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ハジメが倒れるまで残り2日。

家事のハジメこと梶野ハジメは、婿入りしても今まで通り会社に勤務していた。

義父の芯太郎が専業主夫をしていたことには驚いたものの、まさかその伝統を自分が継ぐことになろうなんてこの時の彼は夢にも思っていなかった。

すべてはあの入院に端を発したのだ。

彼の住まいが埼玉南部の実家から都内の一等地に変わっても長時間勤務は同じ。
むしろ家が近くなったことで仕事を遅くまでするようになった。
もちろんそれは彼の意志で。

・社会人として会社に貢献するため
・夫として家庭を築くお金を得るため
・実家の両親への仕送りのため

それら3つが彼の思っていたことだ。
が、彼の本音は一番最後にあった。

反対を押し切って実家を出た自分への戒めと、大切に育ててくれた両親への罪滅ぼしだったのだ。

だからハジメは今日も遅くまで仕事をする。
終電を逃した夜はタクシーで帰る。
最悪の場合、徹夜というコースを走る。

数日繰り返した彼の身体は悲鳴を上げていた。

深夜のオフィス。
周囲はハジメ以外誰もいなく、室内も暗い。
ハジメのスマホが鳴る。
実乃里からの励ましメッセージだ。

ハジメ「実乃里……」

顔が緩むハジメ、傍らにある栄養ドリンクを一息で飲み干す。

ふとハジメはあるメッセージに目を留める。

それは母・圭子からのもの。
ハジメが実家を出る前の日までに送ってきたものだ。

『あまり無理しないで』
『きょうはカレーだよ!』
『了解☆気をつけて♪』
『夕飯チンしてね』
『頭痛大丈夫?』
『実乃里ちゃんによろしく』

などなど。
普段は感情的な母も、スマホでのメッセージは妙に優しかったりするのだ。

ハジメの目が少し潤むも、我に返って仕事を再開する。
そうこうしているうちに彼は会社と一夜を共にした。

朝、休憩室で見る朝焼け。
ハジメは遠くの空を見つめている。
後輩の沼川広樹(通称・ヌマ)がやってきて、

広樹の声「若宮センパイ♪」
ハジメ「ん?」

にやけ顔の広樹が近づく。

広樹「違った。梶野センパイ♪」
ハジメ「わざとだろ」
広樹「結婚おめでとうございます」

広樹がハジメの顔をじっと見て、

ハジメ「どうした?」
広樹「前よりさらに顔色悪いっすね」
ハジメ「そうか?」
広樹「また残業っすか?キツイっすね」
ハジメ「…………」
広樹「とか言っときながら、ホントは奥さんと夜通しベッドで――」
ハジメ「アホ!徹夜だ」
広樹「そりゃもっとキツイっすね」
ハジメ「これも生活のためだ」
広樹「で、これからまだ働くと」
ハジメ「今から帰るんだ」
広樹「違う意味での朝帰り」

ハジメが広樹の頭を軽く小突く。

広樹「ジョーダンっすよ」
ハジメ「あまり無理すんなよ」
広樹「それセンパイが言っちゃいます?」
ハジメ「それもそうだな」
広樹「ゆっくりしてください」
ハジメ「おう。じゃあな」

ハジメがフラフラと歩き出す。
広樹、ハジメの異変に気づく。

広樹「センパイ?ホントに平気っすか?」
ハジメ「決まってるだろ」
広樹「でも――」
ハジメ「いつものことだか……」

ハジメが倒れてしまう。
慌てて広樹が揺り起こそうとする。

広樹「センパイ!!センパイ!!」

ハジメの意識はそこで途絶えた。

……思い出した。
オレ、会社で倒れたんだ。

広樹「病院着いたら家に連絡します」
ハジメ「ありがとう」
広樹「あとセンパイの実家にも――」
ハジメ「それは待ってくれ」
広樹「え?」
ハジメ「あとでオレがやる」
広樹「でも……」
ハジメ「頼む」
広樹「…………」

救急車はちょうど病院に着くところだった。

<episode14へつづく>

どうも、家事のハジメこと梶野ハジメです。
いつも読んで頂き、感謝感激です♪
前回までのブログは下のリンクから読めますので、どうぞご覧ください!
勝手にサブタイトルも付けました(笑)

登場人物
プロローグ
episode1 すべての始まり
episode2 ハイスピード草むしり
episode3 覚えてない、覚えてる
episode4 コーンフレークは硬めで
episode5 親の言い分 子の言い分
episode6 招かれざるヤツ現る!
episode7 オレの頭の上の避雷針
episode8 迫られる二者択一
episode9 義父の過去と実母のカレー
episode10 新婚写真のおもひで
episode11 妻と義母の食欲は成人男性並み
episode12 ハジメが倒れる3日前

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