シナリオ「スキマ・ワルバイト」
ラジオ『ぶたかん‼』リーダーズシアター
《登場人物》
多田良人 … 平野岬
英雄仮面 … 鹿島裕介
女帝・ネゾマ … 水沢綾
実況 … 須田剛史
BGM1がスタートして、
ネゾマ「(高笑いで)アハハハハハ!」
英雄「出たな! 女帝・ネゾマ!」
ネゾマ「英雄仮面、貴方の命もここまでよ」
英雄「その言葉、そっくりそのままキサマにお返ししてやる!」
ネゾマ「残念だけど、きょうはとっておきの秘密兵器を用意しているの。覚悟してね」
英雄「なんだと?」
ネゾマ「さあ、出てらっしゃい!」
BGM1がピタッと止まって、
良人「(おどおどしながら)どうも」
英雄「(謙虚に)どうも、って誰だアンタ!」
良人「多田良人(ただよしひと)です。多い田んぼに良き人と書いて多田良人」
ネゾマ「通称、ただいい人」
良人「(棒読みで)シャキーン」
BGM1が再度最初からスタート
英雄「いやいや、何で一般人が出てくるんだよ? てか、どこが秘密兵器なんだ」
ネゾマ「聞いて驚かないで。なんと彼、初のスキマ・アルバイトなのよ!」
良人「ただ雇われ先が悪者なので、正しくはスキマ・ワルバイトですが」
英雄「そういう問題じゃないだろ! おいおい、まさか悪の組織がスキマバイトを使う時代が来るなんて…世も末だな」
ネゾマ「ウチはもともと世を末にするところだから良いの」
英雄「あのなぁ!」
ネゾマ「さあ、良人よ。やっておしまい」
良人「御社に貢献できるでしょうか?」
ネゾマ「もちろん。わたしが教えたとおりにやればいいわ」
良人「わかりました。(咳払いして)生まれてこの方波風立てず、早寝早起き当たり前。無遅刻・無欠勤・無早退! 人助けと猫の世話が日課、誰が呼んだか多田良人、42歳のサラリーマン。ワルになります!」
英雄「なんだ、その口上は」
良人「行くぞぉ! えーーーーい」
実況「おっと、良人の鋭いパンチが英雄仮面に向かって放たれた! 惜しい、外れた!」
英雄「いや、めっちゃへなちょこだし!」
良人「すいません。格闘の経験なくて」
英雄「何でそこで働こうと思ったんだ!」
良人「自分を変えてみたかったんです」
英雄「は?」
良人「見ての通り、地味な姿で毎日を同じように生きて来たつまらない人間です。おまけに良いことしかしてこなかった」
英雄「むしろ誇らしいじゃないか!」
良人「全然! そのイカした茶髪におしゃれな服。あなたはチャラそうに見えて正義のヒーローをされててうらやましい。良いなぁ、素敵なギャップで世の女性たちの心を鷲づかみで。僕にはそれがない」
英雄「ええ、そこ?」
良人「こないだ生活習慣病になって危機感を覚えました。死ぬ前に何かやりたかったことがなかったかと。そこで気づいたんです。そうだ、ワルになろう!って」
英雄「えーー」
良人「でもいきなりは難しい。だったら、まずは短時間からやればいいや、ってね」
英雄「それでスキマバイトを始めたのか」
良人「最初は怖かったけど、みんな素敵な人たちで。基地は広くてキレイだし、福利厚生もマニュアルもしっかりしてる。だったら転職してもいいかなぁって。ここには理想のワルがある! 僕もいつかカッコいい悪者になれるかもしれない」
英雄「もはや手遅れだな。仕方ない、その曲がった根性を叩き直すしか―」
実況「ここで英雄仮面、こぶしを構えた! 出るぞ、ジャスティスナックルが!」
ネゾマ「いいのかしら」
英雄「なに?」
ネゾマ「相手は心優しき普通のオッサンよ。自分より力の弱い者に手を上げられる?」
英雄「キサマ、まさかそれを狙って!」
ネゾマ「アハハハハハ」
実況「英雄仮面、万事休す!」
ネゾマ「さあ今よ、やっておしまい」
良人「えーーーーー――い!」
実況「今度は良人が鋭いキックを放ったぁ。見事、クリーンヒットォ!」
良人「やった!」
英雄「だから、へなちょこなんやて! しかも全然痛くないんじゃ!」
良人「ちなみにこれがフルパワー」
英雄「なあ、本当にいいのか?」
良人「はい?」
英雄「今お前がやったことはたしかにワルだ。ただ、心はスッキリしたか?」
良人「…ぜんぜん」
ネゾマ「良人、時間がないわ。もう一発!」
英雄「これまでどれだけ人に優しくした?」
良人「かれこれ100億人くらい」
英雄「虫を殺したことは?」
良人「まったく」
英雄「どうだ、こっちサイドへ来ないか?」
良人「え?」
英雄「その善なる心、類稀なるもの。ただ光が強い分、闇も深くなる。お前のか弱い心、俺が鍛え直してやる。それに―その見た目、チャラそうに出来なくもないぞ」
良人「(急にキラキラして)本当ですか?」
ネゾマ「良人! しっかりなさい!」
良人「(ハッとして)しまった!」
ネゾマ「フン、きょうはこの辺にしておくわ」
英雄「待て! 逃げる気か!」
ネゾマ「違うわ、彼の就業時間が終わったの」
英雄「なんだそりゃ!」
良人「また3週間後に会いましょう」
英雄「そんな悪役がいるか!」
BGM1がフェードアウト
BGM2がスタートして、
ネゾマ「ご苦労様」
良人「すいません、負けてしまって」
ネゾマ「初めてにしては上出来だったわ。アンタ、良いワルになれるかもね」
良人「まさかあそこで心が揺らいでしまうとは、まだまだ修行が必要だな」
ネゾマ「ワルは悪いことをすることだけがワルじゃない。常に自分の善なる心と戦っているの。それに悪は正義のヒーローがいてこそ。ギリギリ追い詰めてから負ける、ワルにはワルの美学があるのよ」
良人「ネゾマさん…」
ネゾマ「バイト代、口座に振り込んでおくわ」
良人「ありがとうございます」
ネゾマ「また今度。それと最後にひとつだけ」
良人「え?」
ネゾマ「高評価、つけといてね」
良人「はい!」
実況「こうして今日も地球の平和が保たれた。ヒーロー世界のヴィラン業界に突如彗星のごとく現れた謎の男、スキマワルバイター・多田良人の運命やいかに!」
BGM2がピタッと止まって、
良人「(驚いて)え? シーズン2決定?」
SE ドカーンという爆発音
おわり
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