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〇麻衣の嫁ぎ先

閑静な住宅街の一角。
忠男がメモを持ってやってくる。
麻衣が夫や子どもたちと遊んでいる。
幸せそうな一家を前にただ立っているだけの忠男。

〇パチンコ屋・駐車場

元気のない忠男。
針川が腹を一発叩く。

忠男「痛っ!」
針川「おうおう、元気ねえな」
忠男「こないだよりも力入れたでしょ」
針川「でっけえジム行ってるワリにゃあ柔いな。オメーの腹筋は見せかけか?」
忠男「そこはみぞおちですって!」

と、言い争いの声が聞こえてくる。
店の裏、例の若くてカワイイ女性店員に言い寄っている怪しい男。
明らかに危険な様子である。
周囲は相手にしようとしない。
もちろん針川も行こうとしない。

忠男「…………」

困っている麻衣と女性店員がオーバーラップしていき―

忠男「……行かなきゃ」

忠男は決心したように向かって行く。
針川が気づいて、

針川「おい、やめとけって」

が、忠男は止まらない。

忠男「助けなきゃ。オレ、警備員ですし」
針川「そっちの警備は担当外だろ! オメーの命を警備しろってんだい」

なおも忠男が早足で向かって行って―

〇病院・真田の部屋

片方の頬に大きなガーゼを貼った忠男がやってくる。
真田は驚きを隠せない。

忠男「ども、センセイ」
真田「君、その傷は一体―」

ガーゼを取る忠男、ひどい傷だ。

忠男「見てのとおり。もはや虫の息、なんちゃって」
真田「…………」
忠男「あれ? うまくないですか? ちょっとは虫の使い方勉強したんだけど」
真田「喧嘩なんて君らしくないね」
忠男「いえ、これはその―」

〇回想・パチンコ屋での出来事

忠男が女性店員を言い寄ってる男から守ろうと向かおうとする。
と、いきなりサイレンの音とともにパトカーがやってくる。
突然のことに気を取られた忠男は足下の駐車場の縁石に気づかず躓いてしまい顔から転倒。
忠男を横目に男は警官らに連行される。
ひとり取り残されるダサい忠男で―

〇もとの真田の部屋

忠男「笑ってください」
真田「…………」
忠男「なあんだ、バイト先のオッチャンは大笑いしてくれたのに」
真田「……どうしてそんなことを」
忠男「ヒーローに……なりかったんです」
真田「ヒーロー?」
忠男「ガキのときのオレは今と全然違ったんです。センセイの言葉借りるなら、弱虫で泣き虫でした」
真田「…………」
忠男「幼なじみの女がいて、そいつチョモランマみたいに背がデカくておまけにケンカも強くて。オレはチビだしガリだからって勝手にそいつに助けられてばっか。木瀬忠男って名前のとおり、同級生たちにその女の寄生虫だってバカにされてました」
真田「…………」
忠男「でもそれがイヤで恥ずかしくて、ひとりじゃ何もできない自分が許せなくて」
真田「…………」
忠男「こんなオレにも好きな子がいて。でもオレはルックス悪りいし、とてもじゃないけど敵わないって思ってました」
真田「…………」
忠男「でもあの日は―あの日だけは―オレはヒーローになれる気がした」

<第11話へつづく>

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