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真夜中の若宮家。
閑散とした部屋がひとつ。
そこはかつて、家事のハジメこと梶野ハジメが使っていた場所。

婿入り先である梶野家から訳あって実家へと帰省してきた彼。
一夜だけの若宮ハジメである。

そのハジメはベッドで横になっている。
そこから見える室内の風景。
天井、窓、匂いすべてが懐かしい。

家事のハジメさんがログインしました。

どうも、真夜中に梶野ハジメです。
まさか実家に泊まることになるとは思いもしませんでした。

30年近く慣れ親しんだ我が家。
婿入りのために自ら勝手に飛び出し、もう二度と戻って来ることはないと思っていた我が家。

久しぶりに戻ってきて一番驚いたのは家が発する匂いです。

ずっと住んでいるとわからないもので、遠く離れた分だけその匂いは鼻に残ります。

父・亮助とケンカした後、オレは母・圭子の提案で泊まることになりました。

お風呂に入り、部屋着に着替える。
何から何まであの頃のままでした。

これから少し仮眠を取ります。
起きたら、最後の仕事があるので。

では、また。

家事のハジメさんがログオフしました。

翌朝、午前8時ごろ。
亮助が起きて来る。
圭子はキッチンで朝食を用意中。

亮助が室内を見回して、

亮助「あいつは?」
圭子「さっき帰ったわ」
亮助「……泊まったのか」
圭子「たまにはいいじゃない」
亮助「…………」
圭子「はい、どうぞ」

亮助の前に並ぶ朝ごはん。
食べようとする亮助が箸を止める。

亮助「あれ?」
圭子「はい?」
亮助「何だかいつもと違う」
圭子「そう?」
亮助「なんかこう盛り付けとか」
圭子「気のせいよ」

亮助が味噌汁を一口、

亮助「ママ、味付け変えたか?」
圭子「いいえ」
亮助「そうか」
圭子「どうかした?」
亮助「味噌汁の具といい、ダシの風味といい、いつもママが作るのとは違う気がする」
圭子「気のせいよ」
亮助「そうかな?」

圭子はクスッと微笑む。

朝食を終えた亮助が着替えようとする。
と、シャツが用意されている。
シワひとつないキレイな仕上がり。

亮助「…………」
圭子「なかなかのもんでしょ」
亮助「アイロン買い換えたのか?」
圭子「いつものと同じよ」
亮助「肌触りがいつもと違う気が」
圭子「気のせいよ」
亮助「そのセリフ、何度目だよ」
圭子「あれ、そうかしら?」
亮助「ちょっと外行ってくる」

亮助が外へ出ると、家の周りにあった雑草は見事に刈られている。

亮助「え?何で?」

圭子のいるリビングに亮助がやって来る。

亮助「この短時間で草むしりまでしたのか?」
圭子「さあね」
亮助「そういえばいつもこの時間掃除機かけてるのに、今日はしないのか?」

亮助が棚の上の汚れなどを確認する。

亮助「ホコリひとつない」
圭子「フフフ」
亮助「なあ、何か変だぞ。いったい何がどうなってるのか……まさか!」

数時間前、早朝5時のこと。
圭子が起きて来る。
キッチンに灯りが点いている。

ハジメが料理をしている。

圭子「もう起きたの?」
ハジメ「まあね」
圭子「さすがスパルタ梶野式」
ハジメ「何か言った?」
圭子「ううん」
ハジメ「そうだ、ちょっと教えて」

圭子がハジメの家事を見ている。

料理の味付けを話し合ったり、
アイロンのかけ方を相談したり、
一緒に掃除をしたり、
逆にハイスピード草むしりの方法を圭子がハジメから教わったり、

母と子の間に流れる暖かい時間。

そして…………

ハジメ「そろそろ行かないと」
圭子「まだ居ればいいのに」
ハジメ「向こうでやること山ほどあるから」
圭子「パパ起こそうか?」
ハジメ「いいよ。しばらくは父さんあのままだろうし」
圭子「それもそうね」
ハジメ「恩返しも出来たし」
圭子「…………」
ハジメ「これで心置きなく帰れる」
圭子「もし向こうでどうしようもないくらい追い込まれたときは帰ってきていいからね」
ハジメ「母さん」
圭子「向こうにはこの家と考えも生き方も違う人たちがいる。もしかしたらその人たちがあなたとそりが合わなくなる時だってある。それでもあなたはあなたのままで良いんだから。ここにはあなたを守る私たちがいるし」
ハジメ「……ありがとう」
圭子「行ってらっしゃい」
ハジメ「行ってきます」

ハジメが去っていく。
手を振る圭子、その目は潤んでいる。

もとの若宮家。
亮助が和室の縁側で外を見ている。

亮助「…………」

ハジメを乗せた電車は梶野家のある都内へと向かって行く。

車窓からの景色を見ながらハジメはこれまでの出来事を思い返していた。

<エピローグへつづく>

どうも、家事のハジメこと梶野ハジメです。
いつも読んで頂き、感謝感激です♪
前回までのブログは下のリンクから読めますので、どうぞご覧ください!
勝手にサブタイトルも付けました(笑)
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登場人物
プロローグ
episode1 すべての始まり
episode2 ハイスピード草むしり
episode3 覚えてない、覚えてる
episode4 コーンフレークは硬めで
episode5 親の言い分 子の言い分
episode6 招かれざるヤツ現る!
episode7 オレの頭の上の避雷針
episode8 迫られる二者択一
episode9 義父の過去と実母のカレー
episode10 新婚写真のおもひで
episode11 妻と義母の食欲は成人男性並み
episode12 ハジメが倒れる3日前
episode13 罪滅ぼしの徹夜
episode14 点滴と家族と夕暮れと
episode15 義父からの看病
episode16 慣れない手つきで大ヤケド
episode17 主夫宣告
episode18 梶野ハジメ改め家事のハジメ
episode19 家事と筋トレの関係性
episode20 実母は知っていた
episode21 義理の親子ゲンカ勃発
episode22 あの日の選択は正しかったのか
episode23 予期せぬ誘惑
episode24 婿入りの掟
episode25 最後の出勤日
episode26 梶野家、朝の大パニック
episode27 若宮家の両親in梶野家
episode28 一夜限りの若宮ハジメ

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