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最初にこの映画を知ったきっかけは、知り合いの役者さんがツイッターで出演すると発信していたから。

映画『五億円のじんせい』公式サイト

調べてみると今どき珍しいオリジナル脚本ということで、果たして担当は誰なのかすぐにチェックした。

蛭田直美さん

思わずその名前に目が留まった。

かつてたいへんお世話になった先輩ライターの知人であり、数年前に一度だけお会いする機会を頂いたのだ。

とてもほんわかした雰囲気を持ちながら、どこかキラリと鋭い視点を持っている女性。
自分をまるで実の弟のようにかわいがってくださった。

自分が今よりもっと有名になったらお会いしたい脚本家のひとりだ。

これまで担当されたドラマの映像は拝見していたが、生の文章を読む機会に恵まれなかった。

というわけで、さっそく月刊シナリオを購入。

自分の腕をもっと磨くには、実力者の作品を読むのがてっとり早い。
その人がどういう風に物語を作っていくのかを肌で感じ、刺激を受けるのがいちばんだから。

目を通して数十分。
気づいたときには読み終わっていた。
それくらい内容がスッと入って来る文章だ。

読みやすい。
イメージが浮かぶ。
テンポが良い。

あ、こういうことなのかと実感。

何よりメッセージ性のあるセリフの数々が胸を打った。

これほどまでに思いのこもったシナリオをしばらく読んだことが無かった。

物語はかつて五億円の募金によって難病を克服した男の子が、その対価に見合う人間であろうと生きるが、周囲からの期待や毎年マスコミにその後の経過番組を撮影されて窮屈な日々を送っているというもの。

難病の子どもを治すために大人たちが寄付を募るという話はたくさんある。
刑事ドラマになると、その資金を工面するために家族や関係者が事件を起こしてしまう物語さえある。

しかし、助かったその子のその後の苦悩を描いていくという切り口は斬新だった。

文章はその作家の経験が滲み出るものだというが、まさにその通りで制作ノートから蛭田さんの人生経験の豊富さが滲み出ていて味わい深かった。

とくにアウトローな仕事が出てきたり、暴力や性にまつわる描写が出て来るあたり、人間の本質を描いていると思った。

それだけではない。
ワンシーンだけに出る端役にまでしっかりと命を吹き込んでいる。

セリフを見ればどんなキャラで、生い立ちや生活環境まで見えて来る。

読み進めて時折前のページに戻りつつ、クライマックスを推理しながら再び読み進める、この行ったり来たりの確認作業がたまらなく楽しいのだ。

ここだけの話、最近はおもに洋画を観ている。
これは海外の役者さんに対して前情報なく先入観を持たないから、フラットな気持ちで物語に集中できるのだ。
何より吹替版がプロの声優さんならば最高だ。

どうしても番宣やCMに出る機会が多い役者さんほど先入観を持ってしまうので、全国公開される原作ものの実写邦画へはまったく興味が持てない。

それだけに邦画でオリジナル脚本がこの時代、どれだけ貴重なことか。
『五億円のじんせい』に出演される方も実力派でとてもうれしい。

気づいたのだが、自分が好む役者さんはみんな与えられた役に自らを寄せて同化していく人なんだとわかった。

ところで公式ホームページのあらすじに、主人公の高月望来へ挑戦的なメッセージを送って来るSNSのアカウント名が映画ではキヨ丸となっているがシナリオでは微妙に違っている。

こういった違いを見つけるのもとても楽しい。

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