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朝食を囲む梶野家の人々。
会話も無く、黙々と食事が進む。

ちなみに妻・実乃里と義母・勝代は、ハジメやその義父・芯太郎と同じくらい食べる。
つまり成人男性並みの量だ。
それくらい食べないと仕事が満足に出来ないらしい。

ハジメにとって今ではもう慣れた光景だ。

家事のハジメさんがログインしました。

どうも、家事のハジメこと梶野ハジメです。

どこの家にも暗黙のルールというものがあると思います。
他人の家からすればそれはまったく異次元のものに見えるわけで……

婿入りする前、つまり実家の若宮家にいたときは若宮家のルールがありました。

しかし今のオレは梶野家の人間。
郷に入っては郷に従えということわざがあるように、その土地に踏み入れた者はその土地のルールに従わざるを得ないのです。

それは結婚式の翌日、婿入りとして迎える初めての朝から始まりました。

ハジメと実乃里の部屋。
眠っているハジメの顔目がけて何かがとんでくる。

バシーン!!!

ハジメ「痛っ!」

衝撃音とともに起きるハジメ。
その正体は寝相の悪い実乃里の手。

ハジメ「(笑みを浮かべ)まったく」

実乃里が目を覚ます。

ハジメ「おはよう」
実乃里「おはよ。まだこんな時間か」
ハジメ「ん?もうこんな時間だろ?」
実乃里「もうちょっと寝かせて」
ハジメ「え?朝ごはんは?」
実乃里「キッチン行ってみて」
ハジメ「……は?」

ハジメがおそるおそる1階へ。
キッチンに明かりが点いている。

ハジメ「お義母さん?」

キッチンを覗くハジメ。
と、そこにはエプロン姿の芯太郎。

ハジメ「え?お義父さん?」
芯太郎「あ、おはよう」
ハジメ「おはようございます」
芯太郎「よく眠れたかい?」
ハジメ「おかげさまで」

芯太郎が手際よく料理している。
ハジメは芯太郎と料理を交互に見て、

ハジメ「美味しそうですね」
芯太郎「朝からお世辞とは照れるよ」
ハジメ「いえ、本心ですって」
芯太郎「ありがとう」
ハジメ「今朝は実乃里の当番じゃないんですね」
芯太郎「いや、実乃里は作らないよ」
ハジメ「はい?それってどういう――」
芯太郎「言葉通りの意味だよ」
ハジメ「え?仰ってる意味がよく――」
芯太郎「(遮って)あ、おはよう」

勝代が起きてくる。

芯太郎「今日はどうする?」
勝代「ミルク多め」

ハジメはポカーン。
芯太郎がコーンフレークを作り始める。

ハジメ「あ、そういうこと」

勝代「それとヨーグルトは――」
芯太郎「砂糖多めだね。入れたよ」

ハジメ「さすが夫婦」
芯太郎「いつものことだから」

実乃里も起きて来る。

芯太郎「おはよう」
実乃里「うん」
芯太郎「今朝はヘルシーなものにしたから」
実乃里「ありがと」
ハジメ「ええっ?!」
芯太郎「ハジメ君は和食で大丈夫かな?」
ハジメ「は、はい!」

家事のハジメさんがログオフしました。

家事の世界は本当に深い。
実家の母・圭子がそうだったように、炊事する者は相手の状況を見て何を提供すべきかを気づかなくてはならない。

毎日同じ献立とはいかない。
人は毎日気分も機嫌も違うのだから。

ビシッとしたスーツの実乃里と勝代。
彼女らを見送るハジメと芯太郎。

勝代「あなた、お願い」

勝代、芯太郎にキスをせがむ。
芯太郎は顔色ひとつ変えない。

勝代「ほら、早く」
芯太郎「もうそんな歳じゃないだろ」
勝代「いいから、エネルギー注入して」
芯太郎「行ってらっしゃい」
勝代「(ムスッとして)知らない」
芯太郎「夕飯はどうする?」
勝代「行ってきます」

勝代が行ってしまう。

実乃里「もう、ケンカしないで」
芯太郎「いつものこと。夜には元通りさ」
実乃里「行ってきます」
芯太郎「行ってらっしゃい」

芯太郎が家の奥へ引っ込む。
ハジメ、実乃里に手を振る。
実乃里が振り返って、

実乃里「ウチらもする?」
ハジメ「何だよ、急に」
実乃里「ウソだよ。行ってきます」
ハジメ「うん」

実乃里を見送るハジメ。

<episode12へつづく>

どうも、家事のハジメこと梶野ハジメです。
いつも読んで頂き、感謝感激です♪
前回までのブログは下のリンクから読めますので、どうぞご覧ください!
勝手にサブタイトルも付けました(笑)

登場人物
プロローグ
episode1 すべての始まり
episode2 ハイスピード草むしり
episode3 覚えてない、覚えてる
episode4 コーンフレークは硬めで
episode5 親の言い分 子の言い分
episode6 招かれざるヤツ現る!
episode7 オレの頭の上の避雷針
episode8 迫られる二者択一
episode9 義父の過去と実母のカレー
episode10 新婚写真のおもひで

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