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〇忠男の胃の中

内視鏡で寄生虫のアニサキスを摘出するイメージ。

忠男の声「寄生虫?!」

〇病院・診察室 (夜)

真田の説明を受けている忠男と礼香。
瓶にアニサキスを入れたものを見せる真田。

真田「これはアニサキスといって、ヒトの胃や腸壁に深く噛みつく寄生虫だよ。ここのところ流行っていてね」
礼香「ヤダ、キモい」
忠男「そんなモンがオレの中に―」

忠男はまだのどが痛むようだ。

真田「食中毒かと思ったけど下痢は認められなかったから、もしかしてと思ったよ」
礼香「あの、どうやって入ったんですか?」
真田「夕飯に魚を食べたりしたかな?」

〇フラッシュ

キッチンのゴミ箱にあるサバのパック。

〇もとの内視鏡室 (夜)

忠男「……たしか生のサバを」
真田「きっとそれだね」
礼香「わたしはサバアレルギーなので」
真田「少し休めば帰れるから安心してね」
忠男「助かりました」
礼香「ありがとうございます」
真田「今回のことは大変だったと思う。でも決して寄生虫たちを嫌いにならないでほしいんだ」
忠男「は?」

真田がアニサキス入りの瓶をなでなでしながら、

真田「見た目も呼び名もお邪魔虫のようだけど、嫌われてしまう彼らにもしっかり存在する意味があるんだよ」
忠男「何でですか? そんな虫、害でしかないでしょ?」
真田「そう思われてしまうのは承知の上さ、君の虫の居所が悪くなるのもわかる。それでも意味はあるんだ」
忠男「…………」
真田「この子には後で僕からよく言って聞かせておくからね」

礼香、ポカーン。

真田「お大事にね」

〇タクシーの中 (深夜)

忠男と礼香。

礼香「なんかすごいもの見ちゃった」
忠男「……うん」
礼香「あの人、友だちとかいなそう。あ、でも虫たちがいるか」
忠男「そうだな」

しばし無言のふたり。

礼香「(泣きそうで) ―忠男のバカ」
忠男「え?」
礼香「どうなるかと思ったじゃん」
忠男「―ごめんな」
礼香「ううん、いいの。忠男が無事なら」
忠男「…………」

〇到着するタクシー (深夜)

〇タクシーの中 (深夜)

運賃の会計。忠男がポケットから財布を出そうとするも、先に礼香がお金を渡してしまう。

忠男「オレのせいだからここは払わせて」
礼香「いいの」
忠男「でも―」
礼香「いいから。わたしは忠男の役に立てればそれでいいの」
忠男「…………」
礼香「―お願い」

〇病院・真田の部屋 (深夜)

暗がりの中、新たな寄生虫のコレクションを飾ってニヤリとする真田で―

真田「君たちの新しい仲間だよ」

〇マンション・外観 (深夜)

〇同・礼香の部屋・リビング

忠男は洗い物を再開している。
礼香、テレビを観ている。
アニサキスの被害にまつわるニュース。

礼香「へえ、タレントの***もそうなんだ」

とか独り言をつぶやいている。

礼香「忠男の言ったとおり、寄生虫って害でしかないよね」

忠男、洗い物の手が止まる。

忠男「う、うん」
真田の声「見た目も呼び名もお邪魔虫のようだけど、嫌われてしまう彼らにもしっかり存在する意味があるんだよ」
礼香「どうかしたの?」
忠男「ううん、何でも」
礼香「(じーっと睨み) ……怪しい」
忠男「ぜんぜん何でもないから」
礼香「ひょっとして女?」
忠男「礼香」
礼香「そんなことしたら一生許さないもん」

〇同・寝室 (深夜)

礼香はいびきをかいて寝ている
眠れない忠男、布団に潜ってガラケーでSNSをチェックしている。
同級生の個人ページ、クラス会をした投稿が載っている。
集合写真を拡大すると大人になった麻衣の姿。

礼香「忠男―」

忠男、ビクッとして振り返る。
どうやら礼香の寝言らしい。
ホッとする忠男。

<第3話へつづく>

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