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〇アパート・駿の部屋(朝)

駿が料理をしている。
傍らに空の弁当箱。
弁当箱に料理を詰めて行く駿だが、飾りつけがあまり上手くない。

尚美の声「いいのいいの、やりたくてやってることだもん」
駿「…………」

〇尚美のオフィス・休憩室

自販機でブラックコーヒーを買う尚美、
一口飲んでため息ひとつ。
尚美の視線の先、出会った頃の尚美と駿のイメージが現れる。

駿「ブラックですか?」
尚美「……ええ」
駿「すごいな」
尚美「はい?」
駿「(照れながら) 自分はお茶です」
尚美「……そうですか」
駿「あ、すいません、ビックリさせちゃって。何だか珍しかったんで」
尚美「女がブラックを飲んじゃいけないんですか?」
駿「いえ、全然。自分、めっちゃ甘党なんです。紅茶に砂糖とミルクかなり入れるんで、うらやましいなと思って」
尚美「……渋い顔なのに」
駿「え?」
尚美「だからお茶が似合うのかな」

笑い合うふたり。
尚美が物思いに耽っている。

圭子の声「なにたそがれてんの」

目の前に圭子が立っている。
消える尚美と駿のイメージ。

尚美「あ、お疲れ様です」
圭子「良いことあった?」
尚美「まさか。それより、こないだはすいませんでした」
圭子「いくらなんでもいきなりウチでお泊まりすることはないでしょ」

〇前のシーン・路上(夜)

電話している尚美。

尚美「もしもし……すいません、今からそちらへ伺ってもいいですか?」

尚美の電話相手は圭子だったのだ。

〇もとの休憩室

尚美「何だか先輩と飲みたかったんです」
圭子「ほとんどグチだったじゃない。付き合うこっちの身にもなって。彼にはちゃんと言ったんでしょうね?」
尚美「もちろん。朝帰りだって」
圭子「まったく、誤解させるようなこと言っちゃって」
尚美「いいんです。たまにはそういうことも言っとかないと。メリハリってやつです」
圭子「あんた小悪魔系じゃないんだから、もっとそれらしい言い方があるでしょうが」
尚美「そこまで言わなくても」
圭子「だってホントのことじゃない」
尚美「…………」
圭子「だいたいもう答えは出てるじゃない」
尚美「え?」
圭子「女が誰かに悩みをグチるときは、自分でもう答えを出してる。そうでしょ?」
尚美「…………」
圭子「だったらもうこの辺で―」
尚美「(遮るように) ちょうど落ち込んでたときだったんです」
圭子「え?」
尚美「前の彼氏が転勤で遠距離になって。私も彼のもとへ行こうと思ってました。そしたら向こうが別に相手を作ってしまって……裏切られたんです」
圭子「…………」
尚美「そんなときここで今の彼に声をかけられて。いや、だからってすぐには一緒になりませんでした」
圭子「…………」
尚美「でも……彼はとても優しかった」
圭子「…………」
尚美「とにかくもう大切なものを失うのはイヤなんです」
圭子「尚ちゃん……」

インターホンの音が先行して、

〇栗山家・玄関

孝介がドアを開けると、目の前に駿が立っている。

孝介「シュン君」
駿「先日はどうも」
孝介「(時計を見て) まだ仕事中だろう?」
駿「今日は外回りが早く終わったんで」
孝介「そうか、あまり好ましくないな。でも、たまにはそういう息抜きもいいと思う」
駿「恐れ入ります」
孝介「ここで待っててくれるかい? すぐ片づけるから」
駿「いえ、じゃあここで」
孝介「良いお茶買ったんだよ」

<第6話へつづく>

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