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〇ビルの外階段
必死に駆け上がっていく男女。
物書き・スダと記者の宇加賀井益代(うかがいますよ)だ。

軽快なステップの益代に対し、スダの足はクタクタ。

スダ「待ってください!」
益代「早くしないと大変なことになるわよ」
スダ「わかってます!でも―」
益代「こないだのラジオ番組編後もちゃんと走ってるの?」
スダ「それなりにぼちぼちと」
益代「足腰鍛えてないからそうなるのよ。手前味噌ながら、あたし毎日10kmは走ってるわ!」
スダ「(ボソッと)見た目からはとてもイメージできない」
益代「あんたまだ若いんでしょ?!」
スダ「三十路プラスワンです」
益代「31って言いなさい!」

益代がどんどん先に行ってしまう。
置いてきぼりのスダで――

〇同・屋上
都内某所にあるビル街の一角。

若い男が立っている。
その姿はまさに飛び降りようとしているように見える。

少し離れたところに置かれたカバン。
男のものだろうか?

益代の声「バカなマネはやめて!!」

男が振り返ると、益代がいる。

益代「話ならこの宇加賀井益代が伺いますよ」
男「なんで見ず知らずのオバサンに話さなくちゃいけないんだ」
益代「なにその言い方!こっちはランチ食べようと歩いてたら、飛び降りようとしてるあんた見かけて急いできたのよ?!少しはこっちの身になってみなさい!」

遅れて息を切らしたスダがやってくる。

スダ「益代さん、早すぎますって」
益代「あんたが遅すぎるの!」
男「もうひとりいたのか」

スダが視線を落とす。
カバンの中、原稿が見える。
それはスダが見たことのある書式で―

スダ「…………」
益代「とにかくそんなところにいないで、こっちへ来て!」

男はノーリアクション。

益代「失敗したって生きてりゃ人生は何度でもやり直せるんだから、ね。早くこっちへいら――」
スダ「シナリオ、書いてるんですね」
益代「え?」
スダ「そのカバンから見えたんで」
男「……ただの趣味、だよ」
スダ「いったい何があったんですか?」
男「べつに……なんにもねえよ」

スダがカバンの中でごちゃごちゃになっているシナリオを取り出し、まとめていく。

男「読むな!」
益代「ちょっと、なに刺激させちゃってんのよ!」
スダ「…………」
益代「黙ってないでなんとか言いなさ―」
男「……つまんねえだろ?」
益代「え?」
男「知り合いのライターはみんなおもしろい作品書いてるっていうのに、オレはぜんぜんなんだ」
益代「…………」
男「もうなに書いていいかわからねえんだよ。やりたいことも人間関係もぜんぶうまくいかねえんだ」
スダ「…………わかりました」
益代「え?」
スダ「その悩みを解決したら、こっちに戻ると約束してください」
男「何だと?」
スダ「その悩み、僕が解決します」
男「……ヘンなこと言う人だな、アンタ」

視聴者もシナリオのキャラと同じように悩んでいる

スダ「まずはそうですね、悩みというところから始めましょうか。そもそも、なぜこの世にシナリオがあると思いますか?」
益代「え、なにをいきなり?しかも勝手に規模デカくしてるし」
男「それは……えっと」
スダ「それ以前に人はなぜ本を読むんでしょう?なぜドラマや映画を観るんでしょう?書いてる作家さんや出演してる魅力的な役者さんが好きだから、もちろんそれもあるでしょう。しかしもっと深いところに理由があるんです」
益代「なになに?宇加賀井益代が伺いますよ」
スダ「それは観ている”誰か”読んでる”誰か”の悩みを解決するためです」

シナリオはテレビや映画を観ているまたは本を読んでいる「誰か」の悩みを解決するためにある

スダ「おもしろいドラマや映画には必ずもとになるシナリオがあります。ではなぜおもしろいと思うのか?それは主人公に対し、観ている人が共感して自分を重ねるからではないでしょうか?」
益代「言われてみればラブストーリーでキュンキュンしたり、アクション映画でハラハラしたりするっていうアレね」
スダ「昔の任侠映画では、本編終了後に主演の俳優さんをマネして映画館を出ていく男性が多かったと聞きます」
益代「なるほど!自分、不器用なもんで」
スダ「おもしろい作品の主人公は悩みを抱えているんです。そしてそれを解決しようと痛い目に遭いながらもあきらめずに自ら動いてます」
益代「ちょっと!モノマネしたんだから、なにかしらリアクションちょうだい!」

おもしろい作品には”悩みを解決する“という隠されたテーマがある

スダ「悩まない人なんていません。誰もが何かしら悩みを抱えているんです。作家はたくさんの人たちの中にいる”誰か”の悩みを解決するために作品を書く仕事なんだと思います」

※例:ドラマ『半沢直樹』
コンセプトは主人公・半沢直樹が嫌味な上司から窮地へ追い込まれるも、自分の知恵と力を使って反撃をしていくという物語。
現実的に上司へ反撃することはないが、観ているサラリーマンは半沢直樹の気持ちがよくわかる。
なぜならそれは、現実世界で同じような経験をきっとしているから
痛快な主人公の活躍に視聴者は共感する。

ヒトのおもな悩みTOP3
・健康に生きたい
・好かれたい、愛されたい
・お金がほしい

これはあなたの人生にも、ドラマにも映画にもいえる。
あなたの好きな作品のなかにこれらの悩みがどれか必ず入っているはず。

男「さっきから聞いてりゃずっと上から目線だけど、アンタに悩みなんかあるのかよ?」
スダ「ここだけの話、僕もあなたのように人間関係で苦労して社会で生きていくのがとても大変に思うときがありました」
男「え?」
スダ「すべてにおいて誰からも好かれたい!と思って頑張って、でも全然うまくいかなくて自分をいつも責めていたんです。とても苦しかった」
益代「15回目のコラムにしてあんたの過去、初めて聞いたわ」
スダ「正直言おうかどうか迷ってました」
男「それで……どうしたんだ?」
スダ「何とかこの悩みを解決しようととにかく動きました。そしてある答えに気づきました」
男「なんだ、それは?」
スダ「誰からも好かれるなんて一生無理なことだったんです」
男「…………」
スダ「誰からも好かれようと思ってるから自分に無理をさせてたんじゃないか?そう気づいてからあらゆることがわかってきたんです」
益代「あらゆること?」
スダ「ええ、人生そのものです」
益代「なになに、今回のコラムはスケール大きくするのがテーマ?」
スダ「結果的にそうなっちゃいました」
益代「うわ、ここからどうやって風呂敷たたむんだろ」
スダ「自分に無理をさせることは”自分には出来ないから無理だ!”と脳に思わせてしまうきっかけになります。そしてそれは自分が持つ可能性を0にします」
益代「ゼロって、いくらなんでも言い過ぎなんじゃないの?」
スダ「いえ。脳ってのは正直な器官でして、感じている気持ちのとおりに人の心と体をコントロールするんです。なので“自分には無理だ”と思ったその瞬間から行動にブレーキがかかるんです。やがてこれがネガティブ思考へと変わっていきます」
益代「ウソでしょ?!」
男「!!」
スダ「いえ、幼い頃から最近までこの身をもって体験して証明できましたから。自分に無理をさせると、人のことを考えてるつもりが自分を守ろうとするので、結局自分のことしか考えられなくなってしまい余裕がなくなっていく、という負のスパイラルがもれなく待ちかまえています」

※思考は現実化してしまう
これは脳が心と体を操っているから
明るいことを考えれば心も体も軽やかになるが、暗いことを考えれば逆に重くなってしまう。
顔や言動に気持ちが現れるのもこのため。

益代「うわ、めっちゃコワいんだけど」
スダ「僕が解決するためにとった方法は、自分の作品や生き方が誰からも好かれるのは無理だけど、どこかの誰かには必ず好かれている。だから”自分は出来ると脳を安心させることでした」
益代「まさかシナリオから脳の話に行くとは思わなかった」
スダ「話が脱線しましたので、戻しましょう」
益代「前回のコラムとは違った意味で濃すぎてめっちゃ疲れるわ」
スダ「よく平成の脱線王と言われるんで」
益代「そんな情報いらないから」

「誰からも」ではなく「誰かひとり」でいい

スダ「この世に完全がないように、人は誰でも誰かから好かれれば誰かからは嫌われます。なので作品を書くにも大勢に向けなくていいんです。むしろ誰かひとりに向けて書くほうが心が軽くなって筆が乗ります」
益代「誰かひとりのため…か」
スダ「知り合いをひとり思い浮かべ、その人が何に悩んでいるのかを考えて、その悩みを解決できるように物語を描いてみてください」
男「(少しだけうなずく)」

スダ「思ったんですけど、実はこれほとんどの仕事にも同じことが言えるんじゃないのかなって」
益代「え?どういうこと?」
スダ「仕事をするために会社があります。会社とはいわばお店のようなものです。つまり必ずお客さんという相手がいるんです。会社に来てくれそうなお客さんをひとりイメージし、その人が何を求めてるのか分析して、その人のために自分たちができることは何なのかを考えて動くようにすることが働くということなんだと。それは決して正社員やアルバイトに関係なく、いつの時代にもこういうことが求められているんじゃないかって」
益代「わかるけど、脱線しすぎよ」
男「…………」
スダ「すいません。ドラマや映画の話に戻すと、その作品はいったい「誰」に向けられて作られたのか?ってことなんです」
益代「流行りの青春映画ならば若い女の子、ラブストーリーならばカップル、時代劇ならご年配の人ってことね」
スダ「そうです。そしてR指定の作品は成人男性の「誰か」をメインターゲットに――」
益代「今そういうの要らない」
スダ「失礼しました」

男「ずっとわかんなかった」
益代「え?」
男「いつも書くたびダメ出しされて、でもいったいどこがダメなのかわからなくて、でも聞くのがこわくて、そのうち自分を守るようにどんどん自信がなくなっていって」
益代「そんなことがあったの……」
男「でもアンタの話聞いたら、ちょっと心が軽くなった気がする」
スダ「今回は目の前の”あなた“に向けてお話をしたので」
益代「そういうことか」
男「…………」

男の足が手前に少しだけ動く。
益代が気づいて、

益代「さ、もういいでしょ。こっちへ戻って―」
男「まだだ」
益代「え?」
男「まだアンタに聞きたいことがある」
スダ「…………」

次回につづく!

・おさらい・
シナリオは「誰か」の悩みを解決するためにある
それは観る人、読む人と似たような悩みを持った主人公がその答えを必死に見つけようとする姿に共感しておもしろいと感じるから。

誰からも好かれるなどありえない
なので、誰かひとりに向けて作品を書く
これは仕事にも同じことがいえる。

あなたの勤め先はいったい誰をお客さんにしているのか?
そのお客さんは何に悩んであなたの勤め先に来るのか?
その人のためにあなたは何をすればいいだろうか?

そうすると自然に答えが見えてくるはず。

このコラムはあくまで物書き・スダの視点で書いております。
あらかじめご了承ください。

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