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舞台鑑賞強化月間の第1弾。

2019年9月6日。
東京は中目黒のキンケロシアターにて。

ことのはbox第11回公演『歌姫』を観劇。

脚本:宅間孝行
​演出:酒井菜月

南翔太
花房里枝
松本祐一
橋本全一
船岡咲
佐藤ケンタ
篠田美沙子
氷室幸夫
親泊義朗
黒田貴子
天野きょうじ
中村靖子
川田小百合
西村尚恭
長崎りえ
小倉卓

公式サイト 特設ページ

サタケミキオこと俳優の宅間孝行さんが脚本を務められ、TBSで連ドラにもなった名作。

高知県の映画館を舞台に、記憶喪失の男・太郎と彼を慕うヒロイン・鈴を主軸にした人間ドラマである。
メインのふたりだけでなく、周りを取り囲むキャラも実に個性的で印象深い。

今回、及川美和子役の女優・篠田美沙子さんにお会いすることができた。

所属劇団 ことのはbox紹介ページ
公式twitter

彼女を知ったきっかけは今年の3月。

友人で女優の難波なうさんの洗練されたお芝居を拝見すべく、出演された『見よ、飛行機の高く飛べるを』を観にキンケロシアターへお邪魔した時のこと。

『見よ、飛行機の高く飛べるを』は昭和の女子師範学校を舞台に、貞淑を押し付ける学校の体制に反発した学生たちが平塚雷鳥のように新しい女性として社会へと飛び出そうと計画する物語だ。

中盤あたりでのこと。
会議室で学生たちが「バード・ウィメン」という本を作ろうと話し合っていると、ひとりの男が机の下に隠れていた。
男の正体は用務員をしている老婆・板谷わとの息子・順吉で、彼は女学生たちとの激しい口論の末にとある女学生の唇を突然奪って逃走する。

その唇を奪われる女学生・木暮婦美を演じたのが篠田さんだった。

翌日のシーンで、唇を手で触れながらポーっとした様子でゆっくりと登場する婦美の姿を今でも忘れられない。

やがて婦美は学校側に不純異性交遊をしたと勝手に決めつけられ強制退学させられてしまう。

外へ無理やり連れ出そうとする教師たちに必死に抵抗し、泣き叫びながらも連れ出される婦美。
途中退場が惜しまれるほど、かなり重要な役どころだったりする。

この出来事が学校へと反抗する主人公たちの気持ちをヒートアップさせていくのだが、終演までキスシーンや連れ出されるシーンのインパクトが頭から離れずこの脳内に深く刻み込まれていた。

さて、話を『歌姫』に戻す。

今回の篠田さんの役どころは、主人公・四万十太郎の生き別れになった妻・美和子。
婦美と同じく、これまた重要なポジションを担っている。

早めの登場かなと思ったら、なかなか姿が現れないので心配になった。
今か今かと待って、ようやく折り返し地点で登場したのでひと安心。

美和子の登場で太郎の過去が明らかになる。
実は太郎は戦災で記憶を失い、ヒロインである鈴のいる映画館に拾われていたのだ。
そこへ彼を探しに来たのが美和子だった。

鈴はそこで、想いを寄せる陽気でガサツな太郎が本当は静かで優秀な人間で実は子持ちだったことを知ってしまう。

まさかの三角関係が始まるのだ。

表向きは上品なお嬢様の美和子だが、横暴な男の脅しに屈しない芯の強さがある。
ところが太郎を見つけたときにまた違った顔を見せる。

やっと愛する者に巡り会えた喜びと、しかしその愛する者が自分を忘れていることを知った悲しみを織り交ぜた何とも言えない表情を見事なまでに表現されていた。

僭越ながら、今日まで交流をさせて頂いている役者さんたちには共通点がある。

それは安心感と安定感を醸し出しているということ。
今回の篠田さんもそのひとりだ。

まず、声が良い。
アクセント、抑揚、方言までをも見事に使いこなしている。
(ご本人談で、実際に高知へ行かれたとのこと)

次に、共演者たちとの掛け合いや距離感がうまい。
自身が演じるキャラを奥深くまで理解して、見事なまでに一体化しているのだ。

そして何よりその存在感。
ふとした一挙手一投足に重要な意味を含んでいる。
婦美も美和子も感情を爆発させて外に出て行くという共通点がある。
(※美和子は最後まで登場していたが……)

こういう素敵な役者さんにお会いできることが作家として幸せだ。

次回出演される舞台も楽しみである。

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