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《登場人物》
星丘明未 … 渚乃
根賀静彦 … 卯ノ原圭吾

SE カフェ
SE ゆっくりなタイピング音

静彦「(ため息ひとつ)ダメだ。浮かばない」

明未「(突然に)学校帰り、カフェでキミが飲んだメロンソーダ。ストローの先に恋焦がれ、僕の心は燃えあがる」

静彦「おわっ! なんだよ急に」

明未「ユースフル・サイダー、文化祭が終わる頃、僕の心はキミで満載だ」

静彦「おい、勝手に読み上げるなって」

明未「ダサイダーダサイダー凡才だー」

静彦「だから周りに聞こえるだろう? てか、何だよダサいとか凡才とか。人が苦労して考えた歌詞を―」

明未「その韻の踏み方、もしや―失礼!」

静彦「あ、ちょっと! 勝手に見るなよ」

BGM1がスタート

明未「やっぱり、キャピキャピ系アイドル・LOVEきゅんの曲だ! 作詞…根賀静彦。え、お兄さんが書いてたの? めっちゃクールな王子様みたいなのに」

静彦「人を見た目で判断しないでくれ」

明未「地下アイドルから全国区、そして今やCD売上ナンバー1! まさかオッサンたちはこの王子様の歌詞に心を鷲掴みされていたなんて、あービックリ」

静彦「あのなぁ」

明未「え、じゃあ『肝試しプラネタリウム』や『もうメイド服は着られない』も?」

静彦「そうだよ」

明未「すごーい!」

静彦「まさかキミ、ファンなのか」

明未「ううん、ぜんぜん」

静彦「おーい」

明未「わたし、アイドルみたいな顔はしてるんだけどなあ」

静彦「それ、自分で言うか」

明未「LOVEきゅんは歌詞が大好きなの」

静彦「…え?」

明未「文学的な表現と生々しい情景、心地よい語呂のリズム感。そして何より好奇心くすぐるダサすぎなタイトルセンス」

静彦「いやいや、何で最後ディスった?」

明未「楽しみだ、ユースフル・ダサイダー」

静彦「サイダーだ!」

BGM1がピタッと止まる。
SE カフェが再開

明未「嗚呼、こんなところで王子様に逢えるなんて。わらわは何て運が良いのじゃ」

静彦「わ、わらわ?」

明未「そなたへ褒美を遣わす。はい、これ」

静彦「何だ、このノート」

明未「さあ、めくって。わたしのす・べ・て」

静彦「遠慮しておく」

明未「そんなこと言わないで、チラ見でもガン見でもお・ね・が・い」

静彦「わかったよ…って、何だこれ!」

明未「愛を込めた言葉たちよ」

BGM2がスタート

静彦「ぶっチクショウ、骨の髄までジェノサイド。今すぐキサマをわら人形で呪ってやるぜ。DEATHDEATHDEATHDEATH、地獄行きデス」

明未「どう?」

静彦「口と性格の悪さが余すところなく紙の上で大渋滞を引き起こしている。さすがにこれ以上は…声に出して読めない」

明未「社会悪の捌け口。ありがたき幸せ」

静彦「なぜに喜ぶ? …あれ? そういえばこの歌詞、どこかで―そう、クライシス・ガドリングの『DEATH輪廻』だ。最近バズってるヘヴィメタルバンド!」

明未「お、さすがは作詞の王子様」

静彦「まさかキミも…」

明未「いやはや、類は友を呼ぶモンですね」

静彦「ウソだろ、そんなおっとりした妹系の君からこんなひどい歌詞が出るなんて」

明未「わたし、星丘明未。兄さん、同じ穴の狢同士シャバで頑張りやしょうぜ」

静彦「残念だが、同じ釜の飯は食べない」

明未「おのれ、キサマを紙人形にしてやるわ」

BGM2がピタッと止まる。
SE カフェが再開

静彦「…あれ」

明未「どしたの?」

静彦「来そうだ」

明未「誰が?」

静彦「違う。なんか降って来そうなんだ」

明未「え、外カンカン照りだけど」

静彦「いや天気じゃなくて、歌詞が!」

明未「あ、そういうことね」

SE 速いタイピング音

静彦「わかった、こうだ! よし、いいぞいいぞ。いけるいける。おおおおおお!」

SE エンターキーを押す音

静彦「出来たー! データ送信、っと」

明未「王子様、めっちゃわかりやすい」

静彦「昔からよく言われる」

明未「ねえ、読者第一号になっていい?」

静彦「あ、ああ」

明未「どれどれ…うん、刺激的じゃん。これよ、これこれ。わたしが惹かれるのは」

静彦「ありがとう。まさかキミの歌詞にインスピレーションを受けるとはな」

明未「えへへへ」

BGM3がスタートして、

静彦「売れるために死に物狂いで書いてるうちに、目指してた頃の情熱忘れちゃってさ。何だか初心に戻れた感じだよ」

明未「…実はわたしもいま絶賛スランプ中なんだよね。ネタ切れ迷走まだダメそう」

静彦「え?」

明未「刺激的なものばかり書いてたら、どんどん刺激感じ無くなってきちゃってさ」

静彦「だからって焦って変なことするなよ」

明未「ノープロブレム。バンド売れてるし、印税ガッポリ入ってくるから」

静彦「いや、生々しいって」

明未「なのでウェルカムスランプ満喫中」

静彦「じゃあ、そんなキミにはこれを」

明未「なーに?」

静彦「愛を込めた歌詞の制作データたち」

明未「え、見ちゃっていいの?」

静彦「ここだけの秘密だぞ」

明未「ありがと。お言葉にあ・ま・え・て」

SE スマホのバイブ音

静彦「お、先方からだ!」

明未「がんばれがんばれ!」

静彦「良いことありそうな気がする」

明未「行ってらっしゃい」

静彦「ああ!」

SE 歩き出す音
突然すべてのSEとBGMが止まり、

静彦「(電話口で)え、没? 内容がコンプラ違反…わかりました。じゃあ、また。(電話を終えて)ま、仕方ないか(と前向きで)」

再びBGM3がスタート
キャストコール・スタッフコール。
やがてフェードアウトして、

おわり

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