シナリオ「奇跡職人のお手伝い」

《登場人物》
冬木幸彦(38) 奇跡職人 … 高田那由太
篠塚亜沙美(32) お手伝い … 水沢綾
BGM1がスタート
亜沙美「(チラシを配りながら)お願いしまーす。お願いしまーす」
亜沙美M「街はすっかりクリスマス。ロマンティックなムードに包まれながら歩くカップルたちを横目に私、篠塚亜沙美は30を超えているのになぜか女子高生の衣装に身を包んでチラシを配っている」
亜沙美「なんで私がこんなことしなきゃいけな…クシュン! うう、寒っ」
SE スマホのバイブ
亜沙美「はい、もしもし」
冬木「(電話の声で)おーう、あさみん。チラシのほうはどーだい?」
亜沙美「ぜんぶ配り終わりました」
冬木「(電話の声で)OK! それじゃあ次は俺がいるビルの屋上までバケツ2つ分、水を満タンにして持ってきてちょ」
亜沙美「…はい? 今なんて言いました?水を満タンにしたバケツを―」
冬木「(電話の声で)んじゃねー」
亜沙美「ちょっと、冬木さん!」
亜沙美M「彼の名は冬木幸彦。自らを奇跡職人と名乗る謎の男。さっきみたいに人使いが荒くてお調子者。とはいえ、前の職場で散々な目に遭っていた私をたまたま救ってくれたから…感謝はしてる」
BGM1がフェードアウトして、
亜沙美「(重たいバケツを持ちながら)はあ、はあ、ただいま戻りました」
冬木「おかえり、あさみん♪」
亜沙美「(息絶え絶えに)だから、その呼び方、やめてください」
冬木「べつにいいじゃんか。ところでそのカッコ、違和感無いねぇ」
亜沙美「いくら私が童顔でも、これは―」
冬木「はい、チーズ!」
SE 撮影音
亜沙美「ちょっと! 何するんですか!」
冬木「おしゃれは我慢だ。あしからず」
SE ビンタの音
冬木「痛てぇ!」
亜沙美「データ消しときましたから」
冬木「ああ、今宵の楽しみがぁー!」
亜沙美「最低。もう帰ります」
冬木「ごめんごめん! でも、チーズって言ったらポーズ取ってたぞ? いま!」
亜沙美「あれは―つい」
冬木「ところで例の水は?」
亜沙美「この通り、ちゃんと」
冬木「サーンキュ」
亜沙美「いったい何するんですか?」
冬木「ひ・み・つ。あ、誰かにつけられてないか心配だからここで見張ってて」
亜沙美「…わかりました」
冬木「お願いねーん」
亜沙美「あれ、どこへ?」
冬木「なーいしょ。来ちゃダメよーん」
亜沙美M「そう言ってウインクすると、彼は物陰に消えた。上着ポケットからさっき配ったチラシを取り出す。『今夜、駅前で奇跡が起こる!』。あの男、やっぱ変だ」
冬木「お・ま・た・せ」
亜沙美「何してたんですか?」
冬木「今にわかるさ。よし、そろそろだ」
亜沙美M「すると冬木さんは突然、空に向かって大きく両手を広げて叫んだ」
冬木「聖なる夜に奇跡をー!」
亜沙美M「次の瞬間、空から街へたくさんの雪が降り始めたではないか!」
BGM2がスタートして、
亜沙美「え、…う、うそぉ!」
冬木「ハハハ、驚いたかい? これが奇跡職人・冬木幸彦様の実力さ!」
亜沙美M「まさかこんなことが? 驚いた私は彼が本当はすごい人間なのではと動揺した。ところが、よく見ると雪は一部分しか降っていない。私は彼の目を盗み、ゆっくりと物陰の方へ。するとそこに雪を放出している謎の機械を見つけた」
冬木「やべっ、バレちゃった」
亜沙美「いったいこれは…」
冬木「人工降雪機だよ。冷たい水と冷気を混ぜたものを霧状に低温の空気中へ噴射すると雪になるんだ」
亜沙美「だから、バケツの水を!」
冬木「ねえねえ、あさみん。あれ見てみ」
亜沙美M「冬木さんは私に望遠鏡を渡して駅前広場を指差した。イルミネーションと白く舞うきれいな雪。喜ぶ親子連れや抱き合うカップル。みんな幸せそうだ」
冬木「…このために俺は仕事してるんだ」
亜沙美「え?」
冬木「(真面目で冷静に)誰にも気づかれないけれど、誰かの幸せのために行う。人には誰しもその人ならではの仕事が必ずある。そのうち、キミにもきっと」
亜沙美「冬木さん…」
冬木「よぉし、てなわけで次は沖縄でたくさん雪を降らしちゃうぞぉ!」
亜沙美「ホントですか?」
冬木「おう、だからオレについてこい!」
亜沙美「は、はい!」
冬木「んじゃ、お給料。1日お疲れ様!」
亜沙美「わあ、ありがとうございます!」
冬木「と言いたいところだけど、お預け」
亜沙美「いやいや、何でですか?」
冬木「お片付け、残ってるよん」
亜沙美「ええっ? これぜんぶ私が?」
冬木「はい、とっととやる!」
SE 歩いていく足音
亜沙美「どこ行くんですか?」
冬木「俺はゆっくりおねんねターイム」
亜沙美「あ! ずるい!」
冬木「んじゃ、またねー」
亜沙美「冬木さん! んもう! …でも、ま、いっか(と微笑んで)」
BGM2がフェードアウトして、
おわり
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