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キャスト・スタッフ

野村亮太(やまだのむら/room42)
伊与勢我無(ナイロン100℃)
Q本かよ
小島望
栂村年宣
難波なう

脚本/演出
白坂英晃(はらぺこペンギン!)

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画像出典:room42様

あらすじ

ここは株式会社ジャスティスヒーロー課。

かつてはテレビの向こうで活躍していたヒーローたちも今ではサラリーマンとして働きながら、スポンサー企業の支援なしには怪人退治できないところまで落ちぶれていた。

陣内タカシ(演:伊与勢我無)はそこの課長だが正体は電気仮面サンダーであり、これまでにたくさんの怪人を退治してきた。

しかし、今では年齢的にガタが来ているためもうすぐ第一線からの引退を考えている。

部下の槇原のり子(演:Q本かよ)はそんな陣内の身を案じている。

そこへアメリカにあるドナルド・トランプ大学からひとりの青年・マイケル富川(演:野村亮太)がインターンでやってきた。

そんな彼の案内役として社員の浅野ユウ(演:小島望)が課の様子を見せる。

のり子は魔法少女マジクリンとして、ユウ(本部長の保阪と不倫中)はカードファイター☆ユーミンとして活動はしているが、怪人を退治する際にちゃんとスポンサー名(ピ○-ラとピ○ハット)が見えるようにして敵を倒さないといけないという縛りに悩まされる日々。

富川はユーミンの変身シーン(例えるならセーラームーンのそれ)に興奮しながら、ヒーロー課の人たちと徐々に交流を深めていく。

若い頃は変身した姿で激しく社内でバトルを繰り広げていた陣内とのり子も、年齢のせいかかつてのパワーを出せずに衰えを感じていた。

現在戦えるのは23区内に現れるBランクかCランクの怪人のみ。

もしそれより上の敵と戦って負けた場合、会社の名前に傷がついてしまうのだ。

落ち目の彼らをよそにAランクの怪人(ヌルヌル男、水滴魔)をバタバタと成敗していく人物が!

ヒーローYouTuberとして活躍している若い女性、その名は江口ヨウ(演:難波なう)

本部長の保阪ナオト(演:栂村年宣)はそんな彼女の活躍に目をつけ、契約を結んでヒーロー課の再生やそれにまつわるある計画(若い女の子たちを集めてヒーロー教育をさせる、ヒーロー坂46の結成)を密かに目論む。

陣内はえぐっちゃんの姿に誰かの面影を見る。

それは5年前、彼が愛した女性・ホナミ(演:難波なう)

ホナミは息子を連れており、陣内はふたりのことを妻子のように迎え入れた。

しかし、カメレオン怪人たちとの戦闘のさなかホナミたちに危害が及んでしまったことで心を痛めて離れ離れに。

「じゃあ、日曜にキャンプ場で」

えぐっちゃんとデートの約束(?)を交わす陣内の姿にのり子の心は揺れ動く。

のり子は陣内のことがずっと好きだったのだ。

もしかしたら彼はホナミの面影を今も追っているのかもしれない。

そんなのり子の姿を見たえぐっちゃんは不敵な笑みを浮かべる。

果たして、彼女は何者なのか?

トレンディな小ネタ

キャラクターの名前を見てピンと来た人は多いはず。

そう、90年代のトレンディドラマを盛り上げた方たちが元ネタになっているのだ。

陣内タカシ→陣内孝則

槇原のり子→槇原敬之

浅野ユウ→浅野ゆう子

マイケル富川→マイケル富岡

保阪ナオト→保阪尚希

江口ヨウ→江口洋介

ホナミ→鈴木保奈美

さらに開演前には小田和正の「ラブ・ストーリーは突然に」が流れるという大サービス。

これにはカンチも「ずっちーな!!」

今の10代の人たちは生まれる前だからピンと来ないかもしれない。

とか言ってる自分も当時ギリ小学校入学前だったから、かなりおぼろげだが。

ただ自販機が安かったこと、お金回りが今より良かったこと、世間の空気が大らかだったことは肌で感じていたのではっきり覚えている。

ポケベルが主流だったあの頃。

ケータイやスマホなどなく、会えないことが男女の仲を引き立てていた。

今やプライバシーも謎も無くなりかけている時代。

「不自由だからこそ成り立っていたことがたくさんあったんだなぁ」と当時はガキでまだ何も経験してない三十路半ばの男が勝手にそう振り返ってみる。

さらにさらにメインビジュアルにも小ネタが仕掛けられており、キャストが持っているもしくは身に着けているアイテムが実に細かくて良い!

陣内→黄色のスカーフ
のり子→マジクリンのロッド
ユウ→カード
富川→本
保阪→ブランデーグラス
えぐっちゃん→自撮り棒&マント

もうひとつの同時上演作品「ずっ止まってる」のメインビジュアルは昼の屋上で、こちらは夜の屋上。

その比較まで見事に計算されている。

不意打ちの”なんば200%”

「やられた!」

その一言に尽きる。

オープニングでフワちゃんのようなド派手な衣装にマントをはためかせて物語の概要を言う難波さんを観た時だ(笑)

そして、

「最後まで凄いことが起き続ける!」

そう確信した。

まるで幽遊白書の戸愚呂弟が暗黒武術会で100%中の100%というフルパワーを発揮するように、難波さんが200%の姿で舞台の上にいるのだ。

もちろんこれからもパーセンテージはグングン上がっていくだろう(笑)

もしかするとインフィニティか?

たとえ1000%の状態に進化してもまだまだ余裕を見せつけてくる感じさえする。

(そういえばトレンディな時代に「君は1000%」という曲があったよね)

舞台「ガリレオ★CV」で落ち着いた大人の女性刑事を演じていたのを観ていただけに、そこからの反動があまりに凄すぎて本作で初めて舞台に姿を現したときは思わず大爆笑してしまった。

うれしすぎたのだ。
まるでカメレオンのように、舞台ごとに姿を変えてしまう彼女に。

(ハッ! それは本作のネタバレ部分をまるで予期していたかのような! もしや制作側は俺がこう思うことを最初から狙っていたのか?!)

怪奇!えぐっちゃんの正体は!!
ネタバレ注意

陣内とえぐっちゃんの仲を疑い、酒に飲まれてやさぐれたのり子は勢いでその場に現れた怪人へ立ち向かおうとするも物の見事に敗北。

会社の名に大きく傷をつけてしまう。

見かねたえぐっちゃんはのり子をタクシーに乗せてどこかへ向かう。

知らない場所へ向かっていることにのり子は慌てる。

えぐっちゃんは彼女を人質に取ったのだ。

標的は陣内。

当の彼はえぐっちゃんから電話で指定された場所に呼び出される。

彼女の正体は5年前、陣内に倒されたカメレオン怪人たちの生き残りだったのだ!

電気仮面サンダーの姿でその場に参上する陣内。

(上の集合写真。左太もものDAKARA DOMYのロゴが地味にツボに入ってしょうがない笑)

彼はえぐっちゃんの正体におおよそ見当がついていた。

カメレオン怪人はいろんなものに化けることができる性質を持つ。

あの時に一体だけ取り逃がした怪人が生き延びて自分に復讐をするのならば、きっとホナミの姿に化けて自分を油断させようとしているのだろうと。

陣内がえぐっちゃんとキャンプ場でふたりきりで会う約束をしたのは、誰もいない広い場所でカメレオン怪人と一騎打ちするため。

えぐっちゃんは大事な人を奪われる苦しみを味わわせようと陣内の前でのり子を殺害しようとする。

ところがピンチに陥った陣内とのり子はそれぞれ自分の素直な気持ちに向き合い、その場で告白し合うと舞い踊りながらどこかへ行ってしまう。

攻撃の機会を奪われて呆気にとられるえぐっちゃんはふたりの後を追う。

そして訪れる決戦のとき。

相変わらず陣内とのり子がピンチという状況は変わらない。

陣内はある秘策に出る。

それは富川がオフィスに持って来た装置で己のパワーを最大限に引き出し、敵もろとも自滅しようというもの。

しかし、なぜか装置は作動しない。

駆け付けた富川が阻止したのだ。

彼の正体はアメリカのドナルド・トランプ大学のインターン生ではなく、ホナミの息子だった!

彼は5年前に怪人の組織に人体改造されてしまい、実年齢は幼いのに肉体だけが急成長してしまったらしい。

そんな富川にえぐっちゃんの攻撃が効くはずもなく、すべて掻き消されてしまい挙句の果てに返り討ちに遭って捕らえられてしまう。

退治するかどうか迷う陣内たち。

えぐっちゃんは人から人へと変身していくうちに心に迷いが生じ始めていた。

徐々に人の心を、感情を、持ち始めていたのだ。

ヒーローの陣内もまた、彼女の仲間たちを役目とはいえ倒してしまった負い目や苦悩を背負っていたために彼女を生かすことに決める。

そして言葉遣いや態度をのり子やユウに更生させられながらえぐっちゃんはヒーロー課のメンバーとして活動していくことに。

こうして保阪が目論んだヒーロー坂46計画は見事に立ち消え、ヒーロー課の面々はきょうも力を合わせて怪人たちを退治していくのだった。

今度こそ愛妻家

本公演の出演者を観て驚いた。

陣内役の伊与勢我無さんと富川役の野村亮太さんは、難波さんとともに舞台「今度は愛妻家」で共演されていたのだ!

(伊与勢さんは主人公のカメラマン・北見俊介役、野村さんは彼のアシスタント・古田誠役、難波さんはモデル・吉沢蘭子役)

さらにスタッフの欄を見て驚く。

当日運営に蒼井染さんの名もあるではないか!!

彼女も「今度は愛妻家」のメインキャストであり、主人公の妻・さくら役だった。

その4名が一堂に会するなんてあまりにも贅沢すぎる。

(別の意味で役者が揃ってる)

さらにエンディングで6名が2人1組になって踊るのだが、陣内とのり子のカップル、ユウと保阪(場面転換の繋ぎと称してユーミンのカード能力で盆踊りをさせられる始末)の不倫ペア、そして富川とえぐっちゃんのコンビとなっている。

これがまた良い!
あの舞台を観た自分にはグッとくる。

(「今度は愛妻家」の本編にて古田と蘭子は急接近して一夜を共にするも、トラブルが起きて別れてしまう。直接的な描写は無いのだが、終盤で古田が蘭子のもとへ駆けつけてよりを戻したことがそれとなく暗示されている)

そして富川とえぐっちゃんの助力で陣内がホナミの一件を乗り越え、今度こそ愛妻家としてのり子を最期まで愛し抜くようになるのかな?と妄想をひとりで勝手に繰り広げていた(笑)

こういう楽しみがあるから舞台鑑賞はやめられない(^^)

おわりに

コンセプトは「トレンディドラマ」と「ヒーロー」の融合。

昭和とバブル、斬新な切り口とぶっ飛んだキャラクターたち。

……すごい。

改めて己の未熟さを痛感した。

もっといろんな舞台に触れて、腕を磨いていかなければ。

決して負けてられない。

舞台上で輝くキャスト6名。

そして受付のスタッフさん、場内を案内するスタッフさん、さらに一番後ろの席だったため振り返ると音響・照明スタッフさんがいらした。

部外者ゆえに観ることも立ち会うこともできないが、稽古の風景やゲネの様子に想いを巡らせる。

メンバー誰ひとり欠けても成立しない現場。

このコロナ禍で、大変な状況を必死にくぐり抜けて公演をしているその重厚な空気を深く噛み締める。

帰りの電車の中で小田和正の「ラブ・ストーリーは突然に」を聴きながら、車窓から見える下北沢の街を後にした。

これからもたくさんの現場の人たちと仕事して、その方々を心から幸せにしていきたい!

そしてこの身に「サクセス・ストーリーは突然に」訪れることを心より願う。

「奥義・成功者の術!」

と、自撮りカメラに向かって発するえぐっちゃんの声がどこからともなく聞こえた。

大丈夫、うまくいく。

そう確信した6月の夜だった。

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