純血華劇派 第20回公演「26時の劇場」鑑賞
役名 上手/下手
コール …… 緒形まひる/緒形まひる
カクテル …… 飛澤結海/飛澤結海
オフィーリア ……… MIKI/北澤桃子
ロケッツ男爵 ……… 芝尾茜子/井上由貴
ジョゼットストーン ……… 鉄育果/詩絵
ベイブルー ……… 稲葉愛花/翔恋
女王アント/客C ……… 戸崎奏音/信江紅映
メリーメリー/客D ……… 大澤怜香/菜月
トット/プロローグの女優 ……… 広瀬加恋/広瀬加恋
ピピン ……… 長谷川めぐの/長谷川めぐの
ププン ……… 祝田唯花/祝田唯花
ぺペン ……… 澤井美咲/澤井美咲
ピカソ/客A ……… 岡壁杏依/町田すずな
ゴッホ/客B ……… 小西明音/狩野有希乃
マルコ ……… 弥上零/たかはしゆきこ
アルフレッド ……… 石坂萌那美/石坂萌那美
ジョブズ/プロローグの俳優 ……… 長谷川美月/長谷川美月
出典元:純血華劇派様
あらすじ
閉館が決まった劇場【Under North】の支配人・コールは年老いた男。
いつものように最後の客を送り出し、日課の掃除を始めていた。
ところが突然そこに、銃を持った少年・マルコとアルフレッドが焦った様子で現れる。
近くの店で強盗を働いた少年たちは警察に追われ、劇場に逃げ込んできたのだ。
コールの説得もむなしく突入してきた警官たちと少年たちは銃撃戦を始め、彼は流れ弾に当たって死んでしまった。
……はずだったのだが、目覚めてみると劇場は満席状態。
と同時に、老いていた体もなぜか若返っている。
気づくと周りには派手な服装をしたカクテルやロケッツ男爵、ピピン・ププン・ぺペンなど個性あふれるキャラクターたちが彼を取り囲んでいるではないか!
かつての活気を取り戻したような劇場の様子に驚いていると、時は26時を告げて本日の演目が始まるのだった。
が、やがて観客は演目に対して面白味を覚えなくなり劇場はピンチに陥ってしまう。
そこで白羽の矢が立ったのがコール。
女王アントやベイブルー、ピカソにゴッホなども加わり、ひょんなことから彼は劇場のメンバーとともにひとつの作品を制作していくことになる。
果たして彼は舞台を成功させることができるのか?
凝っていて新鮮!
ボイスドラマにご出演頂く稲葉愛花さんが出演される上手チームを拝見。
ベイブルーという役なので「ベーブルースネタが出てくるかなぁ」と上演前に思っていたら、本当に出てきてビックリした。
ご本人曰く「日によってストライクとかホームランとか変えてる」とのこと。
さらに観る舞台のキャストが女性のみというのは初めてで、とても華やかな作品だなぁと思い新鮮な気分を味わう。
ミュージカルなので楽しそうに歌って踊るキャストたちを見ながら、「そもそもこれらの曲ってどうやって作っているんだろう?」という余計な考えが頭の中をぐるぐる(笑)
何より驚いたのは出入口付近にあるポスター。
これがとても凝っている。
そう、本編に登場する公演名になっているのだ。
さりげなく貼られた「BELIEVE」の作者がコールと英語で書かれているではないか!
さらに26時の文字が反転されて書かれていたり、小ネタもステキすぎる。
入場したときは気づかなかったが、帰り際に観たとき衝撃が走った。
ほかにも舞台となる場所がUnder North(下北)だったり、本編が現実とリンクしていたり―(後述)
事の真相
※ネタバレ注意※
脚本を書き上げ、ギックリ腰になったロケッツ男爵の代わりに主演俳優として舞台「BELIEVE」を大成功させるコールのもとに白衣の男性・ジョブズが現れる。
彼はコールに真相を語り始める。
実はコールは若き日に交通事故に巻き込まれ、そのまま50年ずっと意識不明の重体となって眠り続けていた。
つまり彼がこれまで観ていたものは脳内で想像した創造の映像だったのだ。
そんなコールはついに心身の限界を迎え、もうすぐその生涯を終えるという。
ジョブズはその旨を伝えるべく、彼の脳内に入り込んで現れた。
(※これは先日観たこわっぱちゃん家の舞台「Picnicへのご案内」にどこか通ずるところがある)
彼のもとに寄り添うひとりの女性。
オフィーリアというヒロインだ。
彼女の正体はコールの母であり、彼が脳内で作りだした若き母の面影。
その母ももう年老いてしまっていた。
決してもう先は長くないだろう。
が、親子は最期にもう一度絆を深めるのだった。
提示される人生の意味
冒頭で老いたコールが撃たれたあたりで「もしや」と思った。
主人公が今際の際で見たイメージなのかな?と。
しかし、その斜め上のオチに驚かされた。
体が動かせず、脳内の意識だけで送る50年もの時間は正直きつい。
人生は1度きり。
生きているうちにやれることをやるべきだ。
もとい、やりたいことをやらなくてはならない。
そのメッセージがこの心を貫くとともに、コールの置かれている立場を想像し不覚にも泣いてしまった。
生きているときにしか何もできないんだ、と。
演劇界のこれから
残念なことに公演場所のGEKI地下Libertyが3月31日で閉館した。
公演終了から3日後のこと。
本作の内容とリンクしているあたり、もしかしたら制作初期の段階で沿うように作られていったのかもしれない。
このブログを書いている2021年4月26日現在。
3度目の緊急事態宣言が発令されて舞台が次々に中止となり、演劇界は大ダメージを受けている。
観たいと思っていた舞台が直前で行けなくなってしまって心苦しい。
あれから約1年。
役者への面会も差し入れも禁止され、観に行きたい公演までも中止される苦しみを味わっている。
役者と観客が同じ空間にいる。
役者が感情を込めたセリフを口にする。
観客がときに大声で笑い、すすり泣く。
まさかそのすべてが感染の条件に該当してしまうなんて、あの頃誰が思っただろう?
演じる方々の置かれている状況が何よりずっと大変だが、観る側が受ける心身へのダメージだって相当なものだ。
1日も早くこの状況が改善されることをただただ願うだけ。
いや、願うことは他人任せになってしまう。
自身の正しい理解と正しい行動あるのみだろう。
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