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〇街(夜)

尚美が走っている。

駿の声「尚美!」
尚美「!」

尚美、声がした方へ振り返る。
追ってくる駿の姿に驚きを隠せない。

尚美「……何で?」
駿「(息を切らして) 間に合った」
尚美「何でここにいるのよ?」
駿「(息を切らして) 何だっていいだろ」
尚美「(ハッとして) まさかあの場に?」
駿「(息を切らしながら) ……」
尚美「……そう」
駿「ごめん。部外者なのに首を突っ込んだりして―」
尚美「やっとわかった」
駿「え?」
尚美「私、自分の気持ちを押しつけてたんだね。シュンにずっと」
駿「もういいんだって。そんなこと気にしなくて。俺だって―」
尚美「相手の気持ちなんて全然考えないで、私……」
駿「もういいって言ってるだろ!」

駿が尚美を抱き寄せる。

尚美「…………」
駿「(我に返って) ……悪かった」
尚美「…………」
駿「尚美?」
尚美「ごめん……ひとりにさせて」
駿「…………」
尚美「……お願い」

尚美が歩いていく。
駿、拳を握る。

駿「もう終わりにしよう!」
尚美「(立ち止まって) わかってるよ」
駿「え?」
尚美「(振り返って) 別れよっか」
駿「……何言ってるんだよ?」
尚美「だって留守電で言ってたでしょ。私との関係を終わりにしたいって!」
駿「違う!!」
尚美「え?」
駿「こういうケンカとかすれ違いとか、そういうものを終わりにしようって吹き込んだんだ!」

留守電メッセージの「もう、終わりにしたいんだ」という直後、クラクションの裏でかすかに聞こえる「ケンカやすれ違いをさ」という駿の声。

尚美「(ハッとして) そんな……」

駿、尚美の傍へ。
尚美はうつむく。

駿「もう黙ったりしない。思っていたこともちゃんと全部話すから」
尚美「…………」
駿「だから……やり直そう」

見つめ合う尚美と駿。
車や人がふたりの近くを流れて行く。

〇もとのレストラン(夜)

テーブルの上に並んだふたつの湯呑み。
孝介と沙知絵が眺めている。
ふたりの沈黙が続く。

〇カフェ

尚美と彩音が会話している。

彩音「ふ~ん。なんとなくそんな気がした」
尚美「え、驚かないの?!」
彩音「尚姉と違って、アタシはあのふたりをよ~く見てたから」
尚美「……そっか」
彩音「で?」
尚美「ん?」
彩音「話ってそれだけ?」
尚美「……まあね」
彩音「ま、尚姉のことだからいっか」
尚美「どういう意味よ」
彩音「ってことはあのふたり、今も―」
尚美「それなんだけど……」

〇栗山家・リビング(イメージ)

キッチンの沙知絵、料理と格闘中。
孝介もDIYに悪戦苦闘している。
テーブル上にお揃いの湯呑みふたつ。
尚美と彩音のプレゼントである。
一見もとの風景に戻ったかと思いきや、

沙知絵「じゃあ、今日はそろそろ」
孝介「泊まっていけばいいじゃないか」
沙知絵「え?」
孝介「(頭を掻きながら) たまには夫婦に戻るときがあってもいいかなと思ってさ」

沙知絵が微笑む。

〇もとのカフェ

彩音「さすが尚姉、余計なことしちゃって」
尚美「余計? ここまで来るのにいろいろ大変だったんだからね」
彩音「ならアタシも仲良し別居しよっかな」
尚美「いい加減にしなさい」
彩音「ジョーダン。今度ウチ来たらお茶出してあげるからさ。めっちゃマズいやつ」
尚美「……あのねえ」

〇尚美が勤めるオフィス・休憩室(夜)

自販機のボタンを押す圭子、栄養ドリンクを取り出してキャップを開ける。
尚美がやってくる。

尚美「あ、お疲れ様です」
圭子、ドリンクを飲みながら手を振って挨拶。
圭子「もう上がり?」
尚美「何だか今日はスムーズに進んだので」

尚美、自販機で飲み物(それが何かは見せない)を買う。
圭子が尚美の手元を見て、

圭子「今日はいつものじゃないね?」
尚美「たまには違うものもいいかなって」
圭子「珍しい」
尚美「お疲れ様でした」
圭子「うん」
尚美が勢いよく出て行く。
圭子「(頬を緩めて) まったく、わかりやすい子なんだから」

〇同・玄関前(夜)

社内から出て来る尚美、周囲を見渡す。
駿がいる。
彼の手にブラックコーヒーの缶。
尚美の頬が緩む。
駿のもとへ歩を進める尚美。
彼女の手にはペットボトルのお茶が握られていて―
<終わり>

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