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〇車の中
後部座席に男がふたり。
片一方はメガネをかけたクールな男。
刑事の見留悟(35)だ。

そして、もう一方はコートとタキシードにオールバックそしてサングラスをした男。
同じく刑事の飛崎進介(36)だ。

見留「それ、ハロウィンの仮装ですか?」
飛崎「なに言ってんだよ、トメ」
見留「全くもってお洒落に見えないです。むしろ時代錯誤かと」
飛崎「なんだと?!」

飛崎が見留を小突こうとするが、なぜか距離が取れない。

飛崎「あらら、遠くがボヤけちゃう」

よく見るとサングラスに見えたのはCMで話題のメガネ型ルーペだ。
カラーレンズなのでサングラスに見えたのだ。

見留「外せばいいじゃないですか」
飛崎「これ、気に入ってるの。例のCMでダンディさんが着用してるモデルなんだから。見てよ、この白いフレームいいでしょ」
見留「あれは本家だから似合うんです」
飛崎「憧れたっていいじゃないか!今日は休みなんだから!」
見留「だからって街中で仮装しなくても」
飛崎「だいたいなんでデカがデカに職質されてんだよ、しかもよりによってお前にさ!」
見留「目に付いちゃったんだから仕方ないでしょう?今どきそんな格好誰もしませんよ」
飛崎「俺はするの。てか、しなきゃいけないの」
見留「何でですか」
飛崎「それは……」

と、慌てて飛崎がドアから降りようとする。
見留、先を読んでいたかのように飛崎の手を掴む。

見留「この刑事が納得できる供述をしてください」
飛崎「ヤダ。完黙決め込むもん」
見留「完落ちするまで釈放しませんよ」
飛崎「てか、なんでお前がこの辺を巡回してんだよ。そういうのはおまわりの仕事だろ」
見留「偶然通りかかったんです」
飛崎「でも管轄外だろ?」
見留「事件が解決して本庁に戻るところだったんです」
飛崎「最悪なタイミングだ」
見留「たとえ僕でなくても他の捜査員が声をかけたはずです」
飛崎「さてはこないだのデートをジャマしたから怒ってるんだ」
見留「何を言ってるんですか!決してそんなことではありませ―」
飛崎「スキあり!」

飛崎がドアを開けて外へ逃げる。

見留「飛崎さん!!」
飛崎「ほらほらさっさと捕まえてみたまえ、見留くーん」

飛崎がコートをヒラヒラさせながら、あのセクシー刑事のように軽快に走っていく。
が、ルーペを着用したままなので電柱にぶつかってしまう。

見留「やれやれ、いい歳して」

痛さに悶絶しながらも逃げる飛崎。

〇オープニングナレーション
(逃げる飛崎、追う見留をバックに)

※N=ナレーション

飛崎N「巷はすっかり秋の気配」
見留N「”秋の気配”を聴きながら、物思いに耽る秋の夜長」
飛崎N「ofcourse!yes?no?」
見留N「yes,yes,yes」
飛崎N「忘れた頃に帰って来たよ、このふたり」
見留N「気づけば経ってた三か月」
飛崎N「ブログの更新なければ事件もない」
見留N「世界は平和が何よりで」
飛崎N「俺たちゃ署にて事務作業」
見留N「それでもいつも忘れない」
飛崎N「俺たちが刑事ドラマに憧れて刑事になったということ」

〇タイトル
「そんな刑事(デカ)に憧れて」

<登場人物>※dekapediaより抜粋
飛崎進介 ひざきしんすけ 36歳
巡査部長。警視庁東永福警察署捜査一係。
横浜の危なっかしい刑事コンビのドラマに憧れて刑事になった男。
あのふたりのような破天荒キャラに憧れてはいるものの、実際は親孝行でマジメな健康主義者。
無遅刻無欠勤、始末書ゼロ、おまけに表彰状の授与も数回、モデルガンづくりが趣味(case1)。
大腸ポリープ持ちで、定期的に検査を受けている(case2)。
女性との浮いた話は皆無に等しい(case3)。
懐古主義者であり、休みの日は完結した憧れの刑事ドラマの聖地巡礼をする(case4)。
同じ志望動機を持つ見留と相勤の時だけ、憧れの刑事っぽく振る舞いたがる。

見留 悟 みとめさとる 35歳
巡査部長。警視庁捜査一課。
警視庁の特命な刑事コンビのドラマに憧れて刑事になった男。
あの警部殿のように正義を貫いているが、そもそも周りの同僚に相手にされていない。
入庁前にたくさんのバイト先(宅配ピザ屋、学習塾、メガネ屋、レストラン等)を転々としていた過去をもつ。
通称「トメ」。ただしこの呼び方をされると、千葉に住む母方の祖母を呼び捨てにされているようで不快になる(case1)。
病院での捜査の際、飛崎が服用していた下剤をスポーツ飲料と間違えて飲んでしまい大変な目に遭ったりと天然なところがある(case2)。
時折恋多き過去を匂わせるが、本人は否定している(case3)。
横浜は十八番のデートコースらしい(case4)。

〇レストラン・前(夕)
飛崎が左手で胸の辺りをおさえる。
まるで本家の危なっかしいダンディ刑事が銃を構えるときのポーズのように。

男の声「お客様、コートをお預かりしましょう」
飛崎「ありがとうございま―」

飛崎、背後の男にコートを渡す。
が、受け取ったのはスタッフを装った見留である。

飛崎「ゲッ!トメ!」
見留「こんなことだろうと思いました」
飛崎「さっきの声、マジで店員かと思った」
見留「学生時代、レストランでアルバイトをしていたので」
飛崎「だからって過去の経験で人をダマすな」
見留「身分を偽るのも刑事の仕事です」
飛崎「まったく、油断もスキもありゃしない」

飛崎がお店へ入って行く。
見留も行こうとして、

飛崎「おい」
見留「はい?」
飛崎「ちゃっかりついて来んなよ」

〇同・中(夕)
吹き抜けの2階建て。
テーブル席で食事をしている男女。

飛崎はなぜか物陰でコソコソしている。
隣の見留は疑いの眼差し。

見留「あの」
飛崎「なんだ」
見留「ホシを追ってるんですか?」
飛崎「いや、べつに」
見留「じゃあ何故こんな張り込みみたいなことしてるんですか?」

2階席から見下ろしている飛崎と見留。

飛崎「そういうんじゃねえんだよ」
見留「だったら堂々とすればいいじゃないですか」
飛崎「いや、でもさ」
見留「ホシはどのテーブルに?」
飛崎「だから犯人じゃねえってば!」
見留「察するに、これですか」

見留が小指を立てる。
図星の飛崎、そっぽを向く。

見留「どこですか?」

飛崎が指を差した先のテーブル。
ひと際きれいな女性が座っている。

すっかり見惚れてしまう見留、そそくさと行こうとする。
とっさに止める飛崎。

見留「何ですか?」
飛崎「声かけようとしてるだろ」
見留「いや、もっと近くで面通しをしようかと」
飛崎「口説く気だな」
見留「まさか」
飛崎「オマエ、顔のわりに手が早いから」
見留「誤解です。それに手を出すのは、向こうからの好意をしっかり裏付けしてからです」
飛崎「結局口説くんじゃねえか!」
見留「いいですか?女性を口説くのは男の役目ですよ?だいたい傷つくのが怖くて女々しくしてる暇があったら、何遍も振られたほうがより多くのことを学べますよ。何が草食系男子ですか、男はもっと痛い目に遭って強くなるべきで―」
飛崎「おい、熱くなってるぞ」
見留「……これは失礼」

飛崎が深呼吸して、

飛崎「顔合わせみたいなものなんだ」
見留「え?」
飛崎「お袋がいる老人ホームに勤めている職員さんの娘なんだ。お袋と仲良くなってそれで」
見留「セッティングしてもらったと」
飛崎「乗り気じゃないんだけど」
見留「そんな格好してよく言えますね」
飛崎「いや、お袋からの頼みだからどうしても断れなくてさ。まあ、せめてものエチケットみたいな」
見留「36にもなってマザコンとは」
飛崎「いや、そういうんじゃないんだ。ちゃんと下高井戸でひとり暮らししてるし、社会正義にも就職してる。せめてもの親孝行なんだ。大学まで通わせてもらってるし、息子としてなにかしてやらないと」
見留「気持ちはわかります。でも自分の人生は自分で決めないと」

飛崎、再びため息。

飛崎「あの子を刑事の妻なんかにさせられない。この先ずーっと心労をかけさせてしまう」
見留「何故既に結婚している前提で話をするんですか?」
飛崎「あんなに美人だと思わなかった」
見留「一体どういうのを想像してたんですか」
飛崎「とにかく!上手に断る方法教えてくれよ」
見留「出来ませんね」
飛崎「なんで?!」
見留「だって僕が教えた言葉を飛崎さんが言っても感情がこもりませんから」
飛崎「そこをなんとか、トメ師匠!」
見留「あなたはあなたが考えた言葉で話すべきなんです。そして思い切り恥をかけばいい」
飛崎「恥なんて35過ぎたオトナが今さら。それに実際は見た目のような危なっかしい刑事じゃないし」
見留「どうして自分を偽るんですか?あなたはあんぜんデカでしょ?!健康主義で、優等生で、地味で、内向的で、紫外線対策に余念がない。どっからどう見たって安全だらけでしょう」
飛崎「地味で内向的は余計だよ!」
見留「とにかくありのままのあなたをさらけ出すんです。相手を傷つけることが何ですか!刑事なら尚更いろんな人から恨みを買ってナンボのもんでしょうが!」
飛崎「……わかったよ」

飛崎が仕方なく立ち上がる。

見留「では、僕は本庁に戻ります」
飛崎「ここでサボってたと上司に報告しとくから」
見留「勝手にしてください」

ムッとした見留が行こうとして、

飛崎「おい、トメ」
見留「まだ何か?」
飛崎「……ありがとな」

見留がサムズアップ。
飛崎は階段を下りて、彼女のもとへ歩いていく。
ふと見留、手に飛崎のコートを持っていたままだったことに気づく。

見留「飛崎さ―」

飛崎は顔合わせの女性と会話を始めてしまい気づかない。

見留「どうしようか」

と、見留の目に何かが留まる。

見留「ん?!」

飛崎たちの隣のテーブルで食事をする美男美女のカップル。

背後からひとりの女性がジーっと男の背中を見つめている。
オシャレなレストランにはそぐわない服装。
まるで獲物を狙っているかのよう。

見留の顔つきが変わる。

背後の席の女がバッグの中に手を入れる。
照明で反射する何かの光。
それは、包丁!

見留「!!」

<後篇へつづく>

このシナリオはフィクションです。

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