劇団アマヤドリ公演「うそつき」観劇
2019年10月24日。
東京は池袋・スタジオ空洞にて。
劇団アマヤドリ公演『うそつき』鑑賞。
< 作・演出 >
広田淳一
< キャスト >
ナイル …… 梅田洋輔
ギーコ …… 長谷川なつみ
スランプ …… 一ノ瀬花音
板垣 …… 藤家矢麻刀
出典元:劇団アマヤドリ様
本公演は『うそつき』の再演と、新作『やがて二人は部屋を出る』の上演で構成されている。
今回は『うそつき』のほうを拝見した。
タイトルにあるように、本作は登場人物のつく「うそ」がテーマとなって進行する物語。
小さな港町・カルタゴ。
その町の外れにある一件のガソリンスタンド『カルタゴ・ノヴァ』
そこにかつて軍の大幹部で開発者だった男・ナイル、頬に傷のある妖艶な女性・ギーコ、そしてかわいいメイドのスランプがいる。
ある日、板垣と名乗る男が現れる。
彼はギーコの恋人だというのだ。
そして貸していた金を返してもらうために来たという。
しかしギーコは彼が板垣だとは信じない。
なぜなら板垣の顔そのものが違うのだ。
彼は戦時下で顔半分を損傷したのち直してもらったというが、なぜかそれは別人の顔だった。
もとの顔に戻さなかったことでギーコは板垣の名を騙る者のウソだと疑心暗鬼になり、ナイルも板垣に対して懐疑的な状態だ。
登場人物それぞれのつくウソが絡み合い、騙し合い、そして行き着く先にある意外な真実。
何が真実で何がウソなのかわからなくなるほどセリフの応酬が計算されていてすごかった。
余談だが、マジーナというカルタゴの市長がセリフやテロップの中だけで登場する。序盤では市民の味方だと主張しておきながら、終盤では自国の形勢が悪くなったことから家族を連れてこっそり亡命していたという言葉と態度が矛盾した”ウソ”も見事だった。
終演後、主演の梅田洋輔さんにお会いした。
なんと写真を撮って頂いた際、背後にトイレの貼り紙が写ってしまったのだ。
だが「これはこれでネタになっておもしろいです」とフランクな一面を見せてくださった。
今回の梅田さんは男らしい見た目のわりに腕っぷしが弱いナイルを演じていた。
実際、女性のギーコを制止しようとして力勝負で敗れている(笑)
ドレスダウンの女ほんぬい公演「ミツバチ」以来、1か月半ぶり。
これまでとは違う新しいキャラを開拓されていて、そのスゴさを感じた。
彼のセリフ回しはいつ聴いても安心する。
声の抑揚、アクセント、間のとり方が良い。
それだけでなく、コメディからシリアスまで表情と挙動を自由自在に切り替えるのが実に上手いのだ。
物書き・スダのプロジェクトを進めていくうえで、光栄なことにいろんな役者さんにお会いする機会が増えた今日この頃。
過去の上演作品も拝見していればもっとその役者さんを深く知ることが出来たといつも反省する。
ところで、この物語には「エレファント」という重要なキーワードがある。
想像するにエレファントとは戦時下における人型の強化ロボットのようなものらしい。
ちなみにナイルと板垣の会話から、鳥型のものもあったようだ。
(※公式サイト内にある上演台本で確認済)
ナイルはそのエレファントの開発者であり、「作ったたくさんのエレファントが戦争で壊されていくのを見るのがイヤになった」と劇中で語っている。
実は前半にて、ナイルはある人物から「暴力はやめて。(ナイルが)負けるから」と言われるのだが、それがラストである人物がエレファントだったという伏線になっていたと気づいたとき震えが止まらなかった。
緻密に計算された台本と実力派の役者さんたちが融合した95分間、グイグイひきこまれる作品を観られた幸せを噛みしめた。
19時30分からの夜の部を観終え、池袋駅まで歩こうと外へ出ると雨が降っていた。
劇団アマヤドリだけにしばし劇場の出入口で雨宿りしようかと思ったが、傘を持っていたのですぐその場を後にした。
梅田さんの次回の公演を楽しみにしながら、物販コーナーで買った本公演もうひとつの演目『やがて二人は部屋を出る』の台本を帰りの電車の中で読んで家路を急いだ。
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