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〇駅・構内(夜)

ホームへと向かう通勤客たちに紛れて歩く里美。

〇もとの路上(夜)

雨は降り止まない。
俊介、先ほどの軒下で雨宿りを続けている。

俊介「(空を見上げて)」

傘を差している女性が俊介に近づく。
―遥である。

遥「(俊介を見ていて)」

俊介は気づいていない。
遥が俊介のところにやってきて、

遥「あの―すいません」
俊介「え?」
遥「もしかして里美の知り合いで?」
俊介「さ…さとみ?」
遥「(うなずく)」
俊介「(誰のことかわからない様子で)」

〇ファストフード店・内(夜)

ビルの2階部分にある飲食店。
俊介と遥、窓際のカウンター席に並んで座っている。
テーブルに引っ掛けてある傘の先端から床へ滴る雨水。
窓の外から街並みが見下ろせる。

俊介「里美ちゃん―それが、あのコ」
遥「(うなずく)」
俊介「何でオレに?」
遥「しゃべってるとこ見たんで」
俊介「なるほど」
遥「どんなつながりか教えてもらいたくて」
俊介「そう言われても。ただの通りすがり」
遥「それにしては珍しいんで」
俊介「は?」
遥「里美があんなにしゃべるのって」
俊介「そうなんだ」
遥「久しぶりでビックリしちゃって」
俊介「ということは―」
遥「はい?」
俊介「さっきのオレの話も―」
遥「(うなずく)」
俊介「…………」

遥、トレーの上にある紙コップのジュースを飲む。

俊介「遥ちゃんだっけ?」
遥「(うなずく)」
俊介「何であのコはあんなことを?」
遥「…………」
俊介「知ってるんだ」
遥「(動揺していて)」
俊介「別に話さなくてもいいよ」
遥「え?」
俊介「どうせ通りすがりだから。こっちはあのコの名前がわかれば十分」
遥「…………」
俊介「話してくれる方が変だから」

俊介、思い出したようにスーツの内ポケットから何かを取り出す。
遥はまだ迷っていて―

俊介「はい、コレ」

と、遥に何かを差し出す。
名刺である。

俊介「通りすがりにも一応名前あるから」
遥「(名刺を見て)」

遥、俊介から名刺を受け取る。
俊介がトレー上の紙コップに入ったジュースを飲みほして、

俊介「ありがとう」

と言って、遥のトレーも持っていこうとする。
遥が口を開いて、

遥「―のせいで」
俊介「ん?」
遥「アタシのせいで」
俊介「何だい?」
遥「里美を今みたいにさせてしまって」

俊介、席に戻る。
遥が意を決したように、

遥「里美とは他大との交流で知り合って、話も趣味も合って、大学が違うのに仲良くなって、ただ里美は恋愛に縁がなくて」
俊介「…………」
遥「だからアタシ、知り合いの男友達を紹介したんです。もっとあの子に人生楽しく生きてほしいと思って」
俊介「…………」
遥「でも……でも―」

閉じた傘の先端からなおも滴る雨水。

俊介「無理に言わなくていいから」
遥「(首を横に振って) デートの日にその男友達に襲われて」
俊介「!」
遥「里美は何とか逃げ出せたけど、それで里美は男の人を受けつけなくなって」
俊介「…………」
遥「アタシ、余計なことしかできなくて! もうどうしたらいいかわからなくて」
俊介「……ありがとう」
遥「(首を横に振って)」

俊介、窓越しから交差点を埋め尽くす色とりどりの傘の群れたちを見下ろしている。
雨はまだ降り止まずに―

〇里美の部屋(夜)

里美、リビングでうずくまっている。

〇路上(夜)

雨は止んでいる。
俊介がひとり歩いている。

里美の声「そこに愛はあるんですか?」
俊介「…………」

<第6話へつづく>

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