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さくら「ちなみにそのコンビニって、どこにあるんですか?」
成 川「世田谷です」
さくら「え、世田谷?」
成 川「駒沢大学駅の近く」
さくら「そうなんですか! ウチ、用賀です!」
成 川「たった二駅。何かあったら、すぐ会いに行けますね」
さくら「またまたあ」
成 川「実は……ずっと会いたかったんです、あなたに」

SE コップの倒れる音

さくら「ああっ! ごめんなさい!」
成 川「大丈夫ですか?!」

さくらM「思わず動揺してしまった。こういう輩のストレートな言の葉(ことのは)には慣れているはずなのに……」

成 川「『しの』さん、ケガはない?」
さくら「はい、大丈夫です」

さくらM「と、目の前のリュウがテーブルの上にこぼれた水を拭いていく」

さくら「いきなりだったんでビックリしちゃった。なんの冗談ですか?」
成 川「本心です。ずっと……ずっと探してたんです、あなたを」
さくら「え?」
成 川「だから今思ってること、素直に伝えますね」
さくら「リュウさん、待ってください。私たちまだ知り合って数分しか経ってないじゃないで―」

成 川「(急に低いトーンの声で、さくらの言葉を遮って)そうやって、いったい何人の男を騙してきたんですか?」

さくら「……え?」
成 川「俺、知ってるんだよ。アンタの正体」
さくら「な、なにを言ってるんですか。私はただの参加者で―」
成 川「とぼけたってムダだよ。もうぜんぶわかってるんだから」

さくらM「その瞬間は突然やってきた。いつかはこうなるかもしれないと思っていたこと。一度参加した会場のエリアにはしばらく出没しないよう、ちゃんと危機管理はしていたはずなのに。彼はいったい誰? もし会っていたのだとしたらいつ? どこで? しまった、これまでたくさんの街コンに出過ぎていて思い出せない」

成 川「さ、ホントのこと洗いざらい話してもらおうか。アンタが俺にいったい何をしたのか、忘れたとは言わせねえからな」

さくらM「まずい、このままでは3つのルールのふたつめが破られてしまう。まさに今、絶体絶命」

成川M「目の前の『しの』は驚いた顔で俺を見ている。まさか身バレしてるだなんて思いもしなかっただろう。俺の本当の名前は成川隆一。この名が示すように数か月前、会社の同僚に成り代わって街コンへ参加した哀れな男。さすがにあの日と同じ見た目ではバレるかもと思い、イメチェンした。ヘアスタイルは丸坊主か金髪かで悩んだ。しかし、この時期に丸坊主は寒いし、金髪は余計目立つかもしれない。ゆえにナチュラルな雰囲気にした。服も新宿のルミネで……っと、外見のことは後で話すとして。『しの』がどんな話をして、どこに視線を向け、何をしようとしているかを俺は注意深く見ていた。なるほど、他の女性たちのプロフィールカードを見ながらカモになりそうな男を探しているんだな。だが、その手には乗らない」

さくら「失礼ですが、誰かと勘違いしてませんか?」
成 川「(さくらのマネで)リュウさんって、おもしろい」
さくら「え?」
成 川「さっきのアンタみたいにあの女もそう言ったんだ」
さくら「……あの女?」
成 川「とぼけるな、アンタは知ってるはずだ。数か月前の立食パーティーのとき、あの場にいたんだから。もう忘れてるだろうが、俺はアンタとも話をしてるんだよ」

司会者の声の回想。(冒頭に録った音声を使用)

司会者「(マイクの音声で)男性は……5番の方。そして、女性は……2番の方。おめでとうございます!」

前回までのシナリオ

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