。

だから冒頭のシーンで踊っていた時、体調が優れなかったのだ。

が、彼から「君と別れて、敦子のところへ戻りたい」と口にされたことで激情し、思わず裁縫用のハサミで刺してしまった。

やがて駒井はその場に倒れて事切れた。

敦子は聡美の犯行にならないように偽装工作を働いた。

彼女が実行犯でないと判断されたのは、事件直後に草薙たちへ証言をした際「刺してあった」と無意識に口走ったため。

(ゆえに、すでに他の誰かによって刺されたことを知っていると湯川に見抜かれた)

彼女はハサミを抜き、死んでいる駒井に小道具のナイフで再び刺したのだった。

その敦子は取調室にいた。

なぜ彼女がそんなことをしたのか?

それは役者として殺人者の気持ちになってみたかったから

決して聡美を庇うことではなかった。
さらに駒井とよりを戻すつもりもなかった。

「本物の刑事に追われるギリギリの緊張感を味わってみたかった。でも私は殺人犯していない。相手が生きている間に刺せなかったことが悔やまれて、本物には遠く及ばない」

(このときの敦子の顔が怖すぎる)

事件は解決したかに見えたが、残った謎がひとつ。

聡美が犯行当時に現場で撮った写真の謎だ。

花火が上がっていたのは西の窓で、月が出ていたのは東の窓。

そのふたつが同じフレームに映ることは方角的にどうしても難しい。

そこで花火業者に協力してもらい、湯川は草薙と薫とともに現場で実証実験を行う。

花火が上がった瞬間、東の窓を撮影する湯川。

部屋が暗かったため、東の窓に浮かぶ月を撮ったときに西に上がっていた花火が写り込んだというのがその原因であると証明する。

実験は終了したかに思われたが、次々に打ち上がる花火!

これ以上、花火を上げられてしまうと経費がかさむと大慌ての草薙と薫。

それを横目に湯川は微笑むのだった。

拝啓、難波薫 殿

毎度おなじみこのコーナー。
役者・難波なう氏を通じて、私が演劇界や人生について思うことを淡々と語る内容である。

楽しみにしていた皆さま、心行くまでどうぞ(^^)

今回の難波さんはあの内海薫だ!

舞台上が月9になった気分。

数か月ぶりに姿を観てホッとする。
そう、その佇まい。

今回は音楽劇ということで「ガリレオのテーマ」を草薙と歌う場面があり、その歌声を聴くのは初めてだった。

さらに刑事役も初めて(だと思う)だし、普段はクセの強い役が多い(もちろん誉め言葉)ので、水先案内人として落ち着いた役をするのはとても新鮮。

(昔、「The Last Rose Of Summer」という作品で演じたOL以来?)

うん。でも、やはりもうちょいはっちゃけた姿がどこか恋しいような(笑)

ところで本作が公演されたのは新宿シアターサンモール。

驚かずにはいられなかった。

奇しくもこの作品が上演されたのもシアターサンモールなのだ。

難波さんは男に誘拐されたのちに性暴力を受けて監禁される桜子というキーパーソンを体当たりで演じられた。

実は私が作家活動に本腰を入れるため、都内へ拠点を移すきっかけになったのがこの作品を観たことだった。

「人生のターニングポイントだ」と一生言い続ける自信がある。

人間の世界はキレイではない。
ドス黒いからこそ成立している。

その壮絶な作品の世界観が心を動かした。

難波さんを含め多くの女優が裸身を晒すという覚悟を前に、これまでの人生観がガラッと変わってしまったのだ。

何かをするには覚悟を決めなければならないときが絶対にある。

このままモヤモヤしながら、夢を遂げられずに死ぬのだけはイヤだ。

口先や気持ちだけでは何も変えられない。

それはわかっていた。
でもずっと足がすくんでいた。
自粛という世間の風潮もあった。

しかし自分の夢が叶えやすく、一緒に仕事をしてくれる役者さんたちが多くいる環境に一日も早く身を置かないと!

ゆえにこっちも覚悟を決めた。

だからこそ舞台には感謝してもし足りない。

が、その舞台が今は客席上限50%。
エンタメの灯が消えかかっている。

皮肉にも本公演で駒井が湯川に言ったセリフとリンクする。

「演劇ほど無駄なものはない」

無駄に時間をかけて作家が物語を書き、役者たちがセリフを言い、大道具がセットを作る。

社会においてこれほど無駄なものがあるだろうか?

(うろ覚えだが確かこういった内容だった)

その言葉を裏付けるかのように、現在映画館の多くは臨時休業している。

私はエンタメに対する冷ややかな待遇にショックを隠せなかった。

舞台だってギリギリだ。
事実、先々月に観たかった公演が中止になったこともある。

そんななかでもこうして上演してくださっていることは奇跡以外に何と呼ぼうか。

この状況下で主宰が運営をするにあたってスケジュールを調整し、劇場や稽古場を確保し、感染症対策を施し、演者やスタッフにギャラを用意し、1公演でどれだけの収益を出さなければならないか考えている姿を思うと胸が痛むのだ。

たくさんの人たちの生き方を変える演劇が果たして無駄なことだろうか?

私はどうしてもそうは思えない。

むしろ東京へ来たことで作家としていろんなことに挑戦でき、舞台関係者を救うべく今現在いろんな企画や計画をどんどん進めている。

不思議と「必ず形にできる!」という根拠のない確信が持てるのだ。

環境の力は実に恐ろしい。
やはり己の行動が最も大事なのだ。

そもそも、もともとテレビドラマ好きだった自分を舞台好きに変えたのは難波さんだったりする。

制作側として初めてお会いした朗読劇で彼女が魅せる芝居のおもしろさを知り、出演される舞台に通ううちに自分がやるべき仕事の契機を見出し、気づけば共演された役者さんたちの舞台やまったく関係のない劇団の舞台へどんどん足を運ぶようになったのだから。

また以前のように役者面会が出来るようになったら、彼女に心から感謝の意を伝えたい。

エピローグ

観劇を終え、シアターサンモール近くのすき家で遅い昼食を摂った。

なぜならこの後にもうひとつ観る舞台があったからだ。

舞台が放つエネルギーを受け止められるだけのスタミナを蓄えておかないといけない。

目の前の大盛り定食をガツガツかっ食らっていると、聴き慣れた歌が。

おいおい、ここまで制作側は予測して上演したのか?

てことは「再演る(アンコール)」

そして「余韻る(ひたる)」か!

もしそうなら……実におもしろい。

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チャリT企画 舞台「うちのばあちゃん、アクセルとブレーキ踏み間違えた」鑑賞 https://monokaki-ts.com/%e3%83%81%e3%83%a3%e3%83%aat%e4%bc%81%e7%94%bb-%e8%88%9e%e5%8f%b0%e3%80%8c%e3%81%86%e3%81%a1%e3%81%ae%e3%81%b0%e3%81%82%e3%81%a1%e3%82%83%e3%82%93%e3%80%81%e3%82%a2%e3%82%af%e3%82%bb%e3%83%ab%e3%81%a8/ Thu, 27 May 2021 02:09:20 +0000 https://monokaki-ts.com/?p=6076

公式サイト

キャスト・スタッフ

阿比留丈智
みずき

(以上、チャリT企画)

石本径代
髙安健人
埴生雅人
梶野 稔
山崎未来
山中淳恵(椿組)
溝畑藍(虚構の劇団)
すやまあきら
大里結衣

作・演出:楢原拓(chari-T)

公式twitter

画像出典:みずき様

あらすじ

「アクセルとブレーキ踏み間違えた!」

電話口でそう言い残し、おばあちゃんが音信不通になった。

舞台となる双葉家は要町にある昔ながらの家屋だ。

父・正志(演:梶野稔)母・素子(演:石本径代)はそのおばあちゃんからの電話にソワソワしている。

そこへ長女の葵(演:溝畑藍)恋人の一ノ瀬(演:埴生雅人)という青年を連れてきた。

何やら大事な話があるという。

しかし、おばあちゃんが「アクセルとブレーキを踏み間違えた」という一件でなかなかそれどころじゃない。

そこへ長男の淳(演:すやまあきら)がすき家のバイトから帰って来る。

彼は夢を見たという。

それはおばあちゃんの乗った車が崖からダイブするというもの。

実は以前にも東日本大震災や東京オリンピック延期を夢で予知していたが、さすがに今度の内容はあまりに突飛すぎている。

正志たちはおばあちゃんの行方を探すが、免許証は家に置きっぱなしで、ケータイもつながらない。

とその時、外線が鳴った。

おばあちゃんからの電話かと思いきや…

かけてきたのは叔母の緑(演:山中淳恵)

彼女のもとにもおばあちゃんから着信があったが出られず、折り返しても繋がらないため不安になって正志のところに電話したのだという。

やがて正志の家へ駆けつけた緑。

淳はSNSにおばあちゃんが起こした事故の情報がないか書き込みをし、拡散させることに。

このとき、「アクセルとブレーキを踏み間違えた」というフレーズを入れてしまった。

(身バレしないように裏アカウントでツイートするあたり、ちゃっかりしている)

するとそれを見たネット民が騒ぎ出した。

突如、昼寝をしている男のもとに一本の電話がかかってくる。

「あなた、双葉淳さん?」

どこの誰かもわからない男性の声。

「そうだ」と答えると、「祖母が事故を起こしてるんだから、孫のお前が責任取れ!死ね!」と暴言を吐かれる始末。

突然のことに首を傾げる淳。

しかし彼の祖母は随分前に亡くなっているため心当たりがない。

何と彼の名も双葉淳(演:阿比留丈智)

だが電話を受けた彼はアツシという読みであり、さきほどSNSにツイートしたのはジュン

そう、ふたりは名前の漢字がまったく同じだったのだ。

アツシは佐藤大樹(演:みずき)とコンビを組んでYouTuberをしている。

(なぜかアツシはひよこの格好で、キャラを演じているときは語尾にピヨが付く)

受けたとばっちりの腹いせに、ふたりは復讐を決意。

罵声や暴言をスクショし、アカウントの主を特定していく動画をアップしようと画策する。

(悪い奴らを親子丼にしてやるピヨ!)

大樹の先輩で、デジタル探偵をしている田中(演:髙安健人)の力を借りて、つぶやき五郎というアカウントの身元を突き止める。

彼はどこにでもいる中学教師だった。

田中は弁護士と騙り、彼を問いただす。

ところがつぶやき五郎は悪びれるどころか、そのウソの情報を流したヤツのほうが悪いと言って開き直る始末。

結局は堂々巡りに終わってしまう。

こんなやり取りがきょうもいろんなところで行われているのだろう。

スッキリしないアツシはもうひとつの仕事、UberEatsの注文を受ける。

マックフライポテト5個の配送依頼。
注文したのは何とジュン!

さっそく3人は双葉家に突入しようとするが、緑の提案で留守を決め込まれて仕方なく一度撤退することに。

すると葵のもとに電話が。

三田(演:山崎未来)という女性からだ。

彼女はかつて葵がセブンイレブンでバイトしていたときの同僚で、現在は一時の母。

その息子の翔が行方不明になったので探しているという。

SNSの情報は過熱し、おばあちゃんがレンタル彼氏を乗せて園児を轢いてしまった内容に姿を変えていた。

(ネット民が「出来事にはある程度の捻りが無いとおもしろくないから」と、どんどんねじ曲がった内容になっていく)

もしかしたらその轢かれた園児は我が子なのではないかと疑心暗鬼になっている。

やがて三田はSNSの情報を頼りにアツシの家へ辿り着き、事件の真相を彼に問い詰める。

そこへレンタル彼氏の彼女・小林七海(演:大里結衣)がやってきて、彼氏の居場所がどこかアツシに聞いてくる。

さらにレンタル彼氏の彼氏・鈴木優馬(演:哲)も彼氏の居場所を聞くためにやってきてしまい、アツシの家はてんやわんや。

果たして双葉家のおばあちゃんは本当にレンタル彼氏を助手席に乗せ、さらには園児を轢いてしまったのか?

早とちり&過ぎた正義感

本作は茶番コメディと銘打っているが、実のところブラックコメディだと思っている。

アクセルとブレーキを踏み間違えた祖母の行方を探ろうと孫息子がSNSに詳細情報を求めた結果、とんでもない出来事を引き起こしてしまったという顛末。

これは明日、いや今誰の身に降りかかってもおかしくない。

この世で最も怖いのは事件を知った者たちが真実をロクに調べもせず、情報を鵜呑みにしてすべてを知った気になって正義を振りかざしているところ。

あなたは「誰々さんがあなたのことをこう言っていた」と言われた経験はないだろうか?

(で、そのほとんどはロクでもない内容)

それをそのまま言葉通り受け取ってしまうととんでもない目に遭うということだ。

果たしてその内容は事実なのか?
ひょっとして又聞きではないのか?

立ち止まって考えなければならない。

これは職場での陰口も同じだ。

思っていることがあるならば直接本人に言えばいいのに、ほとんどの人はそれをしない。

衝突がイヤなのか、度胸がないのか。

昔、「マジカル頭脳パワー」というクイズ番組でアート伝言バトルなるものがあった。

内容はお題の絵を音楽が流れている数秒の間に描き、いかに次の人へ正確に伝えられるかを競うもの。

最後の人物がお題の絵の内容を正確に答えられると正解になる。

お題を出す者と最初にそれを受け取った者は正解を知っているが、2人目3人目になると描く絵がどんどんおかしな方向へ進んでいく。

これは絵心の有無や前の人が描いた絵が何かをわかっていないため、勝手に自分の解釈で歪めていってしまうのだ。

最後の解答者が正解(と思っている)の絵を描くも、お題とは大きくかけ離れた場合が多い。

つまり人の噂はどんどん尾ひれがついてしまうということ。

現に本作では、おばあちゃんがアクセルとブレーキを踏み間違えた→その車の助手席に若い男もいた→幼い子が行方不明になったのはその車に轢かれたから→その現場には帽子と靴が転がっていた

さて、どこまでが事実か?

それほど伝聞は怖いものだと心得なければならない。

そして我々人間はいかに流されやすく、人を傷つけることができる怖い生き物であるかを日々自覚しなければならない。

考えてほしい。

自分とまったく関わりのない人の素性や起こした出来事の真相や全容を、間接的な報道や情報だけでなぜすべてわかることができようか?

関心を持って自分の意見を持つのは大切だが、事の真相を知ることはおそらく永遠に出来ないと思うのだ。

結局は出来事を起こした当人たちにしか詳細や真意はわからないのだから。

(当人が正直者であればの話だが)

ならば何でも真正面から受け止めてしまう前に、なぜその話題が今この世の中に広まったのか?という部分を自分なりに推測したほうがいい。

あいにくこの世には白か黒か、0か100かだけでは推し量れないものばかり。

たまたま現場に居合わせたか目撃したならまだしも、常に疑うという姿勢を我々は持たないととんでもない過ちを犯してしまうことを忘れてはならない。

人の噂も七十五日とはよく言うが、今日のネット社会に果たしてそれが通用するのか?

その答えは誰にもわからない。

これから待ち受けている日々
ネタバレ注意

事態の収拾がつかなくなったアツシたちは双葉家へ向かった。

居間にメンバー勢ぞろい(笑)

事態を重く見た一ノ瀬は、正座で痺れた足を生まれたての小鹿のようにガクガク震わせながら今回の件を謝罪する。

と、悠馬のスマホが鳴る。

どうやらレンタル彼氏はずっと家にいたようだ

(しかもレンタル彼氏が付き合っていたのは七海でなく悠馬のほう)

そして三田にも電話がかかってくる。

息子の翔は、麻里矢という園児仲間とかくれんぼしている最中に押し入れの中で眠ってしまったそうだ。

やがて双葉家に病院から電話が。

おばあちゃんはなんとアクセルとブレーキを踏み間違えて、車ごと崖から転落していたのだ。

つまりジュンは正夢を見ていた!

しかもおばあちゃんは奇跡的に無傷であり、ピンピンしているという。

では、あれだけ過熱していた情報はいったい何だったのか?

アツシたちはふたりの双葉淳が会う動画をアップしたかったが、固辞されてしまいあえなく撤退。

(デブ専の緑はアツシに惚れたみたいだが)

事態が落ち着き、平和が訪れた双葉家。

正志と素子は葵が言っていた大事な話が何かを彼女に問う。

それは一ノ瀬との結婚だ。

「当人同士で決めることで、親が介入することではないから」と正志と素子は笑顔で承諾。

晴れてふたりは夫婦となり、幸せな生活を迎えていくかに見えたそのとき―

全員のスマホが一斉に鳴った。

非通知からの着信。

「お前が事故の責任を取れ!」
「死ね!」

数多幾千の罵声が響き渡る。

とうとう身バレした双葉家。
ジュンはほとぼりが冷めるまでバイト先に来るなと店長に言われる始末。

さらにアツシも再びジュンだと間違われ、三田も息子を自作自演で虐待していたとあらぬ疑いをかけられてしまうひどい有り様。

果たしてこれからどうなるのか?

彼ら彼女らが待ち受ける地獄の日々はたった今、始まったばかりだ。

画像出典:チャリT企画様

皮肉なネタの数々

ひとつのツイートと漢字の同姓同名が波紋を広げて巻き起こる惨劇。

私も同姓同名の漢字でサッカー選手、料理人、美容師がいる。

いずれの人物とも名前の読みは違うが、こんなことが現実に起こりそうで怖い。

さて、本公演は開演前から皮肉すぎる選曲の数々がなされている。

確認できただけでも、

「渡る世間は鬼ばかり」
「コンピューターおばあちゃん」
「いじわるばあさんのテーマ」

ご年配の女性を想起させるオンパレードではないか!

絶対意識してるよね(汗)

もしかすると双葉という苗字は、若葉マークから来ているのか?

(いや、ひょっとしてひょっとするともう一方のマークとか)

何より舞台が池袋のお隣・要町だったり、園児に車が突っ込んだというくだりがあったり、そこまでストレートに風刺をぶっこんでくるとは思いもしなかった。

主宰はなぜそこまで攻めるのか?

答えはTwitterの概要欄にあった。

「マジメな時事・社会問題を軽妙に笑い飛ばすふざけた社会派」

……納得。

一方で感動したのは、音響関係の演出。

着信音にテレビのザッピング音(これが実に芸が細かくて素敵)、なにより舞台上にあるスピーカーの位置が緻密に計算されているのでスゴかった。

(ジュンの着信音は「ファンタジア」だろうか?さらに映画「サスペリア」っぽい劇伴も流れたような気が)

客席上限50%のなかで

意外にも私が観に行った日はご年配の観客が多かった。

(これはあくまで主観によるものであり、他の日の観客の年齢層がどうだったかまではわからない)

ほとんどの映画館が休業になるなか、現場の舞台だっていつそうなってしまうか。

そのギリギリの際どいラインの上でたくさんの人たちが生きている。

私はそういう人たちを一人でも多く救いたい。

人々に「生きるとは何か?社会とは何か?」を示す演劇がなくなってしまっては困る。

なので今回客席50%という上限のなか、問題提起の舞台作品を拝見できたことがとてもうれしかった。

これからもこういった作品に触れながら、日々いろんな難題や不条理に向き合っていかなければならないんだと改めて気づかされた。

こーんな不穏な世の中の空気、ぜんぶまとめて親子丼にしてやるピヨ!

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24/7lavo 第1回公演「超ではない能力」鑑賞 https://monokaki-ts.com/24-7lavo-%e7%ac%ac%ef%bc%91%e5%9b%9e%e5%85%ac%e6%bc%94%e3%80%8c%e8%b6%85%e3%81%a7%e3%81%af%e3%81%aa%e3%81%84%e8%83%bd%e5%8a%9b%e3%80%8d%e9%91%91%e8%b3%9e/ Mon, 24 May 2021 00:16:49 +0000 https://monokaki-ts.com/?p=6072

公式サイト

キャスト・スタッフ

田中園子(24/7lavo)
寺園七海(24/7lavo)
平井泰成(24/7lavo・吉祥寺GORILLA)

安藤悠馬(冗談だからね。)
甲斐優風汰(さるしばい)
環幸乃
長島未雨

脚本:ブラジリィー・アン・山田(ブラジル)
演出:池田智哉(24/7lavo/feblabo)

公式twitter

あらすじ

画像出典元:24/7lavo様

ここはとある一室。

6人の男女が神妙な面持ちで語り合っている。

第1回「超能力で悩んでいる人、集まれ!」と称したオフ会だ。

仕切るのは東山崇(演:平井泰成)
脚本家志望の青年である。

まず最初に超能力を披露したのはニートの高見善人(演:甲斐優風汰)

彼は不思議なポーズを取ると、空っぽのペットボトルを触れることなく動かしてみせる。

(実際は部屋の奥から黒子(演出の池田智哉さん?)が現れて動かしているのだが)

驚く一同。

同じくらいの重さのものなら触れることなく動かせ、千円札でも同じようにやってのける。

しかし、それ以上の重たいものを動かすことはできない。

続いて介護職の福田絵梨(演:田中園子)

彼女は相手の頭に浮かんだ食べ物だけ当てられる。

しかし、それ以外を当てることはできない。

3人目は山瀬萌(演:環幸乃)

自称・ゴミドル(=ゴミ拾いするアイドル)の彼女は1.8秒後の未来が見えるため、じゃんけんでは負けたことがない。

しかし、それ以上先のことを見ることはできない。

4人目は派遣社員の本間瑞香(演:寺園七海)

彼女はマスクの下だけを透視することができる。

5人を並んで立たせてマスクの下でどんな表情をしているかを言い当てる。

しかし、それ以外の下に隠れているものを見透かすことはできない。

5人目は井戸口幸一(演:安藤悠馬)

臆病でソワソワしている彼はAmazonの倉庫でバイトをしている。

試しに隣の席に座っている萌に向かって自らの鼻のあたりを触った。

何も起こらない。

だが彼は何と彼女を0.3センチだけ瞬間移動させたというのだ。

本当にそうなのか疑わしいが、実際に物体は動いているという。

最後は司会者・東山。

「ん、んーーーーーーー!」

彼は険しい顔で力を込めて手で十字を切って念じると、一同は何かを感じ取った。

言葉だ。
しかし、たった1文字だけ。

そう、彼は1文字しかテレパシーで伝えることができないのだ。

つまり2文字以上となると本人は相当な労力を使うことになる。

果たして1行の文章を伝えるのにいったいどれほどのエネルギーが必要になるやら。

かくして社会のはぐれ者6人は「自分たちの役に立たない超能力を何とか生かす術はないか?」と考えたのちYouTubeチャンネルを開設、動画配信を始めて地道にチャンネル登録者数や再生回数を増やしていくのだった。

思わぬカセ、あらわる!

本公演の席は前後2列。
それが舞台を取り囲むように正面と左右の計3面となっている。

もちろん、私は正面の前列で鑑賞した。
しかし思わぬ伏兵が現れた!

フェイスシールドだ。


意外にも人生初体験。
こいつがなかなか厄介な相手とは知りもしなかった。

マスクしているから眼前が雲ってしまい、時折前が見えなくなる。

役者の顔が見えないほどつらいものはない。

指先で拭いながら何とか対応したが、やはり見づらくて大変だった。

ドラマにはカセ(障害物)が必要だが、まさか観劇するにもカセが必要になる時代が来るなんて。

この視界をクリアにするための超能力を持っていない自分を恨んだ。

思えば、後ろの席が埋まっていたのはそういうことだったのか!

とてもいい勉強になった(涙)

どう見えているか、それが真実
ネタバレ注意

超ではない能力を生かそうとYouTubeチャンネルを開設した6人。

(※だが、なぜか瑞香だけは懐疑的な立場)

東山は1文字から数文字へ、井戸口は0.3センチから0.4センチへと能力をレベルアップさせていた。

萌は予知能力を使い、街中でじゃんけんをして50連勝を果たす。

動画配信をきっかけに彼女が出来た高見は調子に乗り、ライブ生配信で3人(萌、井戸口、絵梨)のサングラスをずり下ろしてみせることに。

(※公演ポスターの画がそれである)

いつものように大袈裟なポーズを取り、超ではない能力を大成功させたかに見えた。

ところが視聴者が萌のサングラスに仕込まれた糸を見つけてしまったことで事態は一変、炎上騒ぎになってしまう。

実際に絵梨と井戸口のサングラスはズラせたが、萌のまでは能力が及ばなかったのだ。

東山は高見を叱責する。

「ひとつでもウソをついてしまったら、これまでアップした動画もすべてウソだと勘違いされてしまう」と。

メンバーのなかで唯一懐疑的だった瑞香がさらに一言。

「たとえ私たちの能力が本物かどうかなんてことより、相手にどう見えているか。それが真実なの」

窮地に追い込まれた6人の間に軋轢が生じてしまい、やがてチームは解散することに。

それぞれが別の方向へ歩みだそうとしたとき異変に気づく。

屋上に立っている人の姿を見つけたのだ。

彼女の名は久保遥(演:長島未雨)

萌には見覚えがあった。
彼女が街で見つけた50人目のじゃんけん相手となった女子高生である。

必死に説得して何とか引き留めようとする6人。

しかし、遥は耳を傾けようとしない。

まずは高見がペットボトルを念力で倒そうと試みる。

しかし、水が入っていたため能力を発揮できない。

東山は遥にテレパシーを送る。

「い」「き」「て」「い」

(生きていればきっと何かいいことがある、的な内容を伝えたかったらしい)

が、それで精一杯のため途中で力尽きてしまう。

絵梨は遥が何を食べたがっているかを予知。

トッポ!

しかし誰もトッポを持っていない。
(という以前にそれで説得は無理だ)

萌が「トッポが入っているよ」とカバンを見せてハッタリを利かせるが通用しない。

やがて遥は飛び降りようとする。
が、彼女はなぜか前に進まない。
むしろ、もとの位置に戻りかけている。

井戸口が0.4センチの瞬間移動能力を何度も小刻みに繰り返すことで遥をもとの位置に戻そうとしていたのだ。

(その反動で鼻血を出してしまう!)

東山たち男性陣がその隙に何とか向かおうとするも、間に合いそうにない。

もうダメかと思われたその時、

「ホクロ!」

遥の足がピタッと止まった。

彼女の悩みの真相に気づいたのは、瑞香だった。

瑞香はカバンの中にある手紙を透視したのだ。

初めてマスクの下以外のものを見ることができた奇跡の瞬間!

そこには「ホクロがキモい」という理由で自死の道を選ぶことにした遥の言葉が書かれていた。

実は瑞香自身も同じ経験をしていた。

自らの超能力が災いして周囲から白い目で見られてしまい、自分を追い込んでしまった過去。

だから6人のなかで唯一超能力を生かすことに対して懐疑的な立場を取っていたのだ。

瑞香の必死の説得に遥はようやく踏みとどまる。

これまで自分のために使っていた能力を誰かのために活かした6人はそれぞれの道を進むことになる。

ニートだった高見は職場の面接へ。
絵梨はもとの生活に。
萌は井戸口と恋人同士に。

残ったのは東山と瑞香だけ。

もじもじしている東山は去りゆく瑞香にテレパシーで1文字ずつ思いを伝える。

「す」「き」、と。

しかし彼女はハッキリ言葉で伝えてほしいと言う。

それでももじもじしている東山に業を煮やした瑞香は去ろうとする。

「好きだ!!!!!」

やっとの思いで告白した東山の想いを瑞香は瞬時に断る。

「私には見たいものがなかった。あなたには伝えたいことがなかった。私たちの能力はそれらを反映していたのかもね」

(「瑞香=見ずか」というのは深読みか?)

東山は脚本家志望とは名乗っているが、実際は物語を1つも書き終えたことがなかったのだ。

書き始めてたった数文字で手が止まってしまう現状は、テレパシーで1文字しか伝えられないのとまるで同じ。

そんな彼を後目に瑞香は新たな道をひとり進み出した。

東山は彼女の後ろ姿をただ見送るしかできなかった。

場面が変わり、東山は自室のパソコンで脚本を書いている。

東山「去りゆく瑞香を見送る東山」

これまでに自分が経験した出来事を物語にしたのだ。

いやもしかしたら彼は超能力者ではなく、その頭の中でイメージしたストーリーの映像を我々が観ていたのかもしれない。

そして……初めてつけるエンドマーク。
ようやく伝えたいことが見つかったのだ。

やがて彼は手で十字を切って観客たちへテレパシーで何かを伝えるのだった。

もし違う世界線だったなら

脚本はブラジリィー・アン・山田さん

「相棒(神戸尊時代)」や「世にも奇妙な物語」を担当されており、時折テレビでお名前を拝見していた方がまさか旗揚げ公演の脚本を担当されるとはビックリ!

実はひとつ気になったことがある。

本編の上演時間が60分なのだ。

コロナショックが起こる前の舞台は120分休憩なしがほとんどだったので、もしかしたらこの緊急事態宣言下で短縮せざるを得なかったのではないかと推測した。

ということはもしコロナが無い世界線で舞台が行われていたら、メンバーたちの交流(とくに東山が瑞香に恋する過程)がもっと掘り下げられたり、命を救われた遥がラストで本物の超能力に目覚めてしまい6人を驚かせたりそういったストーリー展開が用意されていたのかもというのはさすがに考え過ぎだろうか?

伝えたいことがある幸せ

「私には見たいものがなかった。あなたには伝えたいことがなかった」

瑞香のセリフがこの心を貫いた。

どうして自分は物書きを今も続けているのか?と考えてみたら、伝えたいことがあるからなんだと気づいた。

もし現状の生活に満足していれば何かしようという気は起きにくい。

世の中のあらゆるものが便利になったのも、もともと生じていた不自由を解消するためだ。

この世に不満や疑問があるからこそ、作家は問題提起し続けるのだろう。

制作陣は超能力者?

おわりに。
公演を観ていて驚いたことがある。

実は平井さん、今度ご出演いただくボイスドラマⅣで脚本家の役なのだ

だから東山の「脚本家をしてまして」というセリフを聞いた時に驚いてしまった。

(正確に言うと本作では脚本家志望であってまだ仕事はしておらず、ボイスドラマのほうではがっつり仕事しているという違いがある)

もちろん、舞台の詳細については演者の名前以外全く前情報を入れなかった

誰が出るかは事前にチェックするも、先入観を排するため出演者や制作陣のTwitterに載る稽古写真や裏話は公演を見終えるまで目にしないよう己に課しているからだ

もしや制作陣は超能力者だったのか?

と、突拍子もないことを言ってみる。

さてブログを書き終えたことだし、私も手で十字を切ってみるとするか。

「ん、んーーーーーーー!」

果たして、念じたこの心の声はあなたに伝わっただろうか?

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こわっぱちゃん家 舞台「Picnicへのご案内」鑑賞 https://monokaki-ts.com/%e3%81%93%e3%82%8f%e3%81%a3%e3%81%b1%e3%81%a1%e3%82%83%e3%82%93%e5%ae%b6-%e8%88%9e%e5%8f%b0%e3%80%8cpicnic%e3%81%b8%e3%81%ae%e3%81%94%e6%a1%88%e5%86%85%e3%80%8d%e9%91%91%e8%b3%9e/ Sat, 01 May 2021 13:06:52 +0000 https://monokaki-ts.com/?p=5973

公式サイト

優斗……滝啓祐
和田……晴森みき
晴……トクダタクマ
(以上、こわっぱちゃん家)

ユキ……山田梨佳
ま-み……中野亜美
賢之助……松ノ下タケル

マリ……鳴海真奈美

脚本・演出 トクダタクマ

画像出典:こわっぱちゃん家様

あらすじ

舞台はシェアハウス「Picnic」。

そこへ落ち着いた大人の女性・ユキがやってくる。

リビングへと向かう階段を降りようとする際、なぜか足の具合を気にしているが実際踏み入れてみると痛みはまったく気にならない。

そんな彼女のほかに優斗、まーみ、賢之助というメンバーがいる。

優斗はインテリな青年。
まーみは元気で明るい娘。
賢之助はお調子者のお兄さん。

そんな男女4人の充実した共同生活が華々しく幕を開けた。

しばらく時が流れたある日のこと。



和田という女性が見学のためにシェアハウスへやってくる。

隣には大家のマリ

和田はすぐにメンバーたちと打ち解ける。

一方のマリはまーみのもとに向かい、

「Picnicへの案内が来た」と告げる。

その言葉の意味を瞬時に察したユキ、まだそれが何かわかっていない賢之助。

まーみは悲しい顔を浮かべることなく(いや、隠していたのだろう)、いつもの明るい様子で迫り来る最後のシェアハウス生活を楽しむ。

そして翌日、その場を後にするのだった。

Picnicへ…行ってきます
ネタバレ注意※

まーみが去ってからもシェアハウスでリア充な生活をしている男女たち。

ところが途中からステージ2階のサイド部分より見下ろしてその様子を伺うひとりの男が現れる。

(このステージの使い方に驚きと感動!)

彼の名は晴(はる)

その真向かいに医療関係者の格好をした女性が。

マリだ。

彼女はシェアハウスの大家ではなく、高齢者たちの医療施設に勤めるスタッフだった。

実は晴が見ているシェアハウスとは高齢者たちの脳内に繋がれて作られた仮想空間で、住人である高齢者たちが自分が最も充実していた頃の姿で生活していたのだ。

仮想空間だからどんなにお酒を飲んでもカラダを壊すことはないし、食料等は勝手に補充されるから事欠かない。

優斗 85歳
まーみ 98歳
ユキ 92歳
賢之助 65歳

これらがそれぞれの実年齢だ。
名前が現代っぽいのは今から数十年後の世界なのかもしれない。

そしてこの実世界の4名は今この瞬間ずっと眠り続けている。

Picnicとはつまり……

先日マリから告知を受けたまーみは天寿を全うしてこの世を去ったのだ。

晴はシェアハウスにいる祖母のユキを気にかけている。

ここへ来たときユキが足のことを気にしていたのは、実年齢の姿のときに負った痛みだったから。

晴は元気なうちに祖母の面会に行ってあげられなかったことを悔やんでいた。

やがてユキの体調が悪化する。
そして、このままではもう長くないという。

最期の瞬間を悟っているユキ。
もうじきPicnicの案内がやってくるのを虚ろな様子で待っている。

そんな折、シェアハウスにひとりの訪問者が。

晴だ。
孫との再会を果たしたユキは本来の祖母の雰囲気を纏っていた。

晴はユキにこれまで来れなかったことを謝り、ようやく祖母と孫は邂逅する。

そして訪れる退去のとき。
彼女に思いを寄せていたルームメイトの優斗も「一緒にここを出て行きたい」と彼女に伝える。

「あの世で旦那に叱られるかもね」と冗談まじりに言うユキ。

そして、彼女はシェアハウスに別れを告げる。

「……行ってきます」と。

高齢化社会への警鐘と皮肉

本作は高齢化社会をテーマに、自分の人生に未練を残した者たちの人間ドラマだと思う。

今や孤独死も老々介護も珍しくない。

定年が延長になったし、高齢者教習の問題だって多く不安を孕んだままだろう。

人生100年時代なんて言われているけど、死ぬその瞬間まで健康でいられる保証などない。

年老いて心身ともに衰弱したヒトは果たしてどこへ向かうのか?

その時、自身は自分の意識をはっきり持てるのか?

私も亡き祖父を介護する両親の姿を間近で見ていかに大変かを知っていたから、この話が隠し持つ影の側面に胸をギュッと締め付けられた。

名前にヒントが隠されていた?
(あくまで個人的な解釈)

会場に置かれていた本公演のパンフレットにあらすじ・役名・キャスト・スタッフが書かれている。

本作で気になったのはユキという役名。

晴が登場する中盤あたりからメインのポジションを担っていくキャラなのだが、実は物語にちなんだネーミングだったのではないか?と勝手に思っている。

まず孫の名がだから、真逆のにした可能性。

もし人間の一生を四季に例えるのならば、

晴=若さあふれる夏のイメージ
雪=終わりに近い冬のイメージ

ユキが誰にも看取られることなく孤独死を迎えようとしていた矢先、最後の最期で晴がやってきて再会して(=雪に晴れた陽が当たって)雪解けを果たすという伏線になっているのでは?と考えた。

さらにPicnic(=逝く)だから逝きとのダブルミーニングでもあるのでは?とも。

もっと言えば、再会を経て幸せな終わりを迎えたという幸(ゆき)とも捉えられる。

(さすがに深読みしすぎだろうが)

終盤あたりマリが晴に「おばあ様は徐々に体力が弱まっていて危険な状態です」と説明する場面があるのだが、それを反映したかのようにユキの目元は終始どこか虚ろだ。

本編が始まったときからどこか悲哀なものを背負っているような何かを感じたのは、まさかこのラストまでの伏線だったのか?

すべては作者と演者の心の中にだけ答えがある以上、こちらにそれらの真意を測る術はない。

後悔のない人生を

いつもブログでは印象に残った役者さんを数人挙げるのだが、今回は物語の世界観のほうがとても印象的だった

Picnicは誰もがいつか迎える日。

明日もし自分にその案内が来たら、この人生に誇りを持って二度と後戻りの出来ない遠足へ旅立つことができるのだろうか?

ましてやこんな厄介な時代だからこそ抗って、くたばることなく思いっきり生きたい。

そして作家としての夢をたくさん実現させ、悔いのないように笑って逝きたい。

最もグッと来たのは終盤、賢之助が優斗に生い立ちを語るシーン。

彼はロン毛でお調子者なお兄ちゃんに見えるが、実生活では引っ込み思案で後悔ばかりの人生を送っていた。

(※ここで賢之助という名前に合点がいく)

だがこの仮想空間にやってきてようやく自分を変えることができた。

そして年齢が30歳上の明るいまーみに恋をした。

(残念ながら退去という形で別れが来てしまったが)

でもそれってよくよく考えてみると、とてもつらいことじゃないだろうか?

やはり現実の世界で自分の人生を楽しく悔いのないように生きなきゃやりきれないはずだ。

しかし、ほとんどの人たちが素直な自分を押し殺して後悔の日々を送ってしまう。

どうやら我々は何かにつけて後回しにしようという脳の仕組みになっているらしい。

「後でいいや」と思って気づいたらもう手遅れだった、なんて怖いじゃないか!

日々自分の生き方を省みるとともに危機意識を持つことの大切さ。

今この瞬間だからこそできることがあり、今だからやらなきゃいけないことが山ほどある。

後悔は決して先には立ってはくれない。

だからこそ自分の力で己のあり方や生き方をより良いものに変えていかなければならない。

そう教えていただいた作品だった。

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Pityman 舞台「そんなこと話してる場合じゃない」鑑賞 https://monokaki-ts.com/pityman-%e8%88%9e%e5%8f%b0%e3%80%8c%e3%81%9d%e3%82%93%e3%81%aa%e3%81%93%e3%81%a8%e8%a9%b1%e3%81%97%e3%81%a6%e3%82%8b%e5%a0%b4%e5%90%88%e3%81%98%e3%82%83%e3%81%aa%e3%81%84%e3%80%8d%e9%91%91%e8%b3%9e/ Fri, 30 Apr 2021 02:03:54 +0000 https://monokaki-ts.com/?p=5967
公式サイト

「受付」
受付  江原パジャマ
制作チーフ 堀山俊紀
客     中山将志
関係者客  小林涼太

ここはとある舞台会場の出入り口。
検温コーナーで入場客の対応をしている受付。

時節柄差し入れは一切断っているが、客は検温が無事だとわかると受付の男に無理矢理渡して「自分は特別だから」と会場内へ。

その様子を知った制作チーフは頭を悩ませる。
そんななか、他の関係者客が姿を現す。

仕事なので、と受付がその男に検温をするのだが温度は測るたびぐんぐん上がっていくばかりで―

「そんなこと話してる場合じゃない」
丸山    丸山港都
小林    小林涼太
中山    中山将志
齋藤       齋藤亘
武田鉄矢の息子 池内風

ある有名人の家のリビングにて。
そして引っ越し業者の4人の男がいる。

最後に残ったひとつの大きなソファ、これを外へ出せばすべてが終わる。

しかし丸山はとある事情で現場に遅刻し、「殺してえ」が口癖の中山は下痢気味だ。

メンバー間が不和の中、4人力合わせてそのソファを何とか外へ出そうとするが……ドアが狭くて出せない。

運んでは戻し、運んでは戻しの繰り返し。
そうこうしているうちにただただ時間だけが無駄に過ぎていく。

それを見かねて謎の男が現れる。
何と彼は武田鉄矢の息子だと名乗って……

「あたたかいへこみ」
江原   江原パジャマ
堀山    堀山俊紀
太田    太田旭紀
生霊    齋藤亘

江原はエリという女性のことが好きだ。

その彼女が帰った後のリビング。
知り合いの堀山と太田がやってくる。

堀山はソファに座って煙草を吸おうとするが江原はそれを拒否。

彼女がさっきまで座っていたソファのへこみ。

彼はその部分が冷めるまでは誰にも座らせたくないというのだ。

堀山はピュアな恋心を抱く江原に「エリに彼氏がいるかもしれないんだぞ?」とからかう。

太田はウブで繊細な江原を刺激しないよう堀山に忠告するも、そこへエリのイケメン彼氏(と江原が勝手に妄想した)の生霊が現れる。

「ごめん。俺、めっちゃイケメンだろ?」と口パクでつぶやくその生霊は江原にしか見えず……

「キャンプファイヤー」
小林    小林涼太
内藤    内藤ゆき

ある一組の男女。
ソファに男は座り、女は階段に座っている。

ひとりでキャンプに出掛けるという男に女は問いただす。
言葉の語尾に独特な癖を含めて。

かつては好き合ったふたり。
だがいつからかお互いに距離が出来ていた。
そして今はもう他人同士。

もしかして語尾に癖があるのは彼女なりに引き留めようとしているのかもしれない。

しかし、関係は戻りそうにない。

思い出のソファを薪にしようと、ふたりが解体を試みると隙間にポップコーンの破片を見つけて……

作・演出 山下由

画像出典元:Pityman様

はじめに

本公演はオフィス上の空プロデュース「1つの部屋のいくつかの生活#3」内の6作品のひとつ。

(#3なのか…前の2作品も観たかったなぁ)

6劇団が赤・青・黄のそれぞれ3つにわかれて、公演を行う変則的な舞台。

1つの公演で2団体も観られるという、舞台好きにはうれしい試み。

こういうトリッキーな企画や思考能力にめっちゃ憧れる。

(フライヤーの部屋の間取り図とか見るだけで、その緻密で計算されたディテールにゾクゾクする)

舞台が生ものである以上、いつも新鮮な衝撃を受け続けていたい。

そして凝り固まったこの頭の中の価値観を思いっきりぶっ壊されたい!

そのため先入観を持たぬよう、あらゆる前情報は何も入れず観に行く私。

ゆえにTwitterで写真やキャストやスタッフによる裏話などを知るのは公演を観終えた後に尽きる。

私は青チームの「Pityman」と「こわっぱちゃん家」を鑑賞。

つまり、このブログは前半ということになる。

企画制作は株式会社オフィス上の空。
プロデューサーは中島庸介さん。

ん?

そこってたしか、キ上の空論の……

あ!!!

構成について

開演前、シュガー・ベイブによる名曲が館内に流れている。

大貫妙子が歌う「いつも通り」や山下達郎が歌う「DOWNTOWN」と実に心地よい選曲。

と思っていたら「受付」が始まって、空気が一変。

もはやコントのような怒涛の流れに心をグッとつかまれて、そこから勢いが止まらない(笑)

なお「受付」は各エピソードの間も展開される。

「受付」→「そんなこと話してる場合じゃない」→「受付➁」→「あたたかいへこみ」→「受付➂」→「キャンプファイヤー」→「受付➃」

3本目の「キャンプファイヤー」がしっとりしているのを除いて、他のエピソードは確実に笑わせに来ている。

今回はキャラクターの動きについてじっと観察していた。

たとえば「あたたかなへこみ」の江原さんのキャラ。
オドオドして落ち着かない動作がウブで女性経験の無さを見事に醸し出している。

太田さんは堀山さんと江原さんの掛け合いを見て、自分の立ち位置を必死に探そうとして動く。

さらにテンポのメリハリ、セリフの研究もできたので嬉しかった。

そして終演のBGMは欧陽菲菲の「ラヴ・イズ・オーヴァー」。

それを流すのは、もしかして「キャンプファイヤー」の女の心情から?

印象的すぎた役者さんたち(笑)

池内風さん

こりゃ、反則級の存在感だろう(笑)
武田鉄矢の息子役として美味しいところをすべて持っていった。

てか、ぜーったい演じてるとき顔も声も武田鉄矢っぽくしてたよね(笑)?

それがもうずっとツボに入ってしょうがない。

例のソファのことを「彼女」と呼び、自分が幼い頃にそのソファはとても小さく、やがて大人になるにつれてその「彼女」もどんどん成長して今の大きさになったので愛着が湧いてずっと気にかけていた。

ゆえにクレジットは「そんなこと話してる場合じゃない」のみに記載だが、「受付」以外のすべてにちゃっかり登場するから笑いが止まらないのなんの。

時系列は「そんなこと話してる場合じゃない」→「あたたかなへこみ」→「キャンプファイヤー」のため、その後の様子が気になって昔住んでいた家に尋ねては「彼女」の様子が気になって見に来るのだ(笑)

ということは、この3つのエピソードのバックボーンは武田鉄矢の息子とソファの物語だったのでは?と思えてしまう。

そう考えるとまた笑いが止まらなくなるのだが。

休憩中にパンフレットを見て、その名に驚いた。

あの、かわいいコンビニ店員飯田さんの主宰であり、衝撃作「マインドファクトリー」の生みの親だったなんて!

あの作者がこういうコミカルなポジションを演じるというのも観る側としては贅沢すぎる気分。

小林涼太さん

この方の存在感も反則級だ(笑)
もうそこにいるだけで場を明るくしてくれる。

「受付」の序盤で体温が数千度になってしまったので、手のひらでおでこに冷風を送ってもさらに温度は上昇し、最後は「ガリガリ君」でおでこを冷やすという。

何とか落ち着いたと思いきや、その時にもう公演は終わっていて最後まで観られずじまい。

本公演の扉絵、よく見るとソファに座っている男性のモチーフになっているし(笑)

おわりに

こんなにも終始ずっとお腹を抱えて笑うのは久しぶりだった。

(もちろん、マスクを両手で抑えながら)

この先行き不安な時代のなか、グンと免疫力を高めてくださって心より御礼申し上げます。

さて、前半戦はこれにて終了。

→to be continued
こわっぱちゃん家「Picnicへのご案内」→

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舞台WELL ~井戸の底から見た景色~ 鑑賞 https://monokaki-ts.com/%e8%88%9e%e5%8f%b0well-%ef%bd%9e%e4%ba%95%e6%88%b8%e3%81%ae%e5%ba%95%e3%81%8b%e3%82%89%e8%a6%8b%e3%81%9f%e6%99%af%e8%89%b2%ef%bd%9e-%e9%91%91%e8%b3%9e/ Wed, 28 Apr 2021 02:31:20 +0000 https://monokaki-ts.com/?p=5866

森永清(藤原祐規)
じゅりえ(上西恵)

team コール
まくべー(松岡里英)
りあお(小池樹里亜)
はむれ(西村美咲)
おしぇろ(涼本奈緒)

team レス
まくべー(佐藤さくら)
りあお(日下部美愛)
はむれ(江﨑葵)
おしぇろ(鈴原ゆりあ)

竹原裕太(小早川俊輔)
加藤隼人(古畑恵介)
シーザー(松本こうせい)
森永春世(ふじわらみほ)
小林悠子(松本稽古)

・・・

面接官1…… 松本こうせい
面接官2…… 石田太一
先生…… 板橋廉平
じゅりえの母…… 野田愛佳
じゅりえの母の男…… 石田太一
神待ち男1…… 板橋廉平
神待ち男2…… 岡野優介
神待ち男3…… 松本こうせい
神待ち男4…… 石田太一

男1(ファン)…… 石田太一
男2(ファン)…… 岡野優介
撮影会のカメコ…… 板橋廉平
撮影会のスタッフ…… 三本みり
撮影会の男・重田…… 岡野優介
ツイッターの男1…… 石田太一
ツイッターの男2…… 岡野優介
ツイッターの男3…… 小早川俊輔
ツイッターの男4…… 古畑恵介
派遣会社の受付嬢…… 野田愛佳
派遣会社の部長…… 石田太一
役所の係…… 三本みり
巡査1…… 岡野優介
巡査2…… 石田太一
警察1…… 板橋廉平
ライブハウスのスタッフ…… 三本みり
同級生女1…… 野田愛佳
同級生男1…… 石田太一
同級生女2…… 三本みり
同級生男2…… 岡野優介

作・演出 岡本貴也

公式サイト

出典元:舞台WELL様

あらすじ

夜間ビル警備員の森永清は自己評価の高い男。
柔道部出身でパソコンに強いと自負している。

だが会社の面接ではことごとく落とされしまい、正社員になれない。

ゆえに派遣会社に登録してこの仕事を仕方なくしている。

自分が幸せになれないのは周りのせいだと言い張り、決して自分を変えようとしないのがきっとその原因だろう。

まるで井戸の底辺で藻掻くような日々だ。
それを形容するかのように、警備員が警笛に装着するモール(紐)をふざけて両手首に結んでは嘆く。

職場では年下の先輩で正社員の加藤から馬鹿にされたり、暴力を振るわれたりと散々。

おまけに実家の母・春世は車椅子生活で、世話はヘルパーの悠子がしている。

もはや彼の給料だけで彼女を雇うことに限界が来ていた。

そんな折、失意の彼は街中で5人組の地下アイドルがチラシを配っている場面に遭遇する。

そのうちのひとりの女性とすれ違った時、何かを感じた。

彼女の名はじゅりえ

本名は根本流海といい、地元の九州から逃げるために上京してきた。

母の愛人に犯され続け、心身ともにボロボロ。
目的地の新宿へ向かっていたはずが、誤って新橋行きのバスに乗ってしまい、おまけに降りた後に車内で財布を落としたことに気づく始末。

このままでは死んでしまう。
もはや絶体絶命の彼女。

そのとき、背後を何者かが通り過ぎる。

一度は通り過ぎてみたものの、苦しそうな彼女の姿を見かねて折り紙に包んだお金をバレないようにそっと渡す。

やがてそれに気づいたじゅりえは心から感謝して人生の再起を誓う。

そして有名になってその口笛の人物を探し出すと決める。

ところが、その口笛の男こそ清だったのだ!

お互いの正体を知らぬまま再会したふたり。

清はじゅりえがあの時の彼女だとは知らず、その魅力にどんどんのめり込んでいってしまう。

そして―

“好き”の気持ちを慮る

本作のテーマは「好きな気持ちは程々に」

ことわざで「好きこそものの上手なれ」とはよく言うが、それにもタイミングと程度と配慮と礼儀が必要で、その対象がモノならまだしも、ヒトへ向けられたときほど怖いものはないと思い知る。

まさに、親しき中にも礼儀あり

例えば本作でのアイドルとファンの関係性。

向こうは仕事のつもりでも、ファンのほうはまるで自分の人生のすべてのように思えてしまう。

(だからこそ偶像という表現がされるのだろうが)

男女間で起こるこういった問題、そのほとんどは相手の存在を神格化してしまうことにあると私は考えている。

本来であれば対等で同じ人間のはずなのに、まるで別次元の神だと誤解してしまう現象。

(現に「アイドルはトイレをしない」といったフレーズも昔あったくらいだし)

いつの時代もこの問題は消えてなくならない。
ネットが普及して、相手との距離が近くなった今は余計にその傾向が強いかもしれない。

それはきっと異性経験の少なさから来るものもあるだろうし、自信のなさゆえ輝いている相手に憧れて上に見てしまうことから来るものもあるだろう。

つまり純愛や一途というキレイに見えるものほど、本当はドス黒く汚らわしいというわけだ。

(無論、お互いの心が通じ合っている場合を除く)

だからこそヒトやモノへの好きな気持ちはひとつだけに執着せず、いくつか候補を選んでおいて分散させるほうが得策というのもこれまた皮肉な話。

(好きな気持ちは悟られると相手が優位となって手玉に取られたり、警戒されたりしてスムーズに行かない。そのため二兎や三兎を追うほうがこちらの心に余裕が生まれ、向こうのほうから寄って来るというのもあながち嘘ではない)

椅子とハシゴの凄技アート

本作のすごいところは、舞台上に置かれた椅子とハシゴ。

青、ピンク、紫、黄、緑。

上演前はハシゴに椅子がかけられていたのが、本編が始まると電車になったり、バスになったり、ビルのエレベーターのドアになったり、ライブ会場の小道具になったり、はたまたじゅりえの眼になったり。

演出のアイデアが凄すぎる!

そしてそれらをタイミング良く持ってステージを動き回る出演者の皆さまの体力もスゴイ(笑)

垣間見えるドロドロした現実

華やかに見えるものほど実はとても汚い。

たとえば大型ショッピングモール。
お客様に見えている表の部分は広くて明るいだが、ひとたび従業員通用口に入れば狭くて暗い。

アイドルの世界もきっと同じだ。
それを総括する芸能界という場所も含めて。

これはマクベスの「きれいは汚い、汚いはきれい」に通ずるものがあって、作者はそれを見越して書いたのではないかと思えてしまうほど。

ところで、シェイクスピアのロミオとジュリエットをモチーフにした本作。

チーム名がシェイクスフィア
さらにメンバー名も実に凝っている。

まくべー(マクベス) 本名・幕野内アミ
りあお(リア王)    本名・青木リナ
はむれ(ハムレット) 本名・橋本礼美
おしぇろ(オセロ)  本名・太田栞

こういう普段は表に出ないような、内輪だけが知っていそうな細かすぎる設定が私は大好きだ。

印象的だったのはまくべーが水着姿で裏事情を語るシーン。

彼女は某大手アイドルグループにいたが、不祥事に巻き込まれて地下アイドルの道へ。

個撮いわゆる個人撮影会で稼げるお金の相場についてポーズを決めながら語り、カメラマンたちのフラッシュを浴びている。

それを見て、いろんな舞台女優さんもアイドルの方々も生きるためにこういったことを今この瞬間も体験しているんじゃないか?と想像するだけでゾッとしてしまう。

実際、そのメインどころを演じているのが本物のアイドルやグラビアの人というのも説得力に拍車をかけているし。

群がる男たちの中に、水着の女性が数人。
いつ何が起きたっておかしくない。
(いや、現に起きてるのかも)

さらにチーム内にも温度差がある。

アイドル活動など遊び感覚のりあお
休みの日はファンに貢がせたお金で服を買って人生を謳歌している。

じゅりえに人気度で負けそうになると嫉妬からマウントを取ろうとするまくべー。

会場で写真を撮るのに都度数千円を払うファン。
せーの、「アン・ハサウェイ!」
カシャ。

それを横目にニヤリとほくそ笑む運営マネージャーの竹原

搾取する側される側の構造が垣間見えるあたり、もうひとつのテーマは「貧富の格差」だろう。

竹原はマンションの26階に住んでいて、派遣会社の部長は高層ビルの階上にオフィスがある。

先のふたりは上の世界にいる。
一方で清や地下アイドルたちは下にいる。

この資本主義国でものを言うのは金だ。

稼いだ者が強く、稼げない者は弱い。

竹原はガールズバーや地下アイドルを運営しながら、いつもメンバーたちを隙あらば犯したいと思っている。

派遣会社の部長は事なかれ主義で、清と加藤のトラブルの事実を探ろうともしない。

ここまで書くとお金持ちは悪者のように見える。
だが、例外もある。

ファンのひとり、シーザーの存在だ。
(元ネタはシェイクスピアの戯曲「ジュリアス・シーザー」)

その正体は会社のお偉いさんだが竹原のような下心は無く、純粋にアイドルを応援している。

さらに業界の専門用語を熱く語り、ファン仲間と楽しく酒を酌み交わす。

渋沢栄一の「論語と算盤」より引用するならば、お金とは大切にすべきものであり軽蔑すべきものでもあり、すべては所有者の人格によって変わる諸刃の剣である。

良いお金持ちもいれば悪いお金持ちもいる。
心優しい貧乏もいれば心卑しい貧乏もいる。

つまりそうなるわけだ。

お金があるからこそ我々は日々生活ができる。
だから、お金持ちをいつも悪として描きがちな日本のドラマは正直どうなのかと思えてしまう。

(現に海外映画のスーパーヒーローはほぼみんなお金持ちで、そのお金で装備などを開発してたくさんの人たちの命を救っているんだから)

公演場所の新宿村LIVEを後にする際、周辺の大きな高層ビルを見てそんなことを考えてしまった。

追うロミオ 逃げるジュリエ その末路
ネタバレ注意※

じゅりえにすっかり心奪われた清は彼女を執拗に追い始める。

TwitterのDMにメッセージを送り続けたり、自分の部屋に彼女の写真を貼りまくって彼女の瞳に映った建物から住んでいる場所を割り出したり、挙句の果てに井戸のWELLをWE’LL=WEWILL(私たちは一緒になる)と勝手に解釈して婚姻届に自分のサインをしたりとその暴走は留まるところを知らない。

母に小言を言われ、悠子にバカにされ、加藤から濡れ衣を着せられ、派遣会社からも仕事の契約を切られ、それらの鬱憤が溜まっていたのかもしれない。

全てを失った彼にはもうじゅりえしかなかった。

そのじゅりえはマネージャーの竹原から体目的で襲われかけるも、尾行していた清に救われる。

ところがもはやストーカーと化した彼がした善行は彼女にとって恐怖でしかない。

ゆえにじゅりえは警察に助けを求める。
しかし、証拠がないと動けないと何度も突っぱねられる始末。

そうこうしているうちに、チーム最後のステージが幕を開ける。

メンバーのひとりが竹原の子を身籠ったことや、その他もろもろの不祥事が明るみに出たからだ。

まくべー、はむろ、おしぇろ、りあお。
ひとり、またひとりその場を後にする。

最後に残ったのは、じゅりえ。

そんな彼女を陰から呼ぶ男の声。

清だ。
こっそり建物に忍び込んでいたのだ。

逃げ惑うじゅりえの必死の抵抗もむなしく、彼は彼女を刺してしまう。

虫の息のじゅりえ。
清は彼女の薬指に折り紙で作った指輪をはめる。

その折り紙はお金が包まれていたものと同じ柄!

それを見て、じゅりえは彼があの時の口笛の人物だったと知り愕然。

やがて彼の胸の中で息絶えてしまう。
途轍もない絶望が彼女のこの世で抱く最期の感情になった。

ようやく彼女を自分のものにした清もその場で後を追おうとするが、駆け付けた警察官たちに取り押さられて緊急逮捕。

本家のロミオとジュリエットのように同じ場で死に、あの世で結ばれることはなかった。

そして場面はほの暗い留置所の中。
清の手元、警備員のときにふざけて結んでいた両手首の紐は手錠に変わっていた。

印象に残った役者さん

松本稽古さん
ヘルパーの悠子さん役。
サバサバした感じが実に味わい深い。

春世の命令で清を何度もおしおき棒(ガキ使「笑ってはいけない」のアレ)で叩く姿はもはや重要無形文化財級。

さらに清と繰り広げるコミカルなやり取りのなか、偶然の事故とはいえ彼に胸を触られたりと見どころ満載だった。

フライヤーを見て、まさか振付担当だったとは!

岡野優介さん
ある時はアイドルのファン。
ある時は警官。
ある時はツイッターの男。

そして常連のカメラマン・重田になったときは、まくべーにそそのかされてじゅりえの卑猥な写真を無理矢理撮ろうとしたところで怒った清に背負い投げされる美味しい役。

思わず「え?!」と声が出てしまうほど、清が柔道部出身の設定がここで活かされるとは夢にも思わなかった。

ふじわらみほさん
清の母・春世さん役。
清に対して毎回嫌味を言うため、ある意味彼の心に手錠をかけてしまっている。

終始登場するときに醸し出すどんよりした雰囲気とその存在感といったらスゴイ。

前にどこかで観た方だなと思っていたら、映画「紅葉橋」や舞台「バクステ」にご出演されていたんですね!

正直驚きました(笑)

おわりに

本作はteamレスを鑑賞。

コール&レスポンス、エッジが効いている。

実は延期公演で、本来であれば昨年の6月30日(火)から7月5日(日)の日程で上演されるはずだった。

キャストが一部変更になった状態での公演。
舞台という神聖な場を突如襲った謎の感染症。

こうして無事に公演される運びとなるまでの間、関係者の皆さまはとても長く大変な思いをされたのだろう。

可能ならば今回と本来のバージョン、どちらも観たかったと思うのは贅沢なわがままだろうか?

舞台に生きる人たちに1日も早く幸せな日々が訪れるように、私も正しい行動をしなければと思った夜公演だった。

さて、では最後にみんなで写真を撮ろう。
せーの、「アン・ハサウェイ!」
カシャ。

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