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〇忠男の過去4・路地裏

すべての真相。
背の高い実奈におんぶされる小柄な忠男。
その始終を麻衣に見られている。
思い切り拳を握る忠男、顔を実奈の背中に埋めて麻衣に見られないように―

忠男の声「でも彼女を助けたのはオレじゃなく、幼なじみの女でした。そればかりかオレまでまた助けられちまって」

〇もとの真田の部屋

忠男「あんなダサいカッコ、好きな子にだけは見せたくなかった。ましてやあの場面で女に助けられるなんてもっとイヤだった」
真田「…………」
忠男「ずっと助けられてるのはもうイヤだ、だから誰の力も借りずにひとり立ちして生きていきたかったのに! チビだけどガリガリだけど地に足つけて生きていこうって思ってたのに! あの日がそのきっかけになるはずだったのに!」
真田「…………」
忠男「それからは幼なじみも好きな子も無視して、勝手にひとり何か背負った気になってどんどん落ちぶれて行きました」
真田「…………」
忠男「誰も守れないオレは誰かに寄りかかって守られるほうが似合ってる、そういう星回りなんだって思って」
真田「それは君の思い違いじゃ―」
忠男「でも違った!」
真田「え?」
忠男「ホントはあの子、オレに感謝してくれてたんです。なのにオレは意地なんか張って―」
真田「ようやく本質に辿り着いたんだね」
忠男「あのときちゃんと聞いていれば、無視なんかしないで、くだらないプライドなんか捨てて本音を聞いてさえいれば―」
真田「後悔は先に立ってはくれないんだよ」
忠男「ヒトっておかしな生き物ですよね? 相手に迷惑かけたくないって思えば思うほどどんどん傷つけてしまう」
真田「ひとりだけで生きていくなんて無理なことなんだよ。ましてや誰からの助けも求めないなんてね。人生誰もが誰かに助け船を出してもらっているものなんだよ。その時は断らずに受け入れれば良いんだよ」
忠男「……センセイ」
真田「現に僕はお腹の子に助けられている」
忠男「……もっと早くセンセイに会ってればよかった」

忠男が寄生虫たちを見つめて、

忠男「オレはまるでこのコたちとおんなじ、誰かに寄生するだけの情けない男だ」
真田「それは違うよ」
忠男「え?」
真田「この子たちに失礼だ。撤回するんだ」
忠男「センセイ?」
真田「君とこの子たちは違う。この子たちは寄生することで相手を健康にするために生きているんだ。今の君は人を傷つけるウイルスと何ら変わらないよ」
忠男「…………」
真田「今までの君はそれで良かっただろう、でも君を愛している今の彼女さんは一体どうなるんだ?」
忠男「…………」
真田「君の勝手な思い込みのせいで苦しむ人がいるんだ。君が本当の君を生きないでどうする?」
忠男「…………」
真田「僕はこの子と愛し合っている。君の愛はどうなんだ?」
忠男「…………」

〇同・廊下

歩いている真田の向こうから礼香が慌てて走って来る。

礼香「(なぜ?という顔で)」

真田は会釈。
礼香、忠男のもとへ飛び込んでいく。

礼香「何があったの?」
忠男「……話があるんだ」

そのまま真田は行ってしまう。

<最終話へつづく>

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