オリジナルシナリオ『ポリポーシスたちの憂鬱』

これは、家族性大腸ポリポーシスという難病を背負った男女ふたりの物語。

STORY

30を越え、一生懸命な姿勢が功を奏してパートから正社員に登用されたアパレルショップ店員の雨野ミチル(32)は職場である大型ショッピングモールの従業員トイレで貧血を起こして倒れ、病院に運ばれる。

精密検査の結果、診断された病名は「家族性大腸ポリポーシス」。

その病気を持った親から50%の確率で子へ遺伝するこの難病は、加齢とともに大腸の表面に数多くのポリープが出来、放置し続けるといずれガンになるというものだった。

対策としては定期的な内視鏡検査で大きくなったポリープをその都度切除するか、ガン化する前に全摘して人工肛門にするか。

たとえ大きなポリープを取ったとしても、他のポリープがいつ大きくなるかわからない。
また、もし全摘した場合は日常生活に戻るまでに負担がかかる。
発生場所や症状や進行度に個人差はあるものの特効薬は無く、ガンになりやすい体質ゆえいずれは日常生活全体に支障をきたす恐れのある厄介な病だ。

ミチルは知らされたそれらの症状にどこか覚えがあった。

それは母・幸恵が体験していたことと全く同じで、定期的に検査していたのだ。

まさか自分がその病気を受け継ぐことになってしまうとは……
入院中のベッドの上でミチルはとてつもない悲しみに襲われる。

やがて取り乱したミチルは母・幸恵に「どうして健康に生んでくれなかったの?!」と掴みかかり、そのままケンカ別れしてしまう。

退院後は周囲からの偏見を恐れて職場の上司には栄養失調の貧血とウソをつき、気丈に振る舞って仕事をこなしながらも不安と空虚の日々を送っていた。

一方、会社員の斉木ケイゴ(36)は恋人である女性・望月美憂と最後の一線を越えられずにいた。

年齢から結婚を急ぐ美憂はケイゴとの愛のカタチを一日も早く欲しがっている。
だが、家族性大腸ポリポーシスを持っているケイゴは生まれ来る子に遺伝させてしまうかもしれないという恐怖からどうしても一歩踏み出せない。
ゆえに美憂には本当のことを言えず、いつも避妊具でその場をやり過ごしていた。

ミチルが幸恵に掴みかかったように、彼もまた父・政茂とケンカ別れしていたのだ。
そして和解することなく政茂は病気による大腸がんで亡くなってしまった。

かつて自分が親を恨んだように、愛する子には同じ思いをさせてはいけない。

そんな思いが彼をずっと苦しめていた。

やがて半年後に行われた内視鏡検査の日、見ず知らずのミチルとケイゴは出会うのだが……

果たしてポリポーシスたちのふたりは背負ってしまったそれぞれの憂鬱と向き合い、前を向いて進めるのだろうか?

MOVIE

雨野ミチルのモノローグ

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斉木ケイゴのモノローグ

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家族性大腸ポリポーシスとは

別名、家族性大腸腺腫症。

親から子への遺伝子の疾患によって、大腸の表面に数百から数万ものポリープが出来てしまう病気のことです。加齢とともにその数は増えて大きくなり、もし放置すれば大きくなったポリープのどれかが悪性化してガンになってしまいます。15歳前後から発生が見られ、40歳では50%、60歳ではほぼ100%の患者に大腸癌を発生します。(※この病気によって胃や十二指腸などにもポリープが発生しますが、今回は大腸に物語の焦点を絞って説明しています)

引用元:wikipedia

これは遺伝によるものであるため、病気を持っている親から50%の確率で子へと遺伝します。

もし仮に遺伝しなかった場合は後世の子孫に遺伝することはありません。
反対に遺伝した者が親になった場合、子へ遺伝させてしまう可能性があります。
そのため親にこの症状が出た場合、早いうちから子どもは検査を行います。

対策としては病院での定期的な内視鏡検査で大きくなったポリープだけをその都度切除するか、ガン化してしまう前に全部摘出して人工肛門(通称:ストーマ)にするか。残念ながら特効薬や完全な治療法は未だ見つかっていません。

検査の前夜と当日に多量の下剤を服用するので心身ともに負荷がかかります。
さらにポリープの切除後は腸壁が弱くなっているため、検査から約2週間経過するまで出血予防のために運動と食事が制限されます。

<おもに制限されるもの>
・激しい運動(例:重い物を持つ、マラソンや筋トレなど)
・お酒などのアルコールの摂取
・辛いものや食物繊維の多いものの摂取
・遠方への旅行や出張
・お風呂での長湯(できればシャワー推奨)

また、傷口から出血または下血の可能性も決してゼロではないため、病院での緊急入院を余儀なくされることも。それにより仕事に穴を開けることもあります。
さらに2019年現在も難病指定されておらず、検査費や入院費なども発生するため多大な負担を強いられます。

これらの理由によって病気を持つ片方の親と不仲になったり、職場に迷惑をかけてしまうのではないかと落胆したり、遺伝の面から恋愛や結婚をあきらめたりする人が決して少なくありません。

この作品は今までテレビや映画の題材として取り上げられてきた末期がんといった余命宣告モノではなく、定期検診していれば生きられるものの厄介な難病と向き合って自らの人生に葛藤し挫折しながらそれでも生きる道を選ぼうと奮闘する男女ふたりの物語です。

また「家族性大腸ポリポーシス」という厄介な病を抱えていることを知らず、自分はまだまだ健康だからと精密検査をしないまま手遅れになってしまうという恐ろしい事態からひとりでも多くの人を救いたいと思っています。

VOICE CAST

雨野ミチル ……… 吉田真理
斉木ケイゴ ……… 川上ゴウキ

STUDIO

プラチナムガレージ

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計 80ページ
本体価格 ¥800
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このシナリオはフィクションです。
実在する人物・団体とは一切関係ありません。