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〇栗山家近くの道

うつむき歩く栗山尚美(29)、元気がない。
と、急に角から引っ越し業者のトラックが飛び出してくる!!
驚く尚美だが物陰で何とかやり過ごす。

〇栗山家・孝介の部屋

笑顔で並ぶ夫婦の記念写真の数々はどれも幸せそうだ。
栗山孝介(57)がいて、パソコンで女性服のデザインをしている。
尚美がやってきて、

孝介「あれ、尚美」
尚美「―ただいま」
孝介「どうしたんだ?」
尚美「……ちょっと近くで用事があって」

孝介が尚美の顔色を窺って、

孝介「そうか。ま、ゆっくりしていきな」
尚美「……うん」

尚美、室内を見渡す。

尚美「ん?」

室内が小ざっぱりとしている。

尚美「ねえ、何か家具が減ってない?」
孝介「あ、気づいた?」
尚美「当たり前でしょ、娘なんだから。模様替えでもするの?」
孝介「いや、そうじゃない」
尚美「じゃあいったい―」
孝介「さっき出て行ったんだ、母さん」
尚美「ふ~ん……え? 今、何て?」
孝介「父さんな、母さんと別居することにしたんだ」
尚美「(信じられずに) ……はあ?!」

〇大通りを走るトラック

さっき尚美がすれ違った引っ越し業者のトラックだ。
助手席には尚美の母・沙知絵(57)がいて―

〇題名「仲良し両親が別居した日」

〇アパート・駿の部屋(朝)

T『数日前』
柿崎駿(31)、朝の支度をしている。
尚美がキッチンで弁当を作り終える。
一見、夫婦のように見えるふたり。

尚美「はい (と弁当を渡す)」
駿「そこまでしなくて大丈夫だって。全部自分で出来るから」
尚美「いいのいいの、やりたくてやってることだもん。それにこう見えてちゃんと将来の準備だってしてるし」
駿「…………」
尚美「……やっぱ迷惑かな? こういうの」
駿「いや、そういうわけじゃないけど」
尚美「なんだかここのところ押しかけちゃってるよね」
駿「…………」
尚美「ホントはさ、そろそろ一緒になりたいなぁとか思ってるんだ」
駿「(遮って) それはまた別の日に話そう」
尚美「え?」
駿「そろそろ行かないと。時間だから」
尚美「でも、私たちももう付き合って結構経つよ? そろそろこれからのこと―」

なかなかハッキリしない駿、取り繕うように部屋を出て行く。
尚美は不服そうな顔。

〇栗山家・リビング(朝)

同時刻。
キッチンで手際よく料理しているエプロン姿の孝介。
テーブルの脚を修理しているパンツスーツ姿の沙知絵。

孝介「出来たよ」
沙知絵「こっちも」

沙知絵、脚の強度を確認する。
孝介がテーブルに食事を並べていく。

孝介「ごめん、出勤前に」
沙知絵「いいのよ。お安い御用」

孝介がテーブルの脚を触って、

孝介「すごい! 頑丈だね。けっこう古いのに、これ」
沙知絵「新婚の時に買ったものだったわね」
孝介「もうそんなに経つか」
沙知絵「30年。それだけ年季が入ってるのよ」
孝介「まるで僕たちみたいだな」
沙知絵「(照れ臭そうに) 何言ってるの」

隣同士に座って朝食を囲む孝介と沙知絵、嬉しそう。
棚の上に飾られた結婚式の写真。
当時の孝介と沙知絵。
別の写真には子どもが加わっている。
そしてもうひとり加わって、四人家族の写真に。
そんな娘たちも成長し、現在の写真へ。

孝介「あっという間だなぁと思ってさ」
沙知絵「そうね」

〇駿の務めるオフィス

昼休憩。駿が弁当を開ける。
きれいな飾りつけである。

尚美の声「ホントはさ、そろそろ一緒になりたいなぁとか思ってるんだ」
駿「(弁当を眺めて) ……」

<第2話へつづく>

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