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〇同・リビング

孝介が慣れた手つきでお茶を淹れる。
駿、室内を見渡している。

孝介「大変だろう?」
駿「はい?」
孝介「尚美だよ。いろいろと迷惑をかけてるんじゃないかと思って」
駿「そんなことは……ないです」
孝介「なら良いんだけど」
駿「お二人の事は尚美さんから聞いてます」
孝介「(手を止めて) え?」
駿「それはもう仲の良い素敵な夫婦だと。自分も二人のような夫婦になりたいと」
孝介「……そうか」
駿「奥さん、お元気ですか?」
孝介「え? あ、ああ。もちろんだよ」
駿「そうですか……おふたりがうらやましいです」
孝介「え?」
駿「僕の両親は幼い頃から仲が良くありませんでしたから」
孝介「…………」
駿「僕がいたことで何とか関係が保っていたようなものです」
孝介「…………」
駿「そんな両親も僕が大学進学とともに別居して、就職するとともに離婚しました」
孝介「…………」
駿「なので、ずっと夫婦や愛って何なんだろうって思って生きてきました」

孝介がお茶を持ってくる。
駿、軽く一礼する。

孝介「ま、どうぞ」
駿「頂きます (と、お茶を一口)」
孝介「どう?」
駿「なかなかですね」
孝介「だろう? ちょっと奮発して高いのを買ってみたんだ」
駿「…………」
孝介「あ、ごめん。話の途中だったね」
駿「いえ、もういいんです。そろそろ会社に戻ろうと思っていたので」
孝介「尚美と何かあったんだろう?」
駿「え?」
孝介「そんなことだろうと思ったよ」
駿「……尚美さんのことが好きです。これからもずっと大切にしたいです。でも、自分にその資格があるのか、ちゃんと愛せるのかどうかわからなくて―」
孝介「…………」
駿「すいません。こんなこと言うなんて、どうかしてますよね」
孝介「男は過去に生き、女は未来を生きる」
駿「え?」
孝介「だから男と女は一筋縄じゃいかないってどこかで聞いたことがある」
駿「…………」
孝介「君のご両親の間に何があったのか詮索するつもりはない。でも、少なくとも君が過去を背負う必要はないよ」
駿「え?」
孝介「君には君の愛し方があるんじゃないのかな。そこにご両親は関係ないと思うんだ」
駿「…………」
孝介「そもそもここへ来るよりも先にすることがあるはずだろう?」
駿「…………」

駿が深く一礼して後にする。
孝介、仕事場にある写真を手に取る。
孝介と沙知絵の仲良い2ショット。

孝介「素敵な夫婦……か」

〇電車の中

尚美、スマホのフォトを眺めている。
スクロールするごとに映し出されていく駿との思い出の数々。
と、そこへ着信が。
『駿』。

尚美「…………」

出ようか躊躇う尚美だが、結局カバンの中にしまってしまう。

〇大通り沿い

車の往来が激しい場所。
電話中の駿、尚美の応答を待つ。
留守電を告げるアナウンス。
駿がメッセージを吹き込もうとするところで―

〇坂庭家(彩音の嫁ぎ先)・玄関

玄関ドアを開ける女性、妹の彩音だ。
目の前には尚美がいる。

彩音「尚姉?!」
尚美「来ちゃった」
彩音「来ちゃったじゃないよ! 会社は?」
尚美「半休。ほら、なるべく使えって世間で言われてるでしょ」
彩音「だからっていきなり来ることないじゃん。ふつう前もって連絡するでしょ?」
尚美「とにかく来ちゃったの。中に入れて」
彩音「んもう」

<第7話へつづく>

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