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〇栗山家・前(朝)

駿、インターホンを押す。
おしゃれな格好の孝介が出て来て、

孝介「あ、シュン君」
駿「先日のお詫びをしようと思いまして。実は先ほど―」
孝介「ごめんね、ちょっと用事があって」
駿「え? お出かけですか?」
孝介「そうなんだよ。なので、また後でね」

ドアが閉められる。
駿、不審に思って―

〇沙知絵の住むアパート・外観(朝)

尚美が沙知絵の部屋のドアを見つめる。
手には紙袋が握られている。

尚美「…………」

と、ドアが開く。
尚美がとっさに物陰に隠れる。
沙知絵が出て来る。
おしゃれな服を身に纏っている。
沙知絵の服に尚美は見覚えがある。

〇フラッシュ

孝介の仕事部屋にあったパソコンに映る女性服のデザイン。
沙知絵の服と全く同じである。

〇もとのアパート・前(朝)

驚きを隠せない尚美。

尚美「え? いったい、どういうこと?」

沙知絵が歩いていく。
尚美、こっそりと後を追う。

〇銀座あたり

沙知絵が歩いてきて立ち止まる。
どうやら待ち合わせのようだ。
後を追う尚美、物陰から様子を窺う。
と、そこへやってくる男性。
孝介だ。

尚美「父さん?」

合流する孝介と沙知絵。
まるで夫婦というよりもカップルだ。
歩行者天国を歩き出す孝介と沙知絵。

尚美「(状況が飲めず) 何がどうなってるの?」

尚美が後をつけて行く。
と、尚美の背後に人影が。
駿である。
彼もまた孝介の後を追ってきたのだ!
駿は尚美に気づいているが、尚美は駿に気づいていない。

〇デパート・屋上

沙知絵が手作りの弁当を振る舞う。
孝介、美味しそうに食べる。
様子を窺っている尚美。
その背後に駿がいて―

〇レストラン(夜)

雰囲気の良いお店で、孝介と沙知絵が食事をしている。
ふたりはとても楽しそう。
物陰から見る尚美は驚きを隠せない。
背後に駿もいる。

孝介「乾杯」
沙知絵「乾杯。思い出すね、初めてのデート」
孝介「母さん、ガチガチに緊張していて挙動不審だったなぁ」
沙知絵「ずっと女子校だったから、男の人とどう接すればいいかわからなかったの」
孝介「息子がいたら鍛えてもらえたかもね」
沙知絵「何言ってるのよ」

孝介と沙知絵が笑い合う。
尚美の顔は険しくなっていき、飛び出してしまう。
物陰の駿が驚く。

尚美「これって何のマネ?」
孝介「尚美……」
沙知絵「ついてきたの?」
尚美「別居してたんじゃないの? なのに何でこんなことしてるの? よくわかんないんだけどさ」
駿「(ボソッと) ……別居?」

尚美、手に持っていたプレゼントをテーブルの上に置く。

尚美「お祝いしようと思ってたらあんなことがあって……私、ずっとどうしたらいいか考えてたんだから!」

尚美が行こうとして、

孝介「待ってくれ!」
尚美「(足を止めて) ……」
孝介「こっちへ来なさい」
尚美「(振り向かずに) ……」
孝介「(凄みを利かせて) いいから」

尚美がゆっくり引き返す。
孝介、頭を下げる。

孝介「ずっと隠してて悪かった」
沙知絵「父さん」
孝介「もういいんだ」
沙知絵「でも……」
孝介「尚美。父さんと母さんな、お互いのことを思いやりたかった。だから、あの頃の気持ちを取り戻そうとしたんだ」
尚美「え?」
沙知絵「付き合って、結婚して、あなたと彩音が生まれて来てくれて、とても幸せな日々を過ごしてきた」
尚美「じゃあ、どうして別居なんてマネ―」
沙知絵「もし娘ふたりが成長して、両方とも親の手を離れたら、もう一度昔のようなふたりに戻ろうって話し合っていたのよ」
孝介「ずっと考えていたんだ。母さんはいつもそばにいてくれる、でもそれを当たり前だと思ったら感謝の気持ちを忘れてしまうんじゃないかって」
沙知絵「父さんと一緒にいてつらいと思ったことは一度もなかった。今でも大好きよ。でもね、頼りっきりにならないで相手のこともしっかり考えなきゃって思ったの」
尚美「で、いい年してそんなカッコしてるって? 夫婦でこんなバカげたことしちゃってさ!」
沙知絵「馬鹿げたこと?」
尚美「めっちゃバカげてるよ! 夫婦は一緒にいて当たり前でしょ?」
孝介「当たり前かな?」
尚美「え?」
孝介「一緒にいるからって仲良しとは限らないし、離れてるからってケンカしてるとは限らないんじゃないか?」
尚美「それは―」
沙知絵「愛しているからこそ、大切な人とあえて距離を置くことでその大きさに気づくことだってあるの」
尚美「愛する人とずっと一緒にいるのが夫婦じゃないの? その人のために頑張りたいって思うモンじゃないの?」
孝介「近過ぎてしまってわからなくなることがあるんだよ」
沙知絵「離れてみてわかることもあるの」
尚美「私は……ふたりを見て育って来たの。ふたりのような夫婦になりたいってずっと思ってきたの!」

尚美、走り去っていく。

孝介「尚美!」

尚美を追おうとする孝介と沙知絵の前に、一部始終を見ていた駿が現れる。

沙知絵「……シュン君」

一礼して尚美の後を追う駿。

孝介・沙知絵「…………」

<最終話につづく>

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