シナリオ「我慢ならない客たちがそこにいる!」
FM Kawaguchi「ぶたかん‼」
リーダーズシアターにて
<キャスト>
新人・峰高(みねたか) 鹿島裕介
先輩・徳安(とくやす) 水沢綾
店長・加瀬木(かせぎ) 平野岬
客 須田剛史
〇ディスカウントショップ
新人スタッフの峰高(24)が挨拶。
店長の加瀬木(36)と先輩の徳安(27)が同じ場にいる。
加瀬木「では、峰高さん。本日よりよろしくお願いします」
峰高「よろしくお願いします!」
徳安「はじめまして、パートの徳安です。あーよかった。これでお店が回る」
加瀬木「新店はどんどん増えるのに、人手はどんどん減るばかり。猫の手も借りたいところにあなたが来てくれた」
峰高「そうだったんですか」
徳安「本社去年より儲けてるはずなのに、時給なぜか安いですよねぇ(と嫌味で)」
加瀬木「それは言わないお約束。はい、おくちにチャーーック」
徳安「ところで聞きましたよ、ご実家って由緒ある老舗でしょ? 格式高い日本料亭のご子息が、どうしてこんなディスカウントショップに?」
峰高「社会勉強といいますか…生まれてこのかたずっと温室育ちだったので、外の世界を知るべきだと学生の頃から思ってました」
徳安「勉強熱心なんですね」
峰高「未熟者のボンボンでございますが、精一杯がんばります。ご指導ご鞭撻のほどよろしくお願いします」
徳安「そんなかしこまらなくても」
加瀬木「フランクに行きましょうぜ」
峰高「ありがとうございます」
加瀬木「じゃあさっそくボンボンボーイ、レジをお願いね」
峰高「がんばります!」
SE レジ打ち
峰高「ちょちょちょ、加瀬木店長―!」
加瀬木「どうした?」
峰高「あの人たち、レジでお金払ってないのに勝手にお店の商品、開けちゃってます!」
加瀬木「…ああ、外国人の旅行客か。まあ、文化が違うからね」
峰高「いやいや、注意しないんですか?」
加瀬木「うーん、前はしてた」
峰高「前はって…」
加瀬木「でも言葉通じないし」
峰高「注意してきます」
加瀬木「待った」
峰高「なぜ止めるんです? 郷に入っては郷に従え。当たり前のことでしょ!」
加瀬木「(気まずそうに)あの人たちのおかげでウチ、何とかなってるんだよ」
峰高「はあ?」
加瀬木「ここんとこ毎月予算ギリギリでさ。前年比割ると上長がうるさいから。たくさん買ってもらわないと」
峰高「あり得ない。実家の店にはマナーを守れるお客さんしか来ません」
加瀬木「あいにくここは薄利多売店」
峰高「うわ! あのお客さん、ペットと店内に入ってきた。え、あっちの若者は勝手に売り場にゴミ捨ててるし」
加瀬木「おー、今日はバラエティ豊かだ」
峰高「いや、感心してる場合じゃないでしょ! あー! ワンちゃん、隅っこでトイレしちゃってるぅー!」
SE レジ打ち
峰高「耳! イヤホン、外してください! 言葉のキャッチボールして!」
徳安「ダメダメ、なに言ってもムダです」
峰高「はあ?」
徳安「ここに来るのは宇宙人ばかりなり」
峰高「う、宇宙人?」
徳安「意思疎通の文明がとっくに衰退した、遥か彼方からやって来た生命体」
峰高「うちにはあんな客は来ません。そもそも、ヒトなんだから五感を生かして感情を出すのが当たり前でしょ?」
徳安「…お主、引き寄せてるのかも」
峰高「交信なんかしてません!」
徳安「(突然遮って)いらっしゃいませ。袋、入れますか? はい」
峰高「(小声で)あの…さっきからお客さん、何も言ってませんけど」
徳安「では、そちらの端末へどうぞ。はい、ありがとうございました」
峰高「え、なんでわかるんですか?」
徳安「うーん、なんででしょうね」
峰高「…もしかして徳安さんのほうが宇宙人だったりして」
徳安「(宇宙人の声マネで)ピンポン」
峰高「えええええ」
SE レジ打ち
客「なあ、オレの顔ちゃんと見ろよ」
峰高「拝見してます。何か問題でも?」
客「お前さっき、テキトーに返事したろ? 人間扱いしてないよな?」
加瀬木「これはこれは、いつもお世話になっております。どうされましたか?」
客「おう、アンタか。こいつ、オレをバカにしやがったんだ。ムスッとした顔で素っ気ない態度取りやがって」
峰高「そもそも大の大人がキックボードに乗ったまま、お店に入ってくるなんておかしいでしょ!」
客「ここは公道じゃねえから、なにも問題ありませーん」
峰高「そういうことではなくてですね―」
加瀬木「大変申し訳ございません。彼には私からきつく言っておきますから」
客「ったく、頼んだぞ」
峰高「なんでこちらが謝るんですか!」
徳安「あの人、このビルのオーナーのご子息。しかも、うちの会社の大株主」
峰高「はあ?」
徳安「前に同じこと言った社員、本社の辞令で地方へ異動させられちゃった」
加瀬木「所詮、長い物には巻かれろだ」
峰高「いやいやいや、たとえ同じボンボンでも許せません!」
徳安「声が大きい。落ち着いて」
加瀬木「大人になろう」
峰高「おふたりとも間違ってます! 目の前のマナー違反に目をつぶることが大人になることなんですか?」
徳安「それは…」
峰高「おかしいことはおかしいと言わないと取り返しがつかなくなりますよ」
加瀬木「でも、それが今の時代だから」
徳安「わたしも前は変だなあって思ってたけど、もう慣れちゃったし」
峰高「(ぶつぶつと)おかしい、こんなのおかしい…こんなの間違ってる…」
加瀬木「ん? 峰高さん?」
徳安「ちょっと、大丈夫ですか?」
峰高「(思いっきり叫んで)ぜんっぜん、だいじょばないですっ! ああ、もう我慢ならないっ。こんな非常識ばかりまかり通る店、辞めてやるー!」
おわり
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