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〇渋谷センター街

人でごった返している。
かきわけるように全力で走っているひとりの若者、木瀬忠男(24)。
人並みをすり抜けていき、スクランブル交差点のところまでやってくる。
忠男が息をぜぇぜぇさせて―

〇忠男の過去1・路地裏

女子生徒の岸本麻衣(15)が悪げな男たちに囲まれて怯えている。
そこへ全力で走って来る、地味で小柄でガリガリの少年、忠男(15)。
忠男は麻衣の手を取って走り出す、まるでヒロインを救うスーパーヒーロー……になるはずが、男たちに目の前を塞がれてしまう。
まさに絶体絶命の状況。

礼香の声「忠男―」

〇マンション・礼香の部屋(夜)

テレビに流れるアクション映画も先ほどと同じような絶体絶命シーン。
画面をボーっと見つめている忠男、中肉中背で濃い茶系の髪にチャラそうなルックスで軽い細マッチョな感じ。
隣には山上礼香(27)、黒髪で仕事ができるような女性で、どこか麻衣に雰囲気が似ている。

礼香「忠男ってば!」

忠男がハッと我に返って、

忠男「あ、悪い悪い」
礼香「もしこういうことになったら、忠男は助けてくれるの?」
忠男「……うん」

敵を倒していく映画のヒーロー、ヒロインの手を取って誘導していく。

礼香「こないだ観たコメディ映画はヒロインがぜんぶ敵倒しちゃって、逆にヒーローが助けられてた。な~んか興ざめ」
忠男「今どきっぽい展開だな」

忠男、礼香の言葉に思うところあって。
映画のヒロインがヒーローに寄り添う。
礼香も忠男にベッタリ寄り添う。

礼香「いつまでもこうしてたい」
忠男「…………」
礼香「ああ、癒される。めちゃめちゃ仕事頑張った後の束の間のひととき」
忠男「……ちょっとごめん」

キッチンで洗い物を始める忠男、手際よく進めていく。
礼香、膨れっ面。
ゴミ箱の中、スーパーで売られている『サバ』のパックが見える。
突然食器を洗っている手が止まり、忠男が腹を抱えて倒れてしまう。

礼香「どうしたの?」
忠男「(痛みで声が出ない)」
礼香「忠男?」

眼前に腹部をおさえた忠男!

礼香「ちょっと! しっかりして! 忠男!」

苦しむ忠男に救急車の赤いランプがオーバーラップしていき―

〇走る救急車 (夜)

サイレンが鳴り響く。

〇同・内 (夜)

忠男が担架の上で腹部を抑えてのたうち回っている。
傍らの礼香が、

礼香「しっかりして忠男!」
忠男「(苦しんで) いてぇよぉぉぉぉ」

〇都内の総合病院 (夜)

白衣姿の真田研(43)が歩いてくる。
なぜか周囲の同僚たちは彼を避けるように道を開けていく。
真田、不敵な笑みを浮かべて―

〇同・内視鏡室 (夜)

手術着に着替えた真田がベッドの上でもがく忠男に、

真田「麻酔したから、少しずつボーっとしてくるよ」

と慣れた様子で麻酔を投与していく。
徐々に忠男の視界がぼやけていく。

<第2話へつづく>

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