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前篇を見逃しちゃったあなた!
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〇前回までのハイライト
飛崎が見合い相手の女性と話している。

2階席から様子を見ている見留が去ろうとした瞬間、ふと足を止める。

飛崎たちの隣の席。美男美女のカップル。
その背後からひとりの女性がジーっと男の背中を見つめている。
オシャレなレストランにはそぐわない服装。
まるで獲物を狙っているかのよう。

見留の顔つきが変わる。

背後の席の女がバッグの中に手を入れる。
照明で反射する何かの光。
それは、包丁!

見留「!!」

〇レストラン(夕)
飛崎はモジモジしている。
目の前に素敵な女性・瑠奈が座っている。

瑠奈「ふだんからそういうカッコを?」
飛崎「いえ、今日は場所が場所なので」

タキシードにオールバックの飛崎。
まるであの横浜の危なっかしい刑事を彷彿とさせる。

飛崎の額には汗が見える。

瑠奈「公務員なんですよね」
飛崎「……はい?」
瑠奈「母から聞きました」
飛崎「実は、そうなんです。給料は安定してるんだけど、仕事はなかなか不安定で」
瑠奈「不安定?」
飛崎「ええ」
瑠奈「遅くまで残業とか」
飛崎「残業ならまだいいほうで」
瑠奈「もしかして徹夜?」
飛崎「はい。それに仕事とはいえ、周りにいろんな迷惑もかけちゃいます」
瑠奈「あの、もしかして……その仕事って」

飛崎、うつむく。

見留の声「どうして自分を偽るんですか?あなたはあんぜんデカでしょ?!健康主義で、優等生で、地味で、内向的で、紫外線対策に余念がない。どっからどう見たって安全だらけでしょう」

飛崎、拳をギュッと握る。

飛崎の心の声「こんな不規則で過酷な生活を相手に押しつけてはいけない。それにまだ内勤へ異動する気はないんだ。あ、でもよく考えたらこれから彼女とうまくいくかもわからないんだし、いっそ本当のこと言っちゃったほうが……でも、めっちゃタイプなんだよなぁ」

飛崎が瑠奈をチラっと見るも目が合ってしまい、反射的にそらす。

飛崎の心の声「ああ、もうどうにでもなりやがれ」

飛崎「(意を決して)あの、瑠奈さん」
瑠奈「はい」
飛崎「実は俺、本当はけい(じ)―」

近くで何かが落ちる音。
それは見覚えのあるコート。

飛崎「あれ、それ俺の……」

見留が慌ててやってきて、

見留「落としてすいません!」

飛崎が驚く。
見留が飛崎の背後の席に座って、背中合わせの状態になっている。

飛崎と見留、お互いにコートを拾うフリをして、

飛崎「(小声で)どういうつもりだ」
見留「(小声で)そのまま続けて」
飛崎「(小声で)はあ?」
見留「(小声で)いいから」

見留が飛崎のコートを彼の座る椅子へかける。

見留「前の道が渋滞してまして」

驚いている真向かいの女性・萌実。

見留「僕とお喋りしましょう」
萌実「あなた、いったい―」
見留「静かに」
萌実「どういうつもり?」
見留「お願いですから、愚かな真似はやめてください」
萌実「なんのことだか」
見留「そのバッグの中身です」
萌実「!!」

飛崎、背後で行われている見留と萌実の会話が気になって仕方がない。

瑠奈「飛崎さん?」
飛崎「あ、すいません。どこまで話しましたっけ」
瑠奈「たしか”けい”って言いかけて」
飛崎「あ、えっと、その……経験がないんです」
瑠奈「経験?」
飛崎「こういうところでその、女の人とご飯をするというかなんというか」
瑠奈「そう……なんですか」
飛崎「だから緊張しちゃって。ついうれしくなっちゃって」

必死に愛想笑いの飛崎。

飛崎の心の声「違うだろ、俺!彼女に刑事って名乗るんだろ?そして上手くこの場を断って、彼女に去ってもらうんだろ!」

と、瑠奈が席を立つ。

飛崎「すいません!」
瑠奈「え?」
飛崎「俺の話、つまらなくて」
瑠奈「いえ、ちょっと化粧を」
飛崎「あ、行ってらっしゃい」

瑠奈がお手洗いのほうへ。
彼女の姿が見えなくなることを確認する飛崎、振り返る。

飛崎「なあトメ、お前いったい―」

スマホのシャッター音が鳴る。
萌実がふたりを撮影したのだ。

見留「何のつもりですか?」
萌実「その人もあなたの同僚でしょ」
見留「…………」
飛崎「どういうことだよ?」
萌実「大切な人の前で公務員名乗るなんて、ドラマの見過ぎ」
飛崎「聞いてたのか」
萌実「聞こえたの。だいたいなにあの会話、相手の子が退屈してるのわからない?」
見留「それは僕も思いました」
飛崎「(見留に)おい!」
見留「それより、その写メをどうするつもりですか?」
萌実「なりきりコンビってタイトルで拡散しようかな」
飛崎「なりきり?」
見留「拡散?」
萌実「ハロウィンのコスプレかなにか知らないけれど、あなたぜんぜんトレンディじゃないわ」
飛崎「なんのことかさっぱり」
見留「それは僕も思いました」
飛崎「(見留に)だからお前は黙ってろ」
萌実「これからツイッターでもインスタでもアップすれば、いずれ職場の上の人たちの目に触れるのは時間の問題でしょ」
飛崎「もし、これが上層部にバレたら」
見留「もう相勤が出来ません」
飛崎「シリーズ打ち切りの危機!ああ、なんてカッコしてきたんだろ」
見留「それは自業自得です」
飛崎「もはやこれまでか。さらば主役。次回、最終回・拡散する」
見留「むしろ署内で危なっかしい存在になれるチャンスでしょう、安全さん」
飛崎「(見留に)次言ったらマジでキレるぞ」
萌実「お願いだから、このまま帰って」
見留「出来ません」
飛崎「なあ、さっきからいったいなにが起きてるんだ?」

見留が飛崎の耳元でヒソヒソ。

飛崎「ええっ!マジ?!」

周囲が飛崎のほうに注目する。

見留「静かに」
飛崎「(察して)すんません」

見留「ターゲットは後ろの彼ですね」
萌実「さあ」
見留「当たりのようですね」
飛崎「今踏み止まればまだ何とかなる。でも、もしカバンの中をそれを見せたらアウトだ」
萌実「だからなんのこと?」
見留「動機を教えてください」
萌実「察してよ」
飛崎「何だと?」
萌実「それがあなたたちの仕事でしょ」
飛崎「お前なぁ―」
見留「落ち着きましょう、飛崎さん」
飛崎「こっちは落ち着けないの、もうすぐあの子が戻ってきちゃうから」

と、背後のカップルに動きが。
男・軽森が連れの女性をエスコートして帰ろうとする。

萌実が立ち上がろうとする。
見留が立ち塞がる。

萌実「なにするの」
見留「行かせません」

萌実「きゃあーーー」

萌実による不意打ちの悲鳴。
周囲の視線が見留に注がれる。
見留、突然のことにたじろぐ。

軽森の視線が萌実を捉える。
一瞬首を傾げるが、すぐに萌実に気づいて、

軽森「お、お前は!」
萌実「許さない」

と、バッグの中から包丁を取り出そうとする。
とっさに見留が彼女を手をつかむ。
反動でバッグが床を転がっていく。
チラリと見える包丁を軽森は見逃さなかった。

と、そこへ帰って来る瑠奈。
ちょうど目の前に軽森が。

飛崎「瑠奈さん!」

慌てて飛崎が動き出すも間に合わず、軽森が瑠奈を人質に取る。
凶器は持たず、背後から羽交い絞めにしているイメージ。

店内が騒然となる。

瑠奈「きゃっ!」
飛崎「瑠奈さん!」
軽森「その女とバッグを店からつまみ出せ。そしたら放してやる」
見留「彼女の解放が先です」
軽森「ごちゃごちゃ言ってねえで、さっさとしろ!」
飛崎「ったく、せっかくの休みだと思ったのに残念だな」

飛崎と見留、顔を見合わせる。
同じタイミングでスーツの中から警察手帳を取り出す。

飛崎「あいにく俺たちこういうもんで」
見留「お休みでもしっかり持ち歩いてるんですね」
飛崎「当たり前だろ、生活リズムは不安定だけどこの仕事に誇り持ってるんで」

瑠奈が驚いている。
飛崎、申し訳なく瑠奈へ一礼。

軽森「だいたいオレが何したって言うんだ」
飛崎「人質取ってるじゃねえか」
軽森「それはあの女がオレを襲おうとしたからだろ」
見留「だからって身代わりに無関係な女性を巻き込むのですか?」
軽森「うるせえ!!ザンネンだけどオレは武器を持ってねえからな。正当防衛だ」

萌実がバッグに手を入れる。

軽森「お、お、刑事さん。あの女、これから銃刀法違反しますよ」
見留「やめてください!」

萌実、バッグから何かを取り出す。

飛崎「なあ、やめろって!」

萌実がニヤリ。
次の瞬間、軽森に何かを投げつける。
ぶつかってヒラヒラと舞う何か。

それは軽森と女の写真の数々。
レストラン、車内そしてホテル。
相手の女はみんな違う顔。

軽森が女たちからもらったお金を懐に入れてほくそ笑んでいるものもある。

飛崎「あちゃー」
見留「結婚詐欺師でしたか」
飛崎「こりゃあ二課の仕事だな」
見留「それにしても僕たちの犯人とのエンカウント率の高さといったら」
飛崎「そりゃあ物語の中だもん」

慌てて軽森が逃げようとする。
しかし、笑顔の飛崎が立ち塞がる。

飛崎「はい、ここまで」

飛崎、かの危なっかしい刑事のようにストレートを一発お見舞いする。
吹っ飛ぶ軽森。

飛崎「昭和のデカはこうするんだ」
見留「いけませんね、乱暴は」

見留が軽森の身体を優しく起こすように見せかけ、かの天才警部殿のような体術で力強く取り押さえる。

見留「平成のデカはこうします」
飛崎「お見事」

飛崎が急いで瑠奈に駆け寄って介抱する。

飛崎「ケガ、ないですか?」
瑠奈「……はい」

ハッとする飛崎、瑠奈と顔の距離がかなり近いことに気づく。

飛崎「すいません、まだ知りあって間もないのにこんな馴れ馴れしくしちゃって」
瑠奈「いえ、いいんです」

瑠奈は首をすくめ恥じらっている。
飛崎も首の後ろをポリポリ。

飛崎と見留、萌実を見る。
萌実はふたりに見えるようにスマホの写メを消す。

萌実「あたしも捕まえてよ」
飛崎「あれ、カバンの中になにかあったっけ?」
萌実「え?」
見留「何も見えなかったですね」
萌実「あなたたち……」

サイレンの音が近づいてくる。

飛崎「やべっ!このカッコじゃまずい」

飛崎が裏口のほうへ向かう。

瑠奈「飛崎さん!」
飛崎「またどこかで会いましょう」
瑠奈「え?」
飛崎「俺、不安定な仕事をしてる危なっかしい公務員なんで」
瑠奈「ちょっと!」

周囲を見渡す飛崎。

飛崎「あれ、トメ?」

見留は軽森が狙っていた相手の女性のアフターフォローをしている。
飛崎に気づいた見留がウインク。

飛崎「ったくアイツ、抜かりないんだから」

しばらくして、刑事たちが乗り込んでくる。
テーブルの脚に手錠で繋がれている軽森。
「誰が捕まえたんだ?」などの声が聞こえる。

刑事に事情を聞かれる瑠奈と萌実。
だが、ふたりの証言は……

瑠奈「ちょうどお手洗いに行ってて」
萌実「姿をよく見てないんです」

レストランの周囲を見る刑事たち。
と、近くの大通りは仮装した人混みでごった返している。

〇東京の街中(夜)

ハロウィンパレードの中を飛崎と見留が歩いている。

飛崎「ラッキーだったな」
見留「これならば見つかりません」
飛崎「木を隠すなら森の中ってか」
見留「僕は普通の格好ですけれど」

飛崎がくしゃみ。

見留「風邪うつさないでくださいね」
飛崎「コート忘れた!!」
見留「すいません、レストランに置いてきてしまいました」
飛崎「はあ?あれ高かったんだぞ」
見留「では戻りましょうか」
飛崎「いや、もういいや」

と、仮装している若い女性のスカートの中を盗撮する男。
目撃した飛崎と見留が目を合わせて、

飛崎「トメ」
見留「わかってます」
飛崎「集団の中ってのはコワイね」
見留「やれやれ、もうひと仕事」
飛崎「Ready? Action!!」

〇エンディングナレーション
人混みをかき分けながら現行犯を追跡する飛崎と見留をバックに、

飛崎N「まさかまさかの前後編」
見留N「疑いかけた作者のネタ切れ」
飛崎N「まさかまさかの女性キャラ登場」
見留N「今後レギュラー入りの伏線か?」
飛崎N「そろそろシリーズに華が欲しいと思っていた今日この頃」
見留N「そういえば瑠奈さん、まんざらでもない感じでしたよ」
飛崎N「なんでわかるんだよ」
見留N「それはですね―」
飛崎N「デカの勘とか言うなよ」
見留N「トメおばあちゃんの勘です」
飛崎N「Cut!!」

〇もとのレストラン・前(夜)
警察に保護されている瑠奈。
手には飛崎のコートが握られている。

瑠奈「……危なっかしい公務員、か」

瑠奈が優しくフッと微笑んだ。

<つづく>

このシナリオはフィクションです。

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