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〇マンション・礼香の部屋 (夜)

忠男が洗濯物を畳んでいる。

真田の声「もし今日までの人生で心に引っかかっていることがあるならその本質を調べれば良い。いつまでも心の中で溜め込んでいるよりもずっと素晴らしいことだよ」

帰って来る礼香、暗い顔で忠男のもとへ向かって仁王立ち。

礼香「電話したのに何で出てくれないの? メッセージだって何回も送ったのに」
忠男「ごめん。ケータイ、家に置いたまま外出ちゃった」
礼香「めちゃくちゃ心配したんだよ?! こないだみたいに忠男に何かあったらわたし―わたし―」
忠男「ホントにごめん」
礼香「悩んでることあったら溜め込まないで言って! そういうのわかるの。昔から」
忠男「とくに何もないって」
礼香「うそ」
忠男「ウソじゃないって」
礼香「何年一緒にいると思ってるの? 女の勘を甘く見ないで」
忠男「…………」
礼香「わたしとのこと? お金のこと?」
忠男「どっちでもない」
礼香「じゃあ―」
忠男「女のことでもない」
礼香「今まで男にポイされてきてずっと病んでたの。こんなにわたしに優しくしてくれたの、忠男だけなの。お願いだから―お願いだからわたしには何でも話して」
忠男「礼香―」
礼香「―ごめん。わたし、重いよね」
忠男「そんなことない」
礼香「きょうはご飯いらない。外で食べて来ちゃったから」

忠男が礼香を抱き寄せようとするも、

礼香「ごめん」
忠男「え?」
礼香「今、月イチのレディースデーなの」

下腹部を擦る礼香が寝室へ。
取り残された忠男、うつむいて―

〇走る忠男 (夜)

〇ショッピングモール (夜)

忠男が店内のありとあらゆる場所を走りながら探す。
が、実奈はいない。
閉店時間を知らせるアナウンスが流れ始める。

〇***急便・営業所 (夜)

実奈の運転するトラックが戻って来る。
目の前に忠男が飛び出す。
急ブレーキ。

実奈「何やってんのよ!! アタシを人殺しにさせる気ィ?!」
忠男「聞きたいことがある」
実奈「アンタに話すことなんてない」
忠男「頼む」
実奈「断る」
忠男「前に言ってたこと、気になってて」
実奈「はあ?」
忠男「10年前オレに何を言おうとしたのか」
実奈「耳も貸さなかったプライド高めなバカに言うことはない」
忠男「このとおり!」

忠男が思いっきり頭を下げる。
周囲を気にする実奈が忠男を強い腕力で襟元を掴んで持ち上げる。

忠男「相変わらずの力だな」
実奈「腕相撲大会ベスト4をなめんなよ」

実奈が忠男に話しているが、内容までは聞こえない。
全てを知って茫然としている忠男。

実奈「これがすべて」
忠男「そんなのうそだ」
実奈「アタシがウソ言ったことある?」
忠男「…………」
実奈「アンタがくだらないプライドに振り回されてなければ、アタシの言うこと聞いてればちょっとは変わってたかもね」
忠男「そんな―」

実奈、ポケット紙切れを忠男に渡す。
住所のようなものが書かれている。

忠男「これは?」
実奈「アタシがウソ言ってるかどうか、その目で見てみれば」
忠男「…………」
実奈「あ、それと実家に顔くらいは出しな」

実奈が去っていく。

<第10話へつづく>

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