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10年目の研修社員・今市為太郎もとい、いまいちダメだろうが俺の前から消えて数日後。

これまで目の前の為太郎さんと話していると思っていた俺の行動はすべて独り言だった。
そのため館内のスタッフたちからは白い目で見られることになったが、俺は気にしなかった。

為太郎の声「これはキミの人生だろう? キミがキミを生きないでどうするんだ?」

彼に言われるまで俺は忘れていた。

自分を大切にすることを。
自分を愛することを。

このまま気づかないでズルズルダラダラと引きずっていたら俺は…………
それだけで心がゾッとした。

彼と別れてから最初の休みの日。

鈍ったカラダを鍛えてみようか。
少し遠出してみようか。
思いきりゲーセンで遊ぼうか。

何だか気持ちが軽かった。
これは前の為太郎さんがいた時のそれとは違う。

罪悪感はもう、ない。

明日は仕事だけど何とかなるだろう。
もし気持ちがつらいなら転職すればいい。
自分の人生だ、どうなろうと受け入れよう。

これまで犠牲にしてきた自分を大切にしよう。

育ててくれた家族のため。
働きやすい職場のため。
……などを考えるのは後にしよう。

今まで周りからの意見が自分の評価だと信じて生きてきた。
でも、その考えはもう捨てることにした。
その考えこそが人を傷つけてきたのだから。

すべての人と上手くいくわけはない。
それがヒトなのだ。

今日はいつもより仕事がスムーズだ。
すると廊下に爽やかな若々しいイケメンが現れた。

為太郎の声「次にキミに会うときはもっと自信に満ちた若々しいイケメンな姿がいいなぁ」

まさか…………

イケメン「すいません、***は何階にありますか?」
俺「えっと、エスカレーター降りた右側です」
イケメン「ありがとうございます」
俺「行ってらっしゃいませ」
イケメン「お兄さん、なかなかカッコいいですね」
俺「…………」

どうやら人違いのようだった。
でも、ああいうルックスなら良いと思った。
ってことは名前はどうなるのか?
今市為太郎……ではないな。
なかなか良い名前が見当たらない。

そんな楽しい考えたちが頭に浮かんだ。

俺はこれから自分を大切にし自然と自信を持って自分を生きたとき、とてもカッコいい彼に会ってみたいと心の底から思った。
そして飲めない酒を酌み交わして朝まで語らいたいと思うのだった。

これこそ、俺が体験した不思議な物語。
10年目の研修社員・今市為太郎との約1週間におよぶ記録である。

もし、あなたも目の前に彼もしくは彼女が現れたらそれは自分の心の叫びが生み出した姿なのかもしれない。

<終わり>

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