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キャスト・スタッフ

安里勇哉
加藤良輔
三好大貴

宮原理子
難波なう
髙橋果鈴
荻野紗那

久保田秀敏

原作
東野圭吾
『虚像の道化師~演技る~』

脚本・演出
堤泰之

音楽
楠瀬拓哉 伊真吾

プロデューサー
難波利幸

企画・製作
エヌオーフォー

公式Twitter

画像出典:ガリレオ★CV様

あらすじ

音楽が流れ、着物姿の3人の女性と1人の男性が舞台上に現れる。

「♪悲しきトロピカルフィッシュ」

ナイトクラブの踊り子たちはそう歌いながら舞い踊る。

ところが次の瞬間、

「ダメだダメだ!」

突然、劇団「青狐(ブルーフォックス)」の主宰・駒井良介(演:安里勇哉)が止めに入る。

これは舞台「タイタニック号に乗れなかった人々」の稽古中。

踊っていた4名は劇団員でそれぞれ、

神原敦子(演:宮原理子)

工藤聡美(演:髙橋果鈴)

安部由美子(演:荻野紗那)

木波寅太郎(演:三好大貴)

という人物。

「聡美、お前はどういうつもりでその役を演技て(えんじて)いるんだ?」

「全然気持ちが入ってない!」

「やっぱりお前は敦子には敵わない」

などと、駒井は冷たく言い放つ。

敦子は聡美の体調が優れないことを駒井に伝えるが、聡美は無理を押してでもこの役をやりきると意気込む。

しばらくしてその駒井が何者かに殺害された。

警視庁捜査一課の草薙俊平(演:加藤良輔)内海薫(演:難波なう)は捜査に乗り出す。

容疑者は上記の劇団員4名。

草薙が凶器が小道具のナイフであることや木波はモブキャラであることを推理するなか、薫はコンビニにスイーツ(なめらかカスタードのプチエクレア、宇治抹茶テリーヌショコラ、ほうじ茶仕立てのみたらし団子パフェ)を買いに行くとウソをついて、帝都大学准教授の湯川学(演:久保田秀敏)に捜査協力を依頼する。

いつもは取り合おうともせず渋られるのだが、今回の彼はなぜか乗り気なご様子。

電話で草薙に「コンビニスイーツ(=湯川)、きょうはわりと甘めです」と報告する薫。

(この最高のセリフを聞いたとき大笑いしてしまった)

湯川はかつて駒井から物理学者を主人公にした物語を書くためにと取材を受けていた。

幼少の学芸会で猿蟹合戦のうす役を務めた過去がある湯川。

しかし、うすは猿を圧死させるポジション。

現代に置き換えればやってることはまるで凶悪犯だ。

実に効率が良く革命的だと称するインスタントコーヒーを口にしながら湯川は過去に駒井へそういった話をしたことを薫に話す。

依然として駒井殺害時のアリバイは完璧。

敦子は由美子と一緒にいるし、聡美も死亡推定時刻に外で花火を撮影していた。

木波は……モブキャラだから外される。

(のちに由美子とデキていたことが判明)

では駒井はいったい誰に殺されたのか?

テレビドラマでの本作は

月9枠第2シリーズ第8話として放送。

原作と異なる点はヒロインの刑事が内海薫ではなく岸谷美砂だったり、駒井の苗字が駒田に変更されていたり、劇団名が「青狐」でなく「コン・カロローサメンテ」だったり、実行犯がそのまんま敦子だったり。

尺の都合や大人の事情に感づいてしまうあたり自分も大人になったんだな。

ギリギリを味わいたかった
ネタバレ注意

草薙と薫は駒井のスマホの連絡先に違和感を覚えた。

由美子の苗字はアベ、その前に登録されていたアオノとアキヤマという人物の名前が削除されていたのだ。

つまり由美子が先頭になるように編集されていたことになる。

湯川はひとつの可能性として、ある仮説を立てる。

それは敦子が偽装工作したというもの。

駒井を殺害したのち彼のスマホを奪い、由美子とともに食事に行く。

そして彼女の目の前で彼のスマホを操作して、由美子に着信を残す。

自分も駒井に折り返して繋がらないフリ。

こうして由美子を証人に自らのアリバイを作る。

「あなたの言葉の欠片が私の胸を刺した時」

そう歌いながら敦子が駒井を刺したイメージが浮かぶ。

かつて敦子は駒井の恋人だった。
しかし、彼は聡美へ乗り換えた。

それが犯行の動機に思われたが……

同じ歌の別の箇所をもうひとりの女性が歌い出す。

「私の想いの結晶があなたの胸を刺せるなら」

実行犯は聡美だった。

彼女は駒井の子をお腹に宿していた。

だから冒頭のシーンで踊っていた時、体調が優れなかったのだ。

が、彼から「君と別れて、敦子のところへ戻りたい」と口にされたことで激情し、思わず裁縫用のハサミで刺してしまった。

やがて駒井はその場に倒れて事切れた。

敦子は聡美の犯行にならないように偽装工作を働いた。

彼女が実行犯でないと判断されたのは、事件直後に草薙たちへ証言をした際「刺してあった」と無意識に口走ったため。

(ゆえに、すでに他の誰かによって刺されたことを知っていると湯川に見抜かれた)

彼女はハサミを抜き、死んでいる駒井に小道具のナイフで再び刺したのだった。

その敦子は取調室にいた。

なぜ彼女がそんなことをしたのか?

それは役者として殺人者の気持ちになってみたかったから

決して聡美を庇うことではなかった。
さらに駒井とよりを戻すつもりもなかった。

「本物の刑事に追われるギリギリの緊張感を味わってみたかった。でも私は殺人犯していない。相手が生きている間に刺せなかったことが悔やまれて、本物には遠く及ばない」

(このときの敦子の顔が怖すぎる)

事件は解決したかに見えたが、残った謎がひとつ。

聡美が犯行当時に現場で撮った写真の謎だ。

花火が上がっていたのは西の窓で、月が出ていたのは東の窓。

そのふたつが同じフレームに映ることは方角的にどうしても難しい。

そこで花火業者に協力してもらい、湯川は草薙と薫とともに現場で実証実験を行う。

花火が上がった瞬間、東の窓を撮影する湯川。

部屋が暗かったため、東の窓に浮かぶ月を撮ったときに西に上がっていた花火が写り込んだというのがその原因であると証明する。

実験は終了したかに思われたが、次々に打ち上がる花火!

これ以上、花火を上げられてしまうと経費がかさむと大慌ての草薙と薫。

それを横目に湯川は微笑むのだった。

拝啓、難波薫 殿

毎度おなじみこのコーナー。
役者・難波なう氏を通じて、私が演劇界や人生について思うことを淡々と語る内容である。

楽しみにしていた皆さま、心行くまでどうぞ(^^)

今回の難波さんはあの内海薫だ!

舞台上が月9になった気分。

数か月ぶりに姿を観てホッとする。
そう、その佇まい。

今回は音楽劇ということで「ガリレオのテーマ」を草薙と歌う場面があり、その歌声を聴くのは初めてだった。

さらに刑事役も初めて(だと思う)だし、普段はクセの強い役が多い(もちろん誉め言葉)ので、水先案内人として落ち着いた役をするのはとても新鮮。

(昔、「The Last Rose Of Summer」という作品で演じたOL以来?)

うん。でも、やはりもうちょいはっちゃけた姿がどこか恋しいような(笑)

ところで本作が公演されたのは新宿シアターサンモール。

驚かずにはいられなかった。

奇しくもこの作品が上演されたのもシアターサンモールなのだ。

難波さんは男に誘拐されたのちに性暴力を受けて監禁される桜子というキーパーソンを体当たりで演じられた。

実は私が作家活動に本腰を入れるため、都内へ拠点を移すきっかけになったのがこの作品を観たことだった。

「人生のターニングポイントだ」と一生言い続ける自信がある。

人間の世界はキレイではない。
ドス黒いからこそ成立している。

その壮絶な作品の世界観が心を動かした。

難波さんを含め多くの女優が裸身を晒すという覚悟を前に、これまでの人生観がガラッと変わってしまったのだ。

何かをするには覚悟を決めなければならないときが絶対にある。

このままモヤモヤしながら、夢を遂げられずに死ぬのだけはイヤだ。

口先や気持ちだけでは何も変えられない。

それはわかっていた。
でもずっと足がすくんでいた。
自粛という世間の風潮もあった。

しかし自分の夢が叶えやすく、一緒に仕事をしてくれる役者さんたちが多くいる環境に一日も早く身を置かないと!

ゆえにこっちも覚悟を決めた。

だからこそ舞台には感謝してもし足りない。

が、その舞台が今は客席上限50%。
エンタメの灯が消えかかっている。

皮肉にも本公演で駒井が湯川に言ったセリフとリンクする。

「演劇ほど無駄なものはない」

無駄に時間をかけて作家が物語を書き、役者たちがセリフを言い、大道具がセットを作る。

社会においてこれほど無駄なものがあるだろうか?

(うろ覚えだが確かこういった内容だった)

その言葉を裏付けるかのように、現在映画館の多くは臨時休業している。

私はエンタメに対する冷ややかな待遇にショックを隠せなかった。

舞台だってギリギリだ。
事実、先々月に観たかった公演が中止になったこともある。

そんななかでもこうして上演してくださっていることは奇跡以外に何と呼ぼうか。

この状況下で主宰が運営をするにあたってスケジュールを調整し、劇場や稽古場を確保し、感染症対策を施し、演者やスタッフにギャラを用意し、1公演でどれだけの収益を出さなければならないか考えている姿を思うと胸が痛むのだ。

たくさんの人たちの生き方を変える演劇が果たして無駄なことだろうか?

私はどうしてもそうは思えない。

むしろ東京へ来たことで作家としていろんなことに挑戦でき、舞台関係者を救うべく今現在いろんな企画や計画をどんどん進めている。

不思議と「必ず形にできる!」という根拠のない確信が持てるのだ。

環境の力は実に恐ろしい。
やはり己の行動が最も大事なのだ。

そもそも、もともとテレビドラマ好きだった自分を舞台好きに変えたのは難波さんだったりする。

制作側として初めてお会いした朗読劇で彼女が魅せる芝居のおもしろさを知り、出演される舞台に通ううちに自分がやるべき仕事の契機を見出し、気づけば共演された役者さんたちの舞台やまったく関係のない劇団の舞台へどんどん足を運ぶようになったのだから。

また以前のように役者面会が出来るようになったら、彼女に心から感謝の意を伝えたい。

エピローグ

観劇を終え、シアターサンモール近くのすき家で遅い昼食を摂った。

なぜならこの後にもうひとつ観る舞台があったからだ。

舞台が放つエネルギーを受け止められるだけのスタミナを蓄えておかないといけない。

目の前の大盛り定食をガツガツかっ食らっていると、聴き慣れた歌が。

おいおい、ここまで制作側は予測して上演したのか?

てことは「再演る(アンコール)」

そして「余韻る(ひたる)」か!

もしそうなら……実におもしろい。

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