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前回までのシナリオ
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〇オフィス・休憩所(夕)
真央が再び電話をかけているものの、応答はない。

綾がやって来て、

綾「どしたの?」
真央「いえ」
綾「会議続けるよ」
真央「はい」

真央と綾が歩いていく。

〇居酒屋(夕)
しんみり飲んでいる田辺と平川。
田辺はソフトドリンク、平川はお酒。

平川「やっと来たと思ったら、もう帰っちゃうのか」
田辺「こっちも会社に無理言って休暇取ってるんだ」
平川「もうちょっと新しくなった地元を観て行けって。それにビジネスホテルより実家のほうがゆっくりできるだろ?」
田辺「田舎が俺を呼んでるの」
平川「そういう頑固なところ、変わんないね」
田辺「何が」
平川「覚えてる? 小学5年のころ、コウちゃんが体調崩して入院してたときにクラスのみんなでお見舞いしようとしたら、必死に来るなって怒ったんだよ」
田辺「そんなもん……忘れた」
平川「いや、絶対覚えてるね」
田辺「忘れたもんは忘れたんだよ」
平川「そんなことない。コウちゃん、無駄に記憶力いいから」
田辺「うるさい、このたぬきっ腹」
平川「なんだよ、この老け顔」

田辺と平川、笑えてくる。

近くのサラリーマンたちがビールで乾杯している。

平川「これからもどんどんでっかいのが出来ていくだろう」
田辺「俺たちが知ってる景色がなくなっちまうんだな」
平川「今の若者たちもウチらと同じくらいなったら、こうやって同じことを言うだろう」
田辺「俺はいつまでも覚えてくよ」
平川「…………」
田辺「それが俺の仕事かな」
平川「もう一杯飲むか?」
田辺「ジュースで頼む」

〇北条家・前(朝)
真央と綾がインターホンを押す。
僅かなドアの隙間に聡美の姿。

聡美「またか」
綾「お忙しいところ誠に―」
真央「提案を持って参りました」
綾「え?」
聡美「見ないよ」

閉めようとするドアの隙間に資料を入れる真央。

真央「これならいかがでしょう」

聡美、真央に驚く。
真央は資料を差し出す。
気迫に負けて聡美が目を通す。

真央「納得……して頂けますか?」
綾「…………」
真央「…………」
聡美「―考えておくよ」
綾「では―」
聡美「言っておくけど、首を縦に振ると決めたわけじゃないから」
真央「わかりました。失礼します」
綾「え、ちょっと」
真央「いいんです」

真央が行ってしまう。
事態を飲み込めない綾。

〇周辺の道(朝)
並木道を歩いている真央と綾。

綾「それにしてもよく思いついたね」
真央「外国の街であった再開発の話を思い出したんです。新しく建て直したい、でも住民からは反対されている。そこでデベロッパーは閃いたんです、その町の景観に合うように建設して行けばいいんだって」
綾「観光地にあるコンビニの建物や看板が景観に配慮して地味なデザインなのと同じ要領ってことね」
真央「そうです」
聡美の声「ちょっと!」

聡美である。
とっさに頭を下げる真央と綾。

真央「あ、先ほどは―」

聡美が真央を指差して、

聡美「来なさい」
真央「え?」
聡美「あんただけ」
真央「私だけですか?」
聡美「二度も言わせない」

聡美が行ってしまう。
綾がキョトンとして、

綾「行ってらっしゃい」
真央「ええ?」

〇北条家・居間(朝)
正座の真央、緊張している。
台所の聡美がお茶を淹れながら、

聡美「足崩しな」
真央「いえ、このままで」
聡美「アタシが良いって言ってるんだ」
真央「―じゃあ、お言葉に甘えて」

聡美がお茶を汲んで持ってくる。
真央と聡美、互いにお茶を一口。
しばしの沈黙。

聡美「どうして反対しているのか?」
真央「え?」
聡美「そう聞きたそうな顔をしてる」
真央「やはりピーンと来るんですか?」
聡美「は?」
真央「いえ、何でも」

聡美が急に立ち上がる。
反射的に身構える真央。
聡美は古びた写真を持ってくる。
幼い少女の姿と母親らしき女性。

聡美「娘だ。幼い頃出て行って、何十年も帰って来てない」
真央「え?」
聡美「夫と別れるとき、娘を連れて出て行っちゃったんだ。きっとアタシがこんな人間だから罰が当たったんだろうね」
真央「いえ、そんなことは―」
聡美「でも誰にだって帰る場所がある。今じゃ大きくなった娘がここに来るかもしれない。もし何かあってここに戻って来た時に、ここだとわかる場所を残して欲しい。そう思ったんだ」
真央「…………」
聡美「あんただけだった。こっちの話をしっかり聞いてくれたのは」
真央「私はそんな―」
聡美「いいから最後まで話を聞きなさい」
真央「……はい」

聡美が資料をテーブルの上に展開する。
現在の北条宅そっくりの外観の民家。

聡美「よく考えたね」
真央「一度全てを解体しますが、骨組みを新しくするだけです」
聡美「まさか外観だけを当時のままにするとは考えつかなかった」
真央「これも仕事ですから」
聡美「(わずかに頬が緩む)」
真央「あの、もし宜しければ―」
聡美「ん?」
真央「娘さんのお話をお伺いしても?」
聡美「……」

カバンの中でスマホのバイブ音。
が、真央は気づいていない。

最終話へつづく)

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