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〇病院・入院病棟 (夕)

個室、出入口に『藤宮昌子』の名札。
眠っている藤宮昌子(58)、傍らに千景と蓮。

蓮「ずっと連れてこようと思ってたんだ」
千景「…………」
蓮「こないだの大事な用事だよ。これまで家族のこと、ほとんど千景に言ったことなかったろう」
千景「(周囲を見て) そういえばお父さんは―」
蓮「どうしようもないヤツだった」
千景「え?」
蓮「お袋と幼い俺を捨ててどっか行っちまった。昔から体の弱いお袋はずっと俺を大切に育ててくれたんだ」
千景「…………」
蓮「これ以上お袋に迷惑をかけたくない、俺は親父みたいにはならずに幸せな家族を築いて男らしく父親らしく生きていくんだ! って思って今日まで頑張ってきた」
千景「だから家庭に入ってほしいと私に―」
蓮「…………」
千景「そうだったのね」
蓮「いつか千景とお袋と俺たちの子たちとみんなで家に住めたら……そう願ってた」
千景「……蓮」
蓮「もしかしたら俺はいつの間にか千景に女性らしさを押し付けてたのかもしれない。自分が求める相手になるように」
千景「そんなことないよ。悪いのはずっと隠してた私のほうだって」
蓮「…………」
千景「ずっと黙っててごめんなさい」
蓮「気にしなくていいんだ」
千景「…………」

千景が出て行こうとして、

蓮「待ってくれ」
千景「……私、ずっと蓮を騙してたんだよ? こんなことして今さらもう元には―」
蓮「千景の元気な顔を見てみたい」
千景「え?」
蓮「ここのところ、全然見てないから」
千景「…………」
蓮「もう隠さなくていい。だからこれから少しずつ見せてくれないか?」
千景「……蓮」

見つめ合う千景と蓮で―

〇激辛ラーメン専門店

里音が接客中、出入口が開いて、

里音「いらっしゃや―」

千景である。

里音「チカ姉ぇ!」
千景「いつもの」
里音「あいあい!」

里音が注文に来るなり、

里音「……こないだはスンマセンっした」
千景「もう気にしてないって」
里音「ウチなんでも言うこと聞きやすから、このとーり」
千景「それじゃあ、もう気にしないで」
里音「……あい!」

千景の隣の席でむせる音、何と添村である。

添村「ったく、よくこんなもんが食えるよな」
里音「完食するまでデートしてやんない」
添村「ううう……」
千景「え? どうしたの? どういうこと?」
里音「いろいろあったんす、あとで言いやす」

あまりの辛さに悶絶する添村。
里音がラーメンを持ってきて、

里音「おまちどうっす」
千景「あれ、トッピング頼んでないけど?」

里音が懐から辛さ倍増サービス券(前のシーンのもの)を出してウインク。

千景「……ありがと」

〇同・前

千景が相向かいのスイーツカフェを見上げると、働く友介と目が合う。

〇スイーツカフェ・スタッフ通用口

休憩中の千景と友介。

友介「そうでしたか」
千景「いろいろ迷惑かけてごめん」
友介「いえ、こちらこそ」
千景「何てお礼を言ったらいいのか」
友介「お気持ちだけで―」
千景「十分です」
友介「はい」
千景「最後にひとついい?」
友介「何でしょう?」
千景「そのガタイは筋トレしてるの?」
友介「いえ、何にも」
千景「え? ウソ?」
友介「生きてたら自然にこうなりました」
千景「今度、ボクシング出てみたら?」
友介「どちらかと言えばレスラー向きです」

千景が友介に缶コーヒーを差し出す。
今度はしっかり砂糖とミルク入り。

友介「先日頂いたばかりじゃないですか」
千景「今度スイーツちょうだい、ただしあまり甘くないやつで」
友介「喜んで」

千景と友介、笑い合って―
〈終わり〉

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