シナリオ「ひとりぼっちのチェリー」第3話
〇俊介が勤める会社・外観
雑居ビルの一角。
中堅クラスの企業である。
傘を持ったサラリーマンたちが前の道を通り過ぎていく。
〇同・休憩所
午後3時ごろ。俊介と同僚の脇山陽平(27)。
陽平は名前通りどこか陽気な様子。
俊介、自販機で飲み物を買っている。
陽平「おぉい、それ本当かよぉ」
俊介「ああ」
陽平「てかぁ、そのゴムの子ぉすごいなぁ」
俊介「だろ?」
俊介が缶コーヒーを陽平に渡す。
陽平「おぉ、すまないなぁ」
俊介、ジュースを一口含むと天を仰ぐ。
陽平が俊介を見て、
陽平「んでぇ、気になるのかぁ?」
俊介「全然」
陽平「あれぇ? シュンらしくないなぁ」
俊介「ああいうのはオレ的にナシ」
陽平「おぉい、とかぁ言って本当はぁ―」
スマホのバイブ。
俊介は悪びれることなく、
俊介「悪りぃな」
と言って、スマホをチェックする。
女の子からのメール。
『今夜、楽しみにしてるね♪』の文面。
陽平が覗きこんで、
陽平「おぉい、相変わらずだなぁ」
俊介「息抜き息抜き」
陽平「イキヌクのもいいけどぉ、そろそろカラダ大事にしろよぉ」
俊介「(操作する手が止まって)」
陽平「なんでもヤリすぎは良くないぞぉ」
俊介「陽ちゃんらしくないな」
陽平「えぇ? そうかなぁ?」
俊介「だっていつもは女好きで、オレよりはしゃいでるのに」
陽平「おうおう、これがぁ目に入らぬかぁ」
陽平が結婚指輪を見せる。
俊介は唖然として、
俊介「それ、オレにか? いやいや、オレはそっちの趣味ないから」
陽平「アホぉ、んなワケないだろぉ」
俊介「どんな趣味かと思った」
陽平「実はきのう籍入れたんだよねぇ」
俊介「知らなかった」
陽平「うぅん、これから報告するからぁ」
俊介「じゃあオレが第一号か?」
陽平「まぁ、そうなるなぁ」
俊介「なるほど」
陽平「うぅん、結婚も案外悪くないぞぉ」
俊介「そうか?」
陽平「なぁ、シュンもそろそろぉ―」
俊介「オレはパス」
陽平「だと思ったぁ」
俊介「陽ちゃん、それでもたまに嫁さん以外の子にってことは?」
陽平「うぅん、そりゃあ男だからなぁ」
俊介「おいおい!」
陽平「でも、嫁が一番だなぁ。まぁ、順番は逆になっちゃったけどぉ」
俊介「え? それってまさか」
陽平「あぁ、もうすぐ産まれるんだぁ」
俊介「マジで?」
陽平「うぅん、これからいろいろ準備してかないとなぁ」
俊介「(呆気にとられて)」
陽平「式にはぁ絶対来いよぉ」
俊介「行けたらな」
陽平「ったくぅ。あぁ、報告は大変だなぁ」
と言いつつ嬉しそうな陽平が能天気な様子で去っていく。
俊介、陽気な陽平を見ていて―
ふと陽平が立ち止まって、
陽平「なぁ、シュンさぁ」
俊介「ん?」
陽平「夜遊びと火遊びは程々になぁ」
俊介「余計なお世話だ」
陽平を見送る俊介、スマホを操作し始める。
俊介「(画面を見ていて)…」
窓の外は曇り始めている。
〇ドラッグストア・内
里美がコーナーにあるありったけの避妊具の箱をカゴに入れていく。
近くにいる買い物客が里美の行動に驚いている。
〇レストラン・内(夜)
店内は混みあっている。
俊介が若い女(前のシーンとは違う子)と食事をしている。
楽しそうな雰囲気のふたり。
女が席を外して、トイレへ向かう。
俊介「(笑顔が消える)」
〇繁華街(夜)
小雨が降っている。
傘を差す通行人はまだ少ない。
俊介が先ほどの女を連れている。
周囲を見回す俊介、よくあるティッシュ配りや居酒屋の呼び込みは確認できるが、里美らしき姿はない。
俊介「(ボソッと)……いないのか」
女の子「どした?」
俊介「いや、何でも」
歩いている俊介たちの背後に、避妊具入りのカゴを持った里美が現れる。
里美が俊介の後ろ姿に気づいて、
里美「!」
俊介は里美に気づかず、こなれた動きで女をリードし、ホテルへ入っていく。
里美「(俊介を見ていて)」
<第4話につづく>
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