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ハジメ「か、母さん?!」

ハジメの前に現れたのは母・圭子。

ハジメ「どうして?!」
圭子「どうしてって言われても、昨日の電話のことで心配になったから来ちゃった」
ハジメ「来ちゃった、じゃないだろ」

朝の梶野家の玄関先。
義父の芯太郎、義母の勝代、妻の実乃里そして後輩の沼川広樹が親子のやり取りを見ている。

圭子「実乃里ちゃん!ひさしぶり」
実乃里「どうも」
勝代「はじめまして、実乃里の母です」
芯太郎「父です」
広樹「ついでに後輩の沼川っす」
圭子「はじめまして。ハジメの母です」
ハジメ「何この流れ」

玄関でメンバーがほぼ全員集合。

圭子「あ、これから会社なの?」
ハジメ「そうだけど」
広樹「復帰祝いですよ、お母さん」
芯太郎「復帰?君は何を言ってるんだ、ハジメ君は退職してウチの主夫になるんだよ」
広樹「オヤジさんこそ何言ってんすか、センパイは復帰して得意先と仕事するんです」
芯太郎「それは本当なのか?」
ハジメ「え、いや、あのそれは――」
広樹「どうなんすか?」
芯太郎「どうなんだ?」

双方から迫られるハジメ。

圭子「……主夫ってなに?」

ハッとするハジメ。

圭子「ハジメ……主夫、なの?」
ハジメ「いや、えっとそれは――」
芯太郎「…………」
勝代「…………」
圭子「家事はすべて実乃里ちゃんがやってるんじゃなかったの?」
実乃里「それはですね――」
圭子「あれ実乃里ちゃん、ビシッとスーツなんか着ちゃって」
実乃里「これはその――」
広樹「知らなかったんすか?センパイここへ来てずっと家事やってるんすよ。だから家事のセンパイっす」
ハジメ「ヌマ、やめてくれ」

ハジメはもはや絶体絶命。
圭子はショックを隠せない。

ハジメ「ごめん、もう時間だから」
芯太郎「お母様、続きはこちらで」
圭子「ちょっと!ハジメ!」
ハジメ「戻ったら話すよ」

ハジメが慌てて家を出て行く。
広樹が後を追う。

広樹「待ってください!」

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もう一度、入力し直してください。

パスワードをお忘れですか?

家事のハジメさんがログインしました。

どうも、家事のハジメこと梶野ハジメです。
あまりのショックな出来事にログインを失敗してしまいました。

ついにバレちゃいました。
婿入り先で主夫をやっていることが
自分の口から言おうと思っていたのに……

今は休憩中です。

会社には退職の意向を伝えました。
もちろん、自分の意思で。

後輩のヌマは落ち込みながらもようやく理解してくれました。

これから仕事の引き継ぎです。
また書きます。

あ、パスワード保存しとこうっと。
またログインできないと困っちゃう。

家事のハジメさんがログオフしました。

梶野家のリビングにて。

圭子は神妙な面持ち。
芯太郎がお茶を淹れる。

芯太郎「病院の時はすいませんでした」
圭子「いえ、こちらこそご連絡ありがとうございました」
芯太郎「ご挨拶出来なかったことをお許しください」
圭子「いえいえ」
芯太郎「ところで旦那さんは?」
圭子「内緒で来ちゃいました」
芯太郎「え?」
圭子「きっと余計なことを言うので」
芯太郎「……そうですか」
圭子「それでさっきの件ですが――」
芯太郎「申し訳ありません」
圭子「え?」
芯太郎「僕が一方的にお願いしました」
圭子「…………」
芯太郎「梶野家は代々娘の家系なので婿入りが必要でした。それだけでなく、娘たちが外で稼ぐので代々夫が家事をするという伝統がありまして」
圭子「それでハジメが主夫を――」
芯太郎「……はい」
圭子「正直まだ状況が飲み込めません」
芯太郎「ご両親にはお伝えしなければと思っていました。しかし、ハジメ君から口止めをされておりました。迷惑をかけたくない彼なりの思いやりなんだと受け止めました」
圭子「あの子がそんなことを――」
芯太郎「このような形でお伝えすることになるとは思わず……」
圭子「お互い様です。私たちもあの子を追わなかったし、それにあの子が決めたことならと思っていましたから」
芯太郎「お母様」
圭子「…………」
芯太郎「実はまだ主夫をお願いする前、退院して間もない彼が自分のシャツにアイロンをかけたいって言ったんです」
圭子「え?」
芯太郎「最初は婿入りしたばかりで僕に迷惑をかけたくないからだと思ってました。でも、考えてみるともしかして彼は後ろめたかったんじゃないかと思うんです」
圭子「後ろめたい?」
芯太郎「例えば仕事が忙しくて家事が出来ていなかったとか」
圭子「(ハッとして)」
芯太郎「どうされました?」
圭子「いえ……なんでも」

圭子がお茶を一口。
芯太郎は圭子の顔を見て、胸中を察する。

夕暮れ過ぎ。
梶野家最寄り駅の改札口。
途方に暮れたハジメがやってくる。

改札を通ろうとすると、前にいた中年の男性が改札機で引っかかる。

うつむいていたハジメは前の男が止まったことに気づかずぶつかる。

ハジメ「すいません!」
男「いえ、大丈夫ですか?」
ハジメ「はい、大丈夫で――」

男がハジメのほうを向く。
ハジメは驚く。

その男は父・亮助だった!

<episode27へつづく>

どうも、家事のハジメこと梶野ハジメです。
いつも読んで頂き、感謝感激です♪
前回までのブログは下のリンクから読めますので、どうぞご覧ください!
勝手にサブタイトルも付けました(笑)
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登場人物
プロローグ
episode1 すべての始まり
episode2 ハイスピード草むしり
episode3 覚えてない、覚えてる
episode4 コーンフレークは硬めで
episode5 親の言い分 子の言い分
episode6 招かれざるヤツ現る!
episode7 オレの頭の上の避雷針
episode8 迫られる二者択一
episode9 義父の過去と実母のカレー
episode10 新婚写真のおもひで
episode11 妻と義母の食欲は成人男性並み
episode12 ハジメが倒れる3日前
episode13 罪滅ぼしの徹夜
episode14 点滴と家族と夕暮れと
episode15 義父からの看病
episode16 慣れない手つきで大ヤケド
episode17 主夫宣告
episode18 梶野ハジメ改め家事のハジメ
episode19 家事と筋トレの関係性
episode20 実母は知っていた
episode21 義理の親子ゲンカ勃発
episode22 あの日の選択は正しかったのか
episode23 予期せぬ誘惑
episode24 婿入りの掟
episode25 最後の出勤日

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