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成 川「初めまして、『リュウ』って言います。よろしく」
さくら「よろしくお願いします」
成 川「『しの』さん、ですか。上品なお嬢様や和美人のような名前ですね」
さくら「いえいえ、ドレスも着物もあんまり似合わないんです」
成 川「そうですか? おしゃれな雰囲気でとても幸せな顔立ちをしていると思いますけど」
さくら「実は前髪上げると、このとおりおでこ広くて」
成 川「むしろ出したほうがいいですよ」
さくら「ホントですか?」
成 川「もっと色っぽくなりますから」
さくら「お上手ですね」
成 川「いえいえ。ところでこういう場所、初めてですか?」
さくら「ええ、あんまり慣れてなくて」
成 川「僕もなんです。よかったぁ、仲間がいて」

さくらM「いまのところ、服装も表情も言葉遣いも問題なし。さて、どの子とマッチングさせようか? 会話しながら向こう側のテーブルに座る女性たちが書いたプロフィールカードの趣味の欄などをチェックしていく。女に生まれて良かったのはこういうことが向かいの男にバレずにできるということ」

成 川「『しの』さんってお休みは何されてるんですか?」
さくら「お笑い芸人のライブに行ったり、国内旅行したり、江の島へひとりでドライブしたりかな」
成 川「アクティブですね。江の島へドライブかぁ、BGMはサザンとか?」
さくら「そうですそうです! え、リュウさんも?」
成 川「もちろん。カーオーディオ、ガンガン鳴らしてます」
さくら「『夏をあきらめて』とかいいですよね」
成 川「はい! 最高です!」
さくら「え、すごい。なかなか周りにわかってくれる同僚がいなくて寂しかったんです」
成 川「同僚ということは、普段は会社員をされてるんですか?」
さくら「……はい、一応OLを」
成 川「めっちゃ仕事できそうな雰囲気します」
さくら「そんなことないです、ただのデータ入力ですって」

さくらM「ここだけの話、社内での私はこの上なく地味だ。苗字は緒忍(おしのび)、名はさくら。オフィスの陰に忍んでひたすらパソコンを打っている28歳。女子会? タピオカ? フンッ、そんなものには縁もゆかりもないわい。気難しい上司の顔色を伺い、言われたことを言われたように動く。反面、ここにはその必要がない。私の思うがまま好きなように仕切れるのだ。え? いずれこれ一本でやってくって? まさか。地味なOL生活あってこそのサクラなのだ。意地でも辞めてやるものか」

成 川「あなたとの会話が盛り上がるきっかけになった昭和にバンザイ!」
さくら「フフッ。ヘンな人」
成 川「そうですか?」

さくらM「思わず笑ってしまった。ここのところ、まともな男を相手にしていなかった反動だろうか。それとも意外な共通点が見つかったことへの驚きと嬉しさからか。いかんいかん、仕事に戻らないと。トークタイムはたったの10分だ。彼のプロフィールカードに書かれている趣味は、っと」

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